5ちゃんねる ★スマホ版★ ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50  

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

お笑いロワイアルvol.9

1 :名無し草:2007/11/06(火) 03:18:08
お笑い芸人を題材としたバトルロワイヤルパロディスレッド
ローカルルールや過去ログ・関連スレッドは>>2以降

まとめ入口
ttp://karen.saiin.net/~owaraibr/


61 :114 ◆4kk7S4ZGb. :2007/11/22(木) 02:08:08

…無理だ、と思ったからだ。これほどの怒りと憎悪をもってしても、俺はあんたを殺せない。

あんたの芸を、奇跡のようなあのツービートの漫才を、その全てを尊敬してる。
この手酷い裏切りを目の前にしても、絶望的なまでに俺は、ビートたけしに心酔してる。
きっと、博士だって生きてたとしてもあんたを殺せはしない。絶対にできねぇ。

…そうだな。もし人間の中に、俺の神ってのがいるとしたらそれはきっと、あんただ。

あんたはそこで、見ててくれたらいい。俺がどうやって死んでいくのか。
あんたがこの殺しあいを望むなら、せいぜい盛り上げてやるよ。それが俺からあんたへの最後の恩返しだ。
たくさん犠牲にしてやる。そう、数えきれないくらいたくさんの犠牲を生んでやる。
神様野郎も、何もかも、一気に全て道連れにして、こっから俺は去る。
それが俺からの博士への手向けの花だ。墓標のひとつもねえが、でっかい送り火はきっと空からよく見える。

…さあ、始めようじゃねぇか。最低最悪の、弔い合戦を。

どいつもこいつも寄ってこいよ。俺がまとめて面倒見てやる。
行きつく先はたったひとつだけどな。俺もお前もあいつもそいつも、まとめてみんな、地獄行き、だ。



62 :114 ◆4kk7S4ZGb. :2007/11/22(木) 02:10:10
【玉袋筋太郎(浅草キッド)】
所持品:ボイスレコーダー、S&W M3613LS(4/8)、ガーゼ、包帯、傷薬、消毒薬、メス、ピンセット(数不明)
第一行動方針:不明
基本行動方針:神様野郎も誰も彼も道連れにして地獄行き
最終行動方針:神様野郎も誰も彼も道連れにして地獄行き
現在位置:森の中(D6)
【8/16 09:10】
【投下番号:298】


63 :名無し草:2007/11/22(木) 23:35:52
>>62
新作乙!
玉ちゃん……やっぱそっちにいっちまうか…悲しすぎるよ…
そして玉ちゃんの元へ向かっている石井に死亡フラグ立ったか?

64 : ◆CrdchzRUy. :2007/11/24(土) 13:35:42
お久し振りです。
投下いきます。一応こちらが本編になります。


『Sir.destiny』


昨日まで一緒に笑い合っていた人達にもう二度と会えない。
そんな事になるなんて、夢にも思わなかった。



「暑…」
少しきつめの日射しに加え、林の中に響く蝉の声が更に暑さを増長させる。
つい先程ゲームに放り出されたばかりにも関わらず、林を一人歩く小柄な男――ダイアン・津田篤弘は、いつもの赤いチェックの上着を脱ぎTシャツ姿で歩いていた。
ジェルでしっかりと固められた頭から一筋の汗が垂れる。鬱陶しそうにそれを手で拭い、ふ、と溜め息をつく。


突然告げられた殺し合い、有無を言わさず殺された山田の姿、そしてついさっき目にしてしまった折り重なった幾つもの死体。
それら全てが津田を畏縮させ気分を不愉快にしていた。
何よりも、愛する妻との永遠の別れ(決定事項ではない、けど)を、一方的に決められた事が。
冗談じゃない。これからずっと一緒にいると誓ったばかりだったのに。
歯を食い縛り目を閉じると、浮かんでくるのは愛しい人の顔――今頃どうしているだろう。
心配してくれているだろうか、泣いていないだろうか、そんなことを思うが実際に涙目なのは自分だ。
叶わないことは知っている。だからこそもう一度会いたかった。


65 : ◆CrdchzRUy. :2007/11/24(土) 13:37:14

ぐるりと辺りを見回す。木々が生い茂っているばかりで、目印になりそうな物は何も無い。
地図で確認してみても現在地がどこだかは判断できなかった。
まずい、津田の心に焦りが生じる。
出発してからもうすぐ一時間が経とうとしていた。相方である西澤がもう出て来る頃だ。
教室で待たされている時に「合流しよう」と持ち掛けられたのはもう何時間前の事だろうか。
珍しいことだったし信用して良いだろうかと迷ったが、小学校時代からの付き合いの奴を何の迷いも無く殺せるような奴じゃない、筈だ、と思う。
考えが読めない不気味さはあるが仮にも相方だ、信頼はしている。
誘いを受けることにしたものの、校舎を出てすぐ左、とアバウトにも程がある表現で伝えられた合流予定地からは大きく離れてしまった。
出て真っ先に見てしまった死体達に驚き、恐怖し、思わず逃げ出し全力疾走した挙げ句に迷った、
なんて西澤が知ったら結構な事馬鹿にするに違いない。そういう奴だ。
早く向かわなければならない。でもここだ何処だか分からない限り迂闊には動けない、仮に動いたとして誰かに会えるかはわからない、
もしもマーダーに出会ったとしたら一巻の終わりだ。どうしようもなくてその場に立ち尽くしてしまった。
精神的にも体力的にも疲れた。木陰で少し休もうかと思い腰を下ろす。


全国ネットのネタ番組、「面白くなかったら即死」とまで言われた事もあるほど華の無い自分達にとって大きなチャンスだと思ったのに。
すいませんドッキリでした!ハイ皆で殺しあってください。今まで散々いろいろなドッキリにかけられた中で最もタチが悪かった。
数年前のバスジャックのドッキリを思い出す。あの時も死ぬんじゃないかと怯えっぱなしだったが、同じくドッキリにかけられた先輩、麒麟田村の男気のお陰でまだ随分と楽だった。
今回は違う。向けられた銃口にカメラは入っていないのだ。
バスジャックの犯人(仕掛け人だったが)に必死で気に入られようとしていた天津木村なんてもう死んでいるかも知れない。
それが思い過ごしだといえないのが怖かった。



66 : ◆CrdchzRUy. :2007/11/24(土) 13:40:18

そんな事を思っている内に、いつの間にかうとうとと眠りかけていたらしい。
当てはないけど何とかするしかない、と立ち上がって再び歩き出そうとしたその瞬間。
ふと、妙な視線を感じた気がした。

「…誰や、」

振り返ろうとする直前、パキ、と小枝を踏む音が背後からはっきり聞こえる。
何者かの存在を確信すると同時にさぁっと血の気が引く。
本当に人がいる、自分の背後に、誰かもわからない誰かが!
暑さの為とは違う種類の汗が額から垂れ、手足が冷えていく様な気さえする。歯が僅かにガチガチと鳴る。
震える手を抑え、恐る恐る振り返った。恐らく自分の表情は酷いことになっているだろう――そんなことがふと頭の片隅に過ぎる。

振り向いた視線の先にいたのはひどく見慣れた顔だった。
互いを認識した後、目を見開きほぼ同時に思わずそれぞれの名前を呼んだ。

「ネゴ!!」
「津田ぁ!お前無事やったんか!」

独特な山陰地方のイントネーションに、どこか特徴的な外見の小柄な男。同期のbaseよしもとのピン芸人、ネゴシックス(根来川悟)だった。
同じ劇場の、しかも親しい人物との遭遇に沈んでいた心が軽くなる。自然と笑顔が溢れた。
良かった、良かったとひとしきり無事と再会を喜びあった後、津田ははっと思い立って思わず根来川の肩を掴んで叫んだ。


67 : ◆CrdchzRUy. :2007/11/24(土) 13:41:10

「ネゴ!ここどこや!?」
「うお、何だ何だいきなりオイ!」

根来川がここにいるという事は、西澤は既に出発している。早く探さなければならない。
ゲーム開始から三時間以上経過している。合流できなかったら――もう会えない可能性だってあるのだ。

「お前ちゃんと確認しとけや…」

ほら多分この辺、と根来川が少々呆れた様子で差したのは校舎から少し北に離れた地点だった。約束の場所からは少々遠い。
津田は西澤に合流を持ちかけられたことを説明すると、一緒に来てくれないかと根来川に頼んでみた。
再会した時に根来川は襲ってこなかった――つまりゲームには乗っていない、と判断しての事だ。
同期で馴染みのある人物なら西澤もきっと信用するだろうとの思いもあった(何より、一人が心細かった)。
根来川は津田が思った以上に軽い調子であっさりと了承した。


偶然親しい人物に出会えたのは幸運だったのだろうか。
何れにせよ、二人はこれから待ち受けることなど何一つ知らなかった。

68 : ◆CrdchzRUy. :2007/11/24(土) 13:42:05


【ダイアン津田・根来川(ネゴシックス)合流】

【ダイアン 津田篤宏】
所持品:未確認
第一行動方針:根来川と一緒に西澤を探す
基本行動方針:危険は避ける
最終行動方針:決めていない

【根来川悟(ネゴシックス)】
所持品:不明
第一行動方針:津田と一緒に西澤を探す
基本行動方針:親しい人物を探す
最終行動方針:不明

【現在位置:森の中(G8)】
【8/15 16:30】


69 : ◆CrdchzRUy. :2007/11/24(土) 13:43:38
すいません、忘れておりました。
【投下番号:299】

70 : ◆8eDEaGnM6s :2007/11/24(土) 15:44:07
>>25-30 の続き

『新しい朝がきた』


「………………」
放送が終わり、銃声の残響とそれにより想像される光景に、胃から食べたばかりの朝食が逆流してきそうになるのを堪えながら
赤岡はゆらりと立ち上がった。
目眩とふらつきをやりすごし、そのまま近くにある看板……ハイキングコースのルートを説明する地図へと歩み寄っていく。
「……あんまり考えすぎるなよ」
「えっ?」
その最中にぼそりと漏れた声に、島田は赤岡の方を見やった。
「あの人達の事」
小さく呟いて赤岡は看板に手を伸ばし、表面全体にうっすらとこびり付いている汚れを手で払う。
「お前の事だから責任感じたりするかもしれないけど、あの人達はあの人達の道を進んだだけだから」
確かに赤岡の言う通りなのかも知れないが、昨晩の出来事を考えればそう簡単に割り切れる話ではない。
しかもそうでなくとも元々親しくしていた相手である。故に、島田は安易に返答はせずに小さく俯いた。
「………………」
チラリとその様子を振り向いて確認してから、赤岡は汚れが落ちて見やすくなった地図に視線を戻す。
展望台から麓に向けて幾筋も記されているラインのどれを選択するべきか。
行き先によって下山してからの行動も変わるだろうために、赤岡は眉を軽く寄せて考える。

最優先するべきは少しでも長く生き延びる事。その為には何が必要で何をするべきか。
「……水、かな」
数秒の後に赤岡の口から呟きが漏れた。
昨日の昼、バットボーイズの佐田から逃げ出す時に島田は己に支給されたデイパックを紛失してしまっている。
その後荷物を入れるリュックや缶詰こそ入手できた物の、水の確保ばかりは水道が止められている以上どうしようもなく、
先ほどの朝食の折も赤岡の水をちまちま分け合って口を湿らせた物だった。
その貴重な水も残り少なく今やペットボトルの底に2cmほど揺れている程度となれば、地図に記されていた川に赴き
ペットボトルに水を補給するのが最重要項目となるだろう。

71 : ◆8eDEaGnM6s :2007/11/24(土) 15:47:54
「………………」
だとすれば、なるべく綺麗な水が手に入る場所……つまりは水源と思われる場所に最短で辿り着けるルートはどれか。
看板と支給された手元の島の地図を照らし合わせて赤岡はあれこれ考えを巡らせていく。

そんな赤岡の後ろ姿をぼんやりと眺めながら、島田は体育座りの形にひょろ長い身体を丸め込んだ。
「……どうして」
鼻先に膝の気配を感じながら、小さく小さく島田は呟く。
漏れ落ちる呟きが指し示すのは、六時間ちょっと前に別れたあの18KINの二人の事。
昨晩最後に彼らを見た時、二人は菊地の遺体を連れていた。
たぶん麓か、あるいは山田の遺体のある学校の近くまで遺体を運んでから埋葬するつもりだったのだろう。
幸い、大滝はシャベルを持っていたし菊地一人収まる穴を掘る事はそれほど苦にはならないはずで。
「………………」
その目論見を達成する前に二人は倒れたのか、あるいは無事に達成した後に何らかのアクションを起こして、その結果倒れたのか。
こうなった以上は知りようのない事ではあるけども、責任を感じるなと言う赤岡の言葉とは裏腹に島田の気分はどんどん重くなっていく。
「僕が……あの時止めていたら……」
ポツリと声を零すと同時に俯いた島田の額に、己の膝がごつっと当たった。
鈍い痛みが脳に伝わり、何故自分は生きているんだろう、そんな疑問が島田の頭を過ぎる。
赤岡を苦しめ、野村や菊地やあの二人にも御迷惑を掛けっぱなしで。
それでも何故磯山や菊地達でなく自分が生きてしまっているのだろうか。

「……おい」
にわかにネガティブな方向に走り始めた島田の思考を、頭上から振ってくる声が引き留めた。
「これからどう行動するか決めた。日が高くなる前に少しでも移動したい。行くぞ」
こわごわ見上げると、そこには赤岡のどこか憮然としている、しかし実はいつも通りの顔があり、肩からデイパックを提げて
片手にマイクスタンドを携えている辺り、本当に移動し始めるつもりでいるのだろう。
「……どこに?」
「まずは下山して水の補給をする。それからもう一度どこかの民家で物資を漁って、そこで改めて状況を見定める」

72 : ◆8eDEaGnM6s :2007/11/24(土) 15:49:32
「わかった」
そういえば、確かにペットボトルの水は残り少なかった。
この真夏に水がないのはそれだけで致命的であるが為、赤岡の提案を島田としては拒む理由は何処にもない。
小さく頷いて、島田はゆっくりと立ち上がった。

立ち上がる事で視界が変わり、遠くに昨晩己が身を潜めていた茂みが見えたような気がして、島田は一瞬顔を歪める。
昨日の自分は本当にどうかしていた、としか思えない。
しかしそれを認識できた所で今日、そして明日の自分がマトモである保証となるかと言えばそう言う訳ではないのだろうけども。
スタスタと目標を持って歩き出した赤岡の後を追って、島田は展望台を後にしていった。








73 : ◆8eDEaGnM6s :2007/11/24(土) 15:50:55
ちょうどその頃。
島の中央からやや東よりのとある森の中で、一人の男が双眸から自然とこぼれ落ちる涙もぬぐう事をせぬままに天を仰いで呼吸を整えていた。
彼の傍らには腹部を赤く染め、標本の蝶のように50cm以上ある金属製の長い串で右手と喉を大地に縫いつけられた
端整な顔立ちの男性が横たえられており、また別の傍らには盛り土が二つと、その前で両手に出刃包丁の柄を握って転がる、
よほどの出血があったのか全身を赤く染めた小柄な男性の姿がある。
この二人はどちらも死んで間もないようでどちらの着衣やその周囲の地面に染みだした血は乾いても固まってもいない。
やがて多少は落ち着いたか、男は目元をぬぐって視線を地上に降ろし、改めて己が関わった二つの真新しい死体をゆっくりと見やる。
「……これで、良いんだよな?」
普段の張りのある口振りが嘘のような弱々しい声で彼は呟くと、端整な顔立ちの男の右手に突き刺していた串を引き抜くと片手に携えて歩き出した。
「なぁ、おざーさんよぉ」
ポツリと漏れる呟きを残して茶髪のトサカ頭の男は木々の中に姿を消していき、後には死体が残されるばかりとなるだろうか。

ラジオ第一を付ければそろそろラジオ体操の軽快な音楽が流れ出しているだろう爽やかな朝とは真逆の光景。
何故、彼らが揃いも揃ってこういう状況に陥ってしまったかは追々明らかになっていく事となるだろうが、
今はまず、盛り土の前で倒れた男……今泉 稔について語っていく事としよう。





74 : ◆8eDEaGnM6s :2007/11/24(土) 15:54:01
それは今から6時間以上前の事。場所は当然あの山の山頂付近。
「………………」
大滝と赤岡が向かいあっている路上からわずかに離れた藪の中で、今泉はただただ呆然としながら目の前の光景……地面に横たわる菊地の姿を眺めていた。
包丁は深々と彼の脇腹に埋まりこんでいて、血がその周囲の衣服、いや腹部全体を別の色に染めており、
菊地の色の白い肌はいつも以上に青みを帯びているように見えてならない。
昼からずっと探し続けた人物にようやく会えた……と思いきやこれなのだ。大滝が執拗に島田を追おうとするのも、今泉とすればわからなくもない。
けれど。
「……何でそんなに幸せそうなんだよ」
泣くとか怒るとか悲しむとか、そういった感情に基づく行動が取れないままに、ぽつりと今泉の口から呟きが漏れる。
闇に慣れた目で見やる菊地の顔は、どこか微笑にも似た穏やかな表情を形取っていて。
「……らしいっていえばらしいけど、さ」
自分達の行動……リアクションを外野から面白がっているかのようにも見えるそれに、いつもなら肩をすくめたり
苦笑いを浮かべたりする所だろうが、さすがに今はそんな事はできない。
ただ、重ねて今泉は小さく呟いて、大滝が歩き去った方向に顔をもたげて向けようとした。
「………………」
さっき僅かだけ目に入った島田の様子はかなり焦燥していたようだったけれど、もしかしたら強力な武器を持っている可能性もある。
ましてやこの夜の闇。いくら大滝がライトを持っているとはいえ、不用意な行動は避けるべきだろう。
重ねるけれども大滝の気持ちは今泉とすれば決してわからなくもない、しかしそのせいで大滝自身が負傷してしまっては元も子もない。

……ならば、大滝を少し落ち着かせる必要がある。そのためには追わなければ行けない。
何とかそう思考をまとめて今泉が両手を地面についてゆっくりと立ち上がろうとした、その瞬間。

彼の目の前で、菊地の両の瞼が勢いよく跳ねあげられ、向けられたえもいわれぬ輝きを帯びた瞳が彼の動きを止める。
「おはよう、今泉さん! ねぇ、今、何時?」
続いて発せられた無邪気な、しかしどこか焦りを帯びた声は、紛れもなく菊地のモノだった。



75 : ◆8eDEaGnM6s :2007/11/24(土) 15:56:11
【号泣 赤岡 典明
所持品:MP3プレイヤー(2回目の放送収録) マイクスタンド 薬箱
状態:左腕に裂傷(手当て済)・右頬に軽い火傷・全身に強い打撲・眩暈
基本行動方針:生存優先・襲われたなら反撃もやむなし・でも殺さない
第一行動方針:下山して水を補給する
最終行動方針:MP3プレイヤーに漫才を収録する・悔いのないように行く】

【号泣 島田 秀平
所持品:犬笛  (以下、水色のリュック内) 缶詰2個 シャツ ネズミのカチューシャ
状態:額に裂傷(手当て済)・躊躇・動揺
基本行動方針:生存優先・赤岡を信じる
第一行動方針:下山して水を補給する
最終行動方針:不明】

【C8・展望台】


【スピードワゴン 井戸田 潤
所持品:結婚指輪・ダーツの矢 (20本)・バーベキューの鉄串・Cz75 (13/16)・ジェリコ941 (16/16)
    (予備弾丸 9mmパラベラム弾 ×26)
状態:軽い疲労・葛藤
基本行動方針:死は救いである
第一行動方針:みんなを救う
最終行動方針:みんなを殺して俺も死ぬ】

【G8・森の中】

【16日 06:30】

76 : ◆8eDEaGnM6s :2007/11/24(土) 16:00:18
【いつもここから 菊地 秀規】
所持品:出刃包丁
状態:腹部に出刃包丁
基本行動方針:周りがどうなっても構わない
第一行動方針:現在時刻が知りたい
最終行動方針:不明

【18KIN 今泉 稔
所持品:ライター 煙草 三味線の糸
状態:万全・呆然
基本行動方針:生存優先
第一行動方針:大滝を止めに行きたい……って、ええっ?
最終行動方針:不明】

【C8・展望台に近い茂み】
【15日 23:02】


毎度の事で申し訳ないですが、今回の話で串刺しで死んでいる芸人さんの死亡表記は、
後ほど死亡シーンを投下した時に適切に表示します。

77 : ◆8eDEaGnM6s :2007/11/24(土) 16:01:35
それと、【投下番号:300】でお願いします。

78 :名無し草:2007/11/25(日) 00:04:54
              / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
   /  ̄/\     | 下がり過ぎや!急浮上━━(゚∀゚)━━ !!
。  |_ /\ \   \__ __________________/
 〃,|  \  \./\      ∨
   |_. \./\: \    ∠⌒∧   
 〃:\  ̄ \   \./ \_(´∀` ||)   |__|∴
 :   \_ \ /\  \ ̄\ゝ) ) //∴∵
  :  〃\  ̄ \  :\ / \ \///  ∵ ∴
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

79 :名無し草:2007/11/25(日) 18:47:14
>>69
投下乙です。
木村w本当にもう死んでるんだから恐ろしいw
津田とネゴの出会いがどう転ぶか楽しみ。

>>77
こちらも投下乙&キリ番ゲットオメです。
井戸田がいつの間にかゲームに乗ってるわ菊地がいきなり目を覚ますわカオスな展開になってますな……
真相が激しく気になってきました。

80 : ◆hfikNix9Dk :2007/11/27(火) 22:12:12
ダブルブッキング編 まとめサイト290続き

『変身』



――― ―― ―



「 ……  」


黒田は目を開いた。
彼方まで響く虫の音が、耳にじわじわと蘇る。
額に当たる冷たい土の感触。


漆黒の時は、途方もなく続いていたように思えた。
が、それは一重に彼の中で様々なことが目まぐるしく回転していたからであって、
実際にはそう時間は経っていない。 ―先程と同じ夕暮れ時。
ようやく日が西の空へ落ち、辺りを包む橙色に段々と闇が染み付いていくところ。


気だるげに上半身を擡げた。霞んだ視界に写るのは、泥に塗れた自分の両手。
風に微かに揺られながら、少しずつ色を失っていく夏草。全てが無機質な灰色に覆われていく。


81 : ◆hfikNix9Dk :2007/11/27(火) 22:13:25

長い長い睡眠から覚めたような感覚だった。恐ろしい夢を見続けていた、息苦しい眠りから。
しかし例え目覚めても、ここは「ああ、夢だったのか」とほっと息をつき、
何事もない日常に戻っていける世界ではないのだ。
悪夢の続きのまた悪夢。そこに再び戻ってきただけの話。
妄想と現実との間を越えて横たわる苦痛と恐怖。新しい日など、決してやっては来ない。

或いはこのまま本当に眠りの底へ沈み込み、忘却の彼方へ去ることが出来たら
良かったのかも知れない。そうすればこれ以上には苦しい思いをしないまま、その内に必ず、
例えば何者かに襲われるなり、首輪が爆発するなり何なりして、
嫌な夢 ―即ち、BRという酷な現実から逃れられただろう。
いつでもどこであってもストンと寝入ってしまえるという、睡眠障害をすら疑われていた
奇癖を持つ黒田なら、 …『いつもの』彼ならば、充分に可能な芸当であった筈だ。
もしそれが出来ていたなら、より安楽な運命を辿れたのかも知れない、が。


けれども彼は完全に覚醒していた。 凶夢の中で、しっかりと目を開けていた。


「 っ ……」
傍にあった若木に掴まりながら、鉛の如く重い身体を何とか支え起こして立ち上がる。
気に入っていた白いシャツは所々に草葉の汁や土が付着し、汗に塗れ、
すっかり縒れてしまっていた。 けれど、もうそんなことはひとつも気にならない。
ねとつく唾液を吹き出し、喉元に少しばかり残っていた吐き気を誤魔化した。
多少ぐらつく感じが残るものの、震えも目眩も治まっている。
体調に問題はないようだ。まだ充分動ける。
それに黒田は安堵していた。


82 : ◆hfikNix9Dk :2007/11/27(火) 22:14:17

何処かへ飛び去る烏の鳴き声が鼓膜に染み入る。

 ― からすがなくからかぁえろ… 

幼い頃に聞き覚えた他愛もない唄が頭に去来した。
こんな童謡が似合うような穏やかな夕暮れなど、この世界にはそぐわな過ぎて何だか可笑しい。



( あぁ、帰らないと )

脱力した身体が、ゆらりと振り返る。

( 帰ろう  )


そうだ、自分には、帰らねば場所がある。
川辺にたった1人残して来てしまった相方。 その元へ戻らなければ。

倒れた拍子に掌から滑り落ちて草に埋もれていた方位磁針を拾い上げ、元来た道の方角を針で合わせ見る。
彼方を見つめる双眸には光がない。 それは次第に濃くなりつつある夜闇のせいなどではなく。
彼の相方のそれと同じ位色素の薄い瞳はぼんやりと濁り、何の感情をも湛えずただ冷たく据わっていた。
どこか、何の像を写すこともない、半透明の硝子に似て。


針が指し示した方向へゆっくりと歩き出す。 足取りは重いが、同時に先刻に比べて確かではあった。
恐らくそれは彼の心が明確になったことに起因するのだろう。



83 : ◆hfikNix9Dk :2007/11/27(火) 22:15:52

心 ―


決心はついた。ようやくにして。
渦巻く恐怖と混乱の中で苦しみ抜いた挙句に、固まった覚悟。
自らで決めた運命を受け入れるということ。
逃れられない現実と言う悪夢の中で、それでも足掻かなければいけない理由がある。
どうしても、やらなければならないことがある。
精神を淵まで追い詰めた凄惨な出来事の1つ1つが、皮肉にもそれを明らかに知らしめてくれた。
それさえ出来れば、もっともっと恐ろしく残虐な未来から逃れられるのならば、
最早、何をも厭うまい。

ずっと頭の中で絡まり思考を束縛していた糸は焼き切れて、今やどこにも存在していなかった。

もう迷うことはない。 あとは自分で見定めた真っ直ぐに続く道を、
何の疑いも持たずにひたすら歩んでいくだけだ。
それが例え茨の道でも。
通じる先が地獄であったとしても。


( ぶんちゃん 、 )

空虚となった心にひとつだけ映るのは、相方、川元の姿。
他には、何もない。
今や彼の脳裏からは唯一の決意以外のことが失われてしまっている。

白一色で塗り尽くされた思考。 純化。 空白。


揺らぐ男の姿を、深くなる夜空に輝きを増す月だけが見ていた。


84 : ◆hfikNix9Dk :2007/11/27(火) 22:17:04


―――

いくら行けども変化のない風景の中を、ゆったりした速度で進む足。

それが、不意に止まる。  何事かを思いついたように。

「 … 」


しばらく地を見つめながら立ち尽くした後、考えが至ったらしく顔を上げた。
そして急に左方に向き直り、方位磁針を無視して歩み始める。
川辺は遠ざかっていくが黒田はそれに構わない。
速度は変わらずに。しかし今度は極静かに、僅かな音すらも立てぬように。
恐ろしく慎重に、当ての付かない空間を進行していく。


再び足が止まったのは、それから十数分後。

暗がりの中、じっと目を細める。
前方、連なる草木の細い隙間に、ちらりちらりと人工的な色が見え隠れしているのが遠目に確認出来た。

( あれは  )
一切の音を殺して歩み寄り、適度な距離を取ったところでそっと伺い見た。



―ごちゃごちゃ重なった若木やら藪やらに隠れて、人間が座っている。
方やぽっちゃりと太り、方やガリガリに痩せ細った、眼前に現れたのはふたつの後姿。
どちらも黒田の方に背を向け、その気配に気付く様子はない。


85 : ◆hfikNix9Dk :2007/11/27(火) 22:18:05

2人分の影はぴったりと寄り添っている。どちらも小さく縮こまり、何かに怯えた様子で。
脇に荷物は置いてあるものの、他に道具らしき物品は一切周囲に見当たらない。
恐らくは、どちらも武器となるものは引き当てられず、出来ることと言えばただ隠れて
極力危険を避ける他にないために、こうして蹲って時が経つのをひたすらに待っているのだろう。
生き延びる手段を持たない、言わば残酷な殺人ゲームの哀れな犠牲者。

しかし彼らは、2日目となる今日も尚こうして生きている。
何に対抗する術もない過酷な状況の中で、奇跡的に揃って命を繋いでいるのだ。
何故それが可能だったのか。 具体的な推察はしようもないが、しかし恐らくそれは、
一重に互いを信頼し、支え合い、助け合ってきたことによるものであるに違いない。
即ち一緒になってから、共に逃げ隠れし、疲労も辛さも分かち合い、時に励まし等しながら来たからこそ、
弱い身ながらも難を逃れ、またパニックを起こすこともなく、今まで辛うじて生き残っているのだろう。

よくよく見れば、草の上で静かに握り合った手。
折れそうな望みに縋り付くが如く。
それが黒田の憶測を確からしめるようであった。



( あぁ、そうだ。  そうだな。
  こういうことなんだろうなぁ。信じ合うことは。
  俺は、これまでひどいバカだったから、
  だから、信じてもらうことが出来てなかったかも知れないけど。
  でもこれからは、 こんな風に、
  ずっと信じ合えるようになれたら  )



86 : ◆hfikNix9Dk :2007/11/27(火) 22:19:28

その姿は、今の黒田にはとても羨ましいものに写って。けれど少しも嫌な気分はない。
胸に温かいものが広がっていく。

口角が緩やかに上がる。
いつも絶やさずにいた、そして誰からもよく好かれていた、優しげな笑顔。
柔らかな表情を、ふわりと浮かべた。


そうして、歩を進めた。
哀しくもどこか幸せそうに見える2人の元へ、微笑みながら歩み寄って行った。





  心の限り思い詰めさえすれば、こわれてしまうことなど、いとも容易い。
  ひとは強く、ただそれ故に脆い。        黒田もまた、そうだった。
  彼の、“決心”とは、即ち、


  なにを惜しみ なにを恨まん もとよりも このありさまの 定まれる身に
  



一瞬だけ、喧しく響いていた蝉の合唱が止んだ。


―――


87 : ◆hfikNix9Dk :2007/11/27(火) 22:21:06

間もなく、
黒田は墨染の森をまたひとりで進み続けていた。


手に、新しく弾の込められた拳銃と、 大きく膨らんだデイパックを1つ下げて。
赤い斑点がぽつぽつと滴り落ちた袋の布地。
鮮やかなその色も、闇に紛れて褪せてしまっているけれど。

( ―大丈夫だ。簡単だ。
これで、証明出来た。
俺は決めた通りになれる。決めた通りにやっていける。
  ちゃんと出来るんだ。これでもう大丈夫。
あとはぶんちゃんと、ぶんちゃんだけと、信じ合っていればいい。
  これで、ふたりで、ずっと一緒に生きていける。他には、何も  )


ふと、笑みが込み上げてくる。


「…ふふ、ははは、あははは、ははははははははははははは………」



嬉しかった。この上なく満ち足りた気分だった。
やっと本当の『希望』へ繋がれたことが嬉しくてたまらず、黒田はひとりきりで笑っていた。
胸の奥底に、密やかに重たく沈むものを掻き消してしまうかのように、
只管、笑い続けた。


『希望』は、全てを 閉ざした。


88 : ◆hfikNix9Dk :2007/11/27(火) 22:22:15

【ダブルブッキング 黒田俊幸】
所持品:ワルサーPPK(6/7)
第一行動方針:
基本行動方針:
最終行動方針:

【現在位置:森(F5)】
【8/16 19:52】
【投下番号:301】



※死亡者については補完時に記述します。


>>69
投下乙です。親しい者同士が出会えてよかった。
安心感が伝わってきます。これから2人に何が待ち受けているのか。

>>70
投下乙&300話おめです。井戸田の心にどんな変化があったのか、
今泉に何があったのか…全ての場面が気になります。


89 : ◆U2ox0Ko.Yw :2007/11/28(水) 17:18:53
前スレ196-203の続き、ホリケン編です。



堀内健は恐慌状態に陥ったまま、森の中を駆けていた。

息が上がり、足がもつれても、走るのを止めない。
足を止めてしまえばたちまち辺りに血のにおいが広がり、先程の光景が生々しく脳裏に蘇ってしまう。
服や手にまだ乾ききらない血や髄液がこびりついているのだから、それも当然の事だった。

狂ったように走っていると、視界の端にくすんだ灰色をした建物がちらりと映り込んだ。
森の終わりが近いのだろう。一瞬、それに気をとられた堀内の足首が、罠のように地面から
浮き上がった木の根に取られ転倒する。今までの疲労と恐怖心が重なって、すぐに立ち上がろうとするも
手足が無意味に地面を叩くだけで起き上がることが出来ない。
瞬く間に全身が鉛のように重くなり、痺れるような鈍痛が湧き上がる。

地面は柔らかい腐葉土と枯葉が厚く積もっていたせいか、顔面から転倒したにもかかわらず鼻血ひとつ出なかった。
その代わりに口や鼻に入り込んだ葉っぱや土を、苦しい呼吸の中で吐き出すのが一苦労だった。

目に涙を浮かべて口の中の土を吐き出した堀内は、力尽きたように仰向けに地面に寝転んだ。
全身に飛び散って赤黒い模様を描いている蛍原の血が、辺りに鉄錆びに似た臭いを充満させる。
何度かゆっくりと深呼吸を繰り返すと息苦しさは消え、代わりに喉や鼻の奥にちりりとした痛みが走った。
ひどく喉が渇いていたが、指先一つ動かす事すらひどく億劫に思えて、堀内はオレンジが混じり始めた
青空をじっと見上げていた。

90 : ◆U2ox0Ko.Yw :2007/11/28(水) 17:19:55

ゆったりと変化していく雲を見つめながら、堀内は考える。
蛍原は宮迫と待ち合わせをしていると言っていた。

「……宮っち、待ってるんだよなぁ……」
放送で死亡者と禁止エリアが発表されるのだから、堀内が宮迫に何かを告げなくとも蛍原の死は伝わるだろう。
事故とはいえ蛍原の死に立ち会ってしまった以上、このまま無関係で済ませていいとも思えなかった。

しかし、相方がどういう死に方をしたなどという事は、はたして聞かされて嬉しいものなのだろうか?
知りたいと思っていなければ、死に様を伝えたところでただの悪質な嫌がらせにしかならない。
「ごめん……」
小さく呟いて堀内は目を閉じた。

上着は元の色が分からないくらいに血を吸い込んでいて、そのまま動かなければぱっと見死体にしか見えない。
また、それだけの血を浴びているという事実から殺人を疑われてもおかしくないのだが、そのことに堀内は気付いていなかった。
転倒し疲労で動けなくなったことで、堀内は僅かに自分を取り戻していた。
しかし完全に混乱と恐慌から抜け出せたわけではない。波のように押し寄せる恐怖と孤独感、そして何より。

「ごめん、ホトちゃん。ごめん……」

堀内の脳裏に、顔の半分を血で染めた蛍原の姿が蘇る。
何か言いたげに腕を伸ばしてきた蛍原を、自分は突き飛ばして逃げてしまった。
その強い罪悪感が、堀内をより深い混乱へと陥らせていた。

閉じたままの瞳から涙がこぼれ、とっさに手の甲でそれを拭う。
頬に皮膚とは違う乾いた感触がして、堀内は目を開けた。

91 : ◆U2ox0Ko.Yw :2007/11/28(水) 17:21:06

薄暗くなりかけた空に手をかざして見ると、黒く乾いた血が余すところなくこびり付いていた。
上半身をのろのろと起こして手のひらを擦り合わせると、古いペンキ塗装のようにぼろぼろと剥がれ落ちる。
しばらくの間、一心不乱にこびりついた血の塊を剥がしていた堀内だったが、ふとある事を思い立った。

「そうだ、埋めてあげよう」
宮迫に伝えるかどうかは、それから決めればいい。
堀内がそう決心し蛍原の元に戻ろうと立ち上がりかけた時、低い羽音のような音と共に、放送を告げる音楽が流れ始めた。

「あっ、放送……!地図、どこだっけ」
堀内は慌てた動作でデイパックの中から地図と名簿を取り出した。
しかしペンが中々見つからず焦っていると、死亡者の読み上げが始まってしまう。

「あれ……ペンがないよ……ん?」
死亡者の読み上げを聞きたくなかった堀内は、出来るだけデイパックの中に意識を集中させる。
ペンの変わりに堀内が見つけたのは、上品な織りと手触りの心地よい布で作られた袋だった。

細長く、持ち上げてみればその華奢な見た目に反してずっしりとした重量を感じる。
凝った設えの組紐を解いて中身を取り出すと、それはどうやら日本刀のようだった。
しかし、所謂日本刀と比べると大分短い。堀内の指先から肘までの長さすらなかった。
恐る恐る鞘から刀身を引き抜くと、研ぎ澄まされた銀色の刃が現れる。
優美な曲線の刀身に水流を思わせる波模様が見事な刀に、刀剣には大して興味のない堀内すら目を奪われる。
目線の高さに刀を持ち上げると、夕陽を映しこんだ刀身がオレンジ色に煌いた。

『174番 名倉 潤 』
刀に見とれていた堀内の耳に、探している人物の名前が呼ばれるのが聞こえた。

92 : ◆U2ox0Ko.Yw :2007/11/28(水) 17:22:08

『212番 蛍原 徹』
名倉の名前が呼ばれてそう経たないうちに、蛍原の名前も呼ばれる。
堀内は刀を鞘に納め、ペットボトルと乾パンの袋の間に隠れていたペンを引っ張り出した。

「潤ちゃん……そんな」
名前に印をつける指が震える。
堀内には信じられなかった。名倉は頭もいいし運動神経もいい。
それ故に、自分より先に死ぬことはないだろうと信じていた。
しかし現実はひどくあっけない。
蛍原と同じように事故かもしれない、そう自分を納得させた堀内は
途中からしかチェックできていない名簿を見つめる。

「泰造は、呼ばれてないよね」
原田は名倉と蛍原の間だった。聞き漏らしをする事はない。

「泰造、無事かな」
いつの間にか涙が滲んだ目を擦りながら、堀内は呟いた。
禁止エリアのチェックも終わり、放送も切れて森に静けさが訪れる。
辺りに散らかった荷物をデイパックに戻していると、右腕に軽く引きつるような痛みが走った。
よく見ると大きな擦り傷が出来ている。転んだ時か森を走っている時にできたのだろう。
擦り傷といってもうっすらと血が滲んでいるかいないかという程度のもので
手当てをしなければという気にはならなかった。

一応傷口周りの土だけを簡単に払うと、堀内は立ち上がって辺りを見回した。
回復しきっていない足が小さく震えるが、何とか堪える。
少し離れた所に送電線が見える。そのもう一つ向こうが蛍原と宮迫が待ち合わせをしていたという送電線だろう。
ということは、その近くに蛍原がいるはずだ。

「結構遠いなぁ……」
どの位の距離を走ってきたのかを目の当たりにして、半分呆れ気味に呟く。
そして、堀内は闇が濃くなり始めた道を戻り始めた。

93 : ◆U2ox0Ko.Yw :2007/11/28(水) 17:23:10

【ネプチューン 堀内 健
状態:右腕に擦り傷
所持品:懐刀
第一行動方針:蛍原を埋葬する
第二行動方針:泰造を探す
基本行動方針:1人になりたくない
最終行動方針:生存 】

【現在位置:森の中】
【8/15 18:25】
【投下番号:302】


94 :名無し草:2007/11/28(水) 18:09:59
>>88
投下乙です。
ついに黒田が・・・。一気に踏み外していく様が怖くもあり切なかったです。

>>93
投下乙です。
お先真っ暗な中健気に人の心配してるホリケンが愛しい・・・

95 :名無し草:2007/11/28(水) 22:26:38
>>88
投下乙です。また新たなマーダーが…
壊れる理由が優しいのが余計に切ない。
>>93
投下乙です。悲惨な状況でも思いやりを捨てない堀内が泣ける。
不幸になってほしくないキャラだ…

96 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/30(金) 01:41:27
まとめの275番続き 田中編です。


『田中の退屈』


ぱくっ。もぐもぐ。

「……それにしても、何か緊張感が出ませんね〜」

ぱくっ。むしゃむしゃ。

「ん、そうか?」

ばくっ。もぐもぐ。

「だって、今ってバトルロワイヤルの真っ最中じゃないですか。
 それなのに俺ら暢気に刺身食っちゃったりしてて、ホントにこんな事やってていいのかちょと心配になって来ましたよ〜」

ぱくっ。むしゃむしゃ。

「うーん、それはしゃーねーだろ。食わなきゃ腐っちまうんだからよ。
 まあ有り難い事なんじゃねえか。こんな所でこんな物食えるなんて普通有り得ねえぞ。しっかり食っとこうぜ」

ぱくっ。もぐもぐ。

「有り難いとは思いますけど……どうせなら刺身醤油くらい、一緒に支給してほしかったと思いませんか?」

ぱくっ。むしゃむしゃ。

「あー、確かにそうだな。臭いもアレだし、何もつけずに食うのはやっぱ正直ちょっとキツいもんな」


97 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/30(金) 01:42:55
ぱくっ。もぐもぐ。

「…………」

――あいあい、クリスマスなのにお刺身を食べたアンガールズです。
よく考えたらこのネタ、クリスマスじゃなくてバトルロワイヤルでもいけるな。
ついそんな事を考えてしまう卓志であった。

        *     *     *

裕二と卓志が集落の中にある一軒家に辿り着いたのはほぼ一時間前の事だった。
何故この家を選んだかについては深い理由は無い。強いて言うならば、朽ち果てた壁に『田中』という苗字の表札が掲げられていたからだろうか。
家は平屋ながらもこの集落の中では少し広めな方で目につきやすいものだったが、二人とも特に気にする事はなかった。
元々なるべく人を集める事が目的なのだから、目立つ方がかえって有難いのかも知れない。
門を抜け扉を抜け、先に玄関に踏み込んだのは卓志の方だった。
彼も流石にカツオを武器として構えるというシュールな真似をする気にはなれず、画鋲というあまりにも心許ない装備での侵入を余儀なくされていた。
そのため武器を手に待ち構えられてたり罠を張られてたりしたらひとたまりもない状態で、この事実に彼らは怯えたが、
幸いにも想像していたような目に遭う事はなく、何とか無事でいられた。
靴一つ無い無機質な玄関を抜けた後は軽い家捜しの時間が始まる。
今度は押し入れの中かどこかに何者かが隠れていて、いきなり襲い掛かってくる可能性が彼らの頭を過ぎって恐怖させたが、
ざっと見たところではこの家にはそのような不届き者は勿論、誰もいないようだった。
どうも日中に見たいくつかの無惨な死体が彼らをより臆病にさせているらしい。

「それにしても、手頃な家があって本当によかったですね〜」
「まあな」

家捜しも一段落がついたところで、二人は揃って縁側にゆっくりと腰掛けた。
とりあえず収穫はそれなりにあったようだ。二人の幾分余裕のある表情と、
卓志の着ている、シミ一つ無いものの明らかに丈が合ってないTシャツとズボンがそれを証明している。

「で、これからどうしますか? 食糧も十分確保出来た事ですし、ここを拠点として仲間探しでもしますかね?

98 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/30(金) 01:44:36
土間で見つけたサバの缶詰を玩びながら卓志が言う。
実のところ彼としては、早く菊地を探しに行きたくて仕方がなかった。
しかしかと言って既に夜となっているが故に外をふらふら歩き回るのが躊躇われ、裕二に判断を仰ぐ事にしたのだ。

「うーん、そうだな、見通しの悪い中出歩くのは危険だし、それにせっかく落ち着いたのにまた動くのも面倒だし……
 今日はもうここでじっくり休んで明日の朝からまた出発する事にしねえか?」
「やっぱそうするのがいいんでしょうね……」

予想出来た答えに卓志はもどかしさと妙な安堵を感じため息をつくと、霄漢に向かって消え入るように呟く。
そのまま気だるいモーションでサバ缶を放り投げると、緩やかに背後に寝転がった。
その闇を歎いているようにも見える様が気になったのか、気遣うように裕二が言う。

「まあみんなを信じようぜ。俺らに限らず、わざわざ夜の内に動く奴はそんなにいないだろうしな。
 ……そ、それに、空をよく見てみろよ。あれだけ綺麗な夜空、東京じゃ絶対見れないって。
 あんな空の下で人殺しなんて、そうそう出来るもんじゃねえだろ」
「…………プッ」

最後の取って付けた様な裕二の台詞があまりにも気障どころか有り得なさ過ぎて、思わず卓志は噴き出してしまった。
とはいえ裕二の気持ちが解らないわけではない。彼だって本当は相方の事が気になって仕方ないのだろう。
それでも、夜中に当てもなく捜し回る事に対してのリスクをしっかりと理解していて、それ故に誘惑を断ち切るために自分自身にも言い聞かせようとしているのだ。
それに他の芸人を信じたいと思うのは卓志もまた同じである。
変な格好のつけ方を恥じるように頭をぽりぽりかく裕二の姿にこそばゆさを感じながら、卓志はじっと空を眺めてみた。

(佳い夜だな)

素直に、そう思った。
夜空には一点の曇りもなく鮮やかな藍が広がり、星が温かく光っている。
この忌まわしい島を含めて何もかも包み込むかのようだ。
こんな澄んだ空を見たのは前に実家に帰った時以来かもしれない。
そういえば、今頃故郷の空はどうなっているのだろうか。
昨日は確か雨だった筈だ。市民球場での試合が中止になってたから。

99 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/30(金) 01:47:00
……せめて今日は、向こうでもこんな美しい夜空が見れてたらいいんだけどな。

「まあ確かに綺麗な空ですよね。絶好のナイター日和って感じです」
「ナイターか、いいなそれ。やっぱこんな暑い日はクーラーの利いた部屋でのんびりナイター中継を見るに限るよな」
「え〜、やっぱ球場で生で見るのがいいに決まってるでしょ。俺のひいきチーム東京じゃほとんどテレビ放送ないですし」
「ああ、そういえばお前広島だったか。広島もいいチームだし頑張ってほしいよな。巨人には負けるけど」
「そんな事ないでしょ〜。第一今の巨人ウチより順位下じゃないですか〜それにこの間の三連戦でもウチに負け越してたし」
「何言ってんだよ。その代わりに最後にお前んとこの投手陣完璧にKOしてやったじゃねえかよ。
 今年はたまたま調子が悪いだけで、巨人打線が本気を出せばあれくらい余裕だぜ」
「よく言いますよ。いつもホームラン以外に点取れないくせに。それに監督の采配も何かおかしいですし」
「あっテメエ、原さんの悪口言ったな。原さんは凄いんだぞ! 何たって原さんは――」

現在の巨人軍監督であり、裕二にとっての憧れの存在でもある原辰徳にケチをつけられた事で一気に裕二の頭に血が上る。
そしてそれと相乗するような形で卓志の地元愛にもますます火がつく。
あっという間にすっかりプロ野球の話題が顔を覗き、二人の領域に我が物顔でのさばっていた。
それだけ今の二人が、この限りなく非現実に近かったはずの現実に慣れ、退屈を感じているという事を示しているのかもしれない。
それは確かに危険の予兆。
だが、慣れるという事は少なくとも我を失う事よりもはるかにマシである事は間違いない。
その点では今の彼らは十分に幸せと言えた。
そのまましばらくの間、白熱した野球論争に発展する。
思う存分、広島東洋カープと読売ジャイアンツ、それぞれが如何に素晴らしい球団であるかを二人は力説し合う。
そんな傍目から見れば醜いとさえ思えそうな“カープ・ジャイアンツ論争”に決着をつけたのは、彼らの言葉ではなかった。

「はあっ、ちょっと待ってください……」

唾を飛ばして喋りまくったせいもあって、いつしか卓志は喉の渇きを覚えていた。
大きく振っていた腕を休め、そのままデイパックに伸ばす。

100 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/30(金) 01:47:42
水を求めてチャックを一気に開くと、そこから飛び出したのは。
独特の、強烈な生臭いにおいと、そして。

「ああっ〜! 見てくださいよ、コレ融けちゃってますよ〜!」

この真夏の炎天下の中、すっかり解凍されてしまった例の高知産本ガツオ。

        *     *     *

こうして二人は、このカツオを夕食にする事に決め、悪戦苦闘の末何とか捌き切って冒頭に至るわけなのである。
しかしまあそれにしても、と卓志は思う。
確かにデイパックがやけに濡れているような気はしていた。だが今まで自らが出した汗のせいだと思って気にしてなかったのだ。
考えてみれば、この気候の下ではいくら凍っててもいずれは自然解凍される事は間違いなかったわけで。
元より長くもつものではなかったのだ。
ちなみに捌くための手段として用いたのは、つい先程この家で見つけたばかりである出刃包丁だった。
ろくな武器を渡されなかった二人にとってはこの島で初めて見る人を十分殺生し得る凶器で、
これを使わなければならないシチュエーションを考えて唾をごくりと飲んだものだったが、
まさか早くもこんな形で使う事になるとは思ってもみなかった。
欲を言えば刺身包丁も欲しいところだったが、何も見つかってなかった場合を考えると贅沢は言えない。

ぱくっ。もぐもぐ。
ぱくっ。むしゃむしゃ。

「…………」
「…………」

しばらくの間無言が続く。
客観的に見れば呑気そのものの平和な食事風景だが、二人の間には徐々に言い知れないしこりが漂って来ていた。
その要因は、すでに冒頭で発せられた卓志の愚痴で明かせられている。
やはり、生魚を何もかけないで食べるのはどうも物足りないようで。

――調味料が、欲しい。

101 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/30(金) 01:49:36
「あーっ、やっぱ我慢できねえ!」

ついに裕二がキレて、乱暴に箸を皿に置く(ちなみに箸も皿も包丁と一緒にこの家で見つけたものである)。
多少ごまかしてはいたものの、やはり好き嫌いの多い彼だけに、徒手空拳で生魚と格闘するのには限界があったようだ。
もっとも、すでに全体の三分の一は食されてはいたのだが。

「これ以上はちょっときついわ。やっぱ醤油も何も無いんじゃ食えたもんじゃねーって」
「そ、そんな事言わないでくださいよ! 俺一人では食べ切れませんよ〜!」

慌てて卓志が宥めようとする。
これが普段なら翌日以降まで何らかの方法で保存しておけば何とかなるかもしれない話だが、生憎にもここはバトルロワイヤルの会場。
電気も通ってないだけに、残念ながら腐らせずに保存するのは非常に難しい状況なのである。
ただでさえ腐りやすい生魚だけに、今日中に何とか完食しなければ食べられなくなるのは明らかだ。
このプログラムにおいてこれだけ良質なタンパク質を得る機会はまたとないだけに、卓志としても無駄にはしたくない。
そんな卓志に裕二はいくら言われても無理だと言わんばかりに暫く鬱陶しげな目を遣っていたが。
不意に、ある事を思いつく。

「そうだ、お前ちょっと調味料探してきてくれねえか?」
「えっ?」
「何もかけないってのがきついんだよコレ。醤油とかがあれば十分おいしく食えるはずなんだ」
「で、でも家中探しても無かったし……」
「だったら他の家から探してくりゃいいじゃん。
 ここに無かったからって他の家にも無いとは限らないだろ。食糧とかはある程度残してあるみたいだしさ。
 それにこれだけ広い集落なんだから、スーパーや飲食店の一軒か二軒ぐらいありそうなもんじゃねえか。
 そういうところなら置いてある可能性もますます増えるだろ?」

        *     *     *


102 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/30(金) 01:50:22
結局、卓志は裕二の言う通りに、再び集落の中を調味料を求めて歩き回るハメになった。
と言っても、流石に夜暗い中なだけに、ちょっと近場を見て回るだけに留める事は取り決めてあったが。
裕二の方は家で待機する事になっていた。
卓志としては裕二にもついてきて欲しかったのだが、万が一家を空けた隙に誰かがやって来た場合を考えれば、
一人でも残っていた方が良いという裕二の理屈に反論出来ず、一人で行かざるを得なかったのだ。
まあいずれにせよ、こういう面倒な作業は得てして後輩がやるべき事なのだから仕方ないのだろう。
上下関係、これも無視できないこの世の摂理だ。そう思って卓志は納得した。

歩むべき道は果てしなく暗い。
夜なのだから当たり前なのだろうが、それでもその事は卓志にそこはかとない違和感を覚えさせる。
ふらふらと民家を見極めながら、ふとその理由について考えてみる。
解答は、意外と簡単に求まった。

(……光が、無いんだ)

考えてみれば当然の事だ。
この島の学校以外の建物に電気が通ってないらしい事は、先程まで居た民家で確認済みであった。
島中のライフラインが断絶されているという事は、道端に適度に並んでいる街路灯も、ただのオブジェと化すしかなくて。
かくして、闇一色に包まれた奇妙な街の完成となる。

「一面真っ暗、か」

自分でも意識しない内に、思わず小さく呟いていた。
ついさっきも思ったが、これだけの闇は久しく見ていなかった。
東京ではこんな完全な闇は無かった。あの街はいつもどこかしらが光に溢れていた。
そう、それこそ、上下のような田舎でぐらいしか、こんな闇は無かったはずだ。
子供の頃を過ごした、あの懐かしい故郷のような――

『ヤキメシ四つつかぁさい!』
『はい、チャーハン四つですね?』

……くだらない事を思い出してしまった。

103 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/30(金) 01:51:17
そうだ、子供の頃父と兄弟三人でどこかに遊びに行った帰り道も、まさにこんな感じの闇だった。
急に闇の中に現れたドライブインに寄って、焼き飯を頼んだらチャーハンと言い直されたんだっけ。
何でこんな事を思い出したんだろう。そりゃまあ闇の中に浮かび上がったドライブインは確かに印象深かったけれど。
一体どうしてだっけ――



ドスンッ



不意に、微かに鈍い音が聞こえてきて、卓志の心に戦慄をもたらした。
それと同時に、些細な疑問も一気に吹き飛ぶ。
鳥肌の立つ思いで急いで辺りを見回すが、特に何も起こった様子は無かった。
一体何の音だったのだろうか。気になった彼はもう一度、今度はゆっくりと周囲を見回す。
確認した結果、今彼の周りにあるのは数件の民家、そして、ぽつんと存在する、四階建ての雑居ビルらしき建物。
もしかしたら、あの鈍い音はこの中のどこかから聞こえてきたのかもしれない。
いや、きっとそうだろう。何となくだが、そんな気がする。
そう思って、卓志がビルを注視する。

この時、民家ではなく雑居ビルに目を向けたのにも大した理由は無かった。
ただ単に、ここまで見かけたのと同じような構造の民家より、割合特異な姿をしている雑居ビルの方が関心を持てただけの事だ。
だが、そのつまらない理由が彼にとっての明暗を分ける。


彼が覗いたビルの四階に、ほんの一瞬、大きな影が走った。


「えっ……」

刹那、彼はそれを認識し、理解した。
ほぼ間違いなくあれは人影であると思っていい。

104 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/30(金) 01:52:08
そして、おそらくあれが先程の不快な音を発生させた張本人であろう。
驚きを隠せない一方で、心中の僅かに冷めた部分で卓志はそう分析する。
退屈に皹を入れる、突如舞い降りてきた急展開。
さて、どうするか。その答えはすぐに出た。

――行ってみよう。

中に居るのが危険人物ではないという保証はない。
今まさにそこで命の奪い合いが行われている可能性も考えると正直怖い。
だが、菊地や太田ではないという保証もない。
1%でも彼らである可能性があるのなら、確かめる価値は十分にある。
それに、たとえ彼らでなくても、接触する価値は残っていた。
もしかしたら、これをきっかけに、また一人脱出のための仲間が増えるかもしれない。
それに。

(調味料の在り処を、知っているかもしれない……!)

もはや迷う必要は無かった。
もう一度辺りを見回してみる。
特に変わりは無い。
そこには相変わらず、静かに揺曳する月と星の光の他に照らすものの無い、闇に支配された街が広がっている。

目の前の面妖なる古ぼけたビルを見上げる。
あの時、あのドライブインのように、闇の中に唐突に現れた建物。
直前であの事を思い出すとは、もしかしたらこれも何かの因縁によるものなのかもしれない。
その事に僅かな憂愁を感じつつ、入り口に近づく。

(今度は何の間違いも無いと良いんだけどな)

不意に、日中に見た数体の死体が卓志の頭を過ぎる。
それを必死に頭の底から追いやると、ゆっくりと更なる暗闇に躍り出た。

105 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/30(金) 01:52:57
【アンガールズ 田中卓志
所持品:なし
第一行動方針:菊地と太田を探す
第二行動方針:調味料を探す
基本行動方針:人殺しはしない
最終行動方針:心が傷ついた人を一人でも多く助ける】

【爆笑問題 田中裕二
所持品:画鋲一箱分、出刃包丁、カツオ(高知産。切り分けられている。三分の一消費)
第一行動方針:太田と菊地を探す
基本行動方針:人殺しはしない
最終行動方針:みんなで一緒にこのゲームから脱出する】

【現在位置:J6 集落】  
【8/15 20:16】
【投下番号:303】

106 :731 ◆p8HfIT7pnU :2007/12/04(火) 00:07:49
”鳥肌実『我が闘争』(2)”


  ※※※※※※

(※この前のレポート用紙のページは乱雑に破られている。
  破られたページに何が書いてあったかは不明。)


さて、このバカタレがくだばりましたからには陛下に命じられました報告もこれで終了。
しかし地球の資源を無駄にするわけには参りませんので、ここからの報告はわたくしの輝かしい戦闘記録
(予定)を記してゆきたいと思う次第でございます。きっとね、歴史と国語の教科書に載りますよこれは。
それでは改めまして自己紹介。
鳥肌実42歳厄年。日本の夜明けを目指し、ホップステップ玉砕の精(※以下関係ない文の羅列の為削除)

まずわたくしの1日は首都に向かって敬礼した後、爽やかに月月火水木金金を歌って幕を開けるのであります。
ポカリ○エットのポスターにも引けをとらないそのわたくしの爽やかな笑顔を曇らせたのは、
負け犬どもの豚のような腐敗臭でございました。まあどっちも臭い動物という事です。
まったくせっかくの清々しい朝が台無しだよ。夏江の味噌汁かヤマザ○パンが朝食ならまだしも、
乾パンごときで腹が膨れるかと。確かに乾パンは最前線では最適なレーションには違いありませんがね。
しかし酷い。酷すぎるこの臭い。下っ端の兵士、いやここでは敢えて三等兵と呼びましょうか。
お前等人数多いんだから、死体が出たらコンマ3秒で片付けに来なさいよと。お前等の怠慢のせいで
自分でお墓作っちゃいますなんていう×××が湧いて来るんだよ反省しろそして砕けろ!
わたくしがこのプログラムに勝利し凱旋帰国しました暁には、すぐさまことり特攻隊を編成。
こいつ等三等兵どもを強制参加させ、敵国の主要施設に手当たり次第突っ込ませようと思うのですが
宜しいでしょうか?ああ、陛下ならそう仰ってくださると思っておりました。
いやあ照れますな、そんなに褒められては。陛下万歳!陛下万歳!!


107 :731 ◆p8HfIT7pnU :2007/12/04(火) 00:09:09

しかし最近のこの国は酷い。もう終わりかけの腐りかけです。
兵士どもに始まりどいつもこいつも陛下への忠誠というものがわかっちゃいない。
バトルロワイアルといういささか強硬な手段を用いてでも、腑抜けの馬鹿どもを粛清したいという陛下のお気持ち、
鳥肌実痛いほどよくわかります。おそらくこの大規模なプログラムも、わたくしが如何に馬鹿どもに惑わされず
陛下への忠誠を示せるか、それを試していらっしゃるのだと思います。
ご心配なく。わたくしの忠誠は真実であります!どんな輩に会おうがそれは変わりません。
しかし困りました。誰かに会わない事にはそれが証明出来ない。
そうか、木に登って上から見張っておればいいではないですか。頭脳明晰にも程があるよわたくし。

(※このページのみ、土まみれで汚れている)
…いやね、木に登ってやるなんて猿みたいな真似は人間がやらなくてもいいんじゃないかと。
決して登れなかったとかそういうのではなくて、敢えてそうしなかっただけで。
いや多分あれですよ、三等兵の奴等が木に余計な小細工をしやがったんですよきっと。
まったく無能な奴に限って悪知恵が働きやがりますね。絶対特攻させてやる。

やはりここはオーソドックスに待ち伏せ。そして話題の待ち伏せスポットといえば森。
気長に5時間程待ちますと、来ました来ましたアホそうなのが。
わたくしは正々堂々と後ろから無用の長物となりました受信機をフルスイングで投げつけ、見事体当たりに成功しました。
わたくしがあと20年程若ければこのまま殴り殺す事も可能なのですが、寄る年波には勝てません。
とりあえず引きずって所属と名前を名乗らせました。えーメモメモ。

9番 阿部智則 PO…ポイズンガールバンド

まったく横文字なんぞ使いやがって!覚え辛いから太郎にしろ!!
それにしてもこいつの風貌は何だ。チャラチャラ髪伸ばしやがって、丸刈りにするか
わたくしの様にきちっとまとめなさいよ。ほんとに最近の若い奴は…
ただこういうアホの考えも許容出来てこそ陛下の忠実なるしもべ。刺激ある報告となるかもしれない。
試しにこいつに栄誉あるプログラムの参加者として何がしたいかと問いただしました。
しかし返ってきた答えは、

108 :名無し草:2007/12/04(火) 00:10:10

「いや、色んなこと考えると凹みそうなんでとりあえず乳揉みたいです」

あまりにも破廉恥な返答にわたくしの拳が正義の唸りをあげました。
まったく嘆かわしい。最近青少年の性の乱れが叫ばれておりますがここまでとは。
見た目人畜無害そうなノホホンとした面してるくせにとんでもない奴だこいつは。
あれだあれ、見た目問題なさそうな奴が実は×××でとんでもない犯罪起こしたりする、
そのタイプでございますね。ひー恐ろしい!
この変質者に正しい人としての在り方を教える為に、わたくしは教育勅語の精神を2時間に渡って熱弁致しました。
途中からやけに真剣に聞いてたので、感想を述べろと言ったらこいつは

「やっぱり揉むなら貧乳より巨乳ですよね」

まったく聞いちゃいねえ何だこいつ!
とりあえずこめかみに後ろ回し蹴りを叩き込んでおきました。
痛がってる間も手をニギニギしておりました。この変態が!いつまで揉んどるんだボケ。
大体巨乳ならなんでもいいなどと最近のグラビア雑誌に載せられやがって馬鹿野郎。
あんな海辺という自然のレジャースポットで不自然極まりないマスカラだグロスだベタベタ塗った女の
どこに魅力を感じるというのでございましょうか。女性の正しいファッションは防空頭巾にもんぺ!
下着は純白のシミーズ!化粧?そんな物に金かけとる暇があったら千人針の為にご近所を駆け回れ!!
というのが正しい日本女性のあり方でしょうが。そして兵士の血液で(※いい加減長いので削除)

ふう、世紀の大演説にわたくしの喉もカラカラでございます。
この変態のペットボトルの水をゴクゴクラッパ飲みした後、正統な料金として食糧か武器を請求致しました。
そうすると変態はやる気のない仕草でナイフを1つ渡しました。2本1組なのでいらないとかほざいてました。
馬鹿な奴。自分から首を絞める行為なんぞまさに愚の骨頂…
と、わたくしがにっこりナイフを構えて振り下ろそうとしますと、
こいつは頭がおかしいのか慌てずこう言い放ちました。

「え〜、揉んでから死にたいから勘弁してくださいよぉ」


109 :731 ◆p8HfIT7pnU :2007/12/04(火) 00:12:29
あまりの気の抜けた声に、わたくしとした事がナイフを落としてしまいました。
そのわたくしの隙を見逃さずそいつはまくしたてました。

「そうだ、ちょうど1日経ったらその娘連れてきますよ。一緒に揉みましょう」

なんとわたくしまで悪の道に引きずり込もうというのでございます。
あっけにとられておりますとそいつはもう逃げ支度をしておりました。
日時と待ち合わせ場所だけ告げるとすたこらさっさと逃げてしまいました。
わたくしも追いかけて仕留めようとしたのですが、お許しください陛下。
42歳とはいえ健康な男性であるわたくしは欲望には勝てませんでした。
まだまだ立派にやっていけます。凱旋帰国しましたら妾を50人程用意して下さい。
すぐに健康優良で質実剛健な兵士を沢山産ませてご覧にいれます。

それにしても何だろうかこのナイフ。む、解説書が…
以下説明書より抜粋。
”ククリ”
(ネパール発祥のナイフ。大きく湾曲した部分の下側に刃があり、刀全体の重みが刃の部分にかかって
 目的物を軽く切断出来る造りになっております。)

ナイフの中でもなかなか使いやすい部類のもののようです。軽いですし。あと、何々…

(なお、刃の下部にある窪みは女性器を模したものであると伝えられています)

…あの変態に相応しい猥褻なものですが、それでも武器は武器。ありがたくいただいておきましょう。
さて、思いがけない待ち合わせの約束を取り付けてしまいました。しかし不可解とはいえ約束は約束。
ちゃんと日時と場所を確認し、5分前集合。それこそ陛下の忠実なるしもべ!
え〜、今がちょうど16時だから17日16時。学校にて待ち合わせ、と。
ん、学校?学校といえば…

…禁止エリアではございませんか。

  ※※※※※※

110 :731 ◆p8HfIT7pnU :2007/12/04(火) 00:17:16
【鳥肌 実
所持品:盗聴器受信機、レポート用紙、ククリ(1本)
基本行動方針:陛下への忠誠を示す
第一行動方針:陛下のご命令に従い報告書作成
最終行動方針:陛下に表彰される
【阿部 智則
所持品:ククリ(1本)
基本行動方針:乳揉みたい
第一行動方針:すごく乳揉みたい
最終行動方針:ものすごく乳揉みたい

【現在位置:I-6】
【8/16 16:01】
【投下番号:304】

…徳井さんと行動方針かぶったかなあ。



>>93
ホリケン…アホの子イメージなのに切ない。
誰か助けてやって欲しい。

>>105
ロワらしからぬ食べ物の描写が秀逸。
見る度に新しい発見があって凄い。

137 KB
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

★スマホ版★ 掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50

read.cgi ver 05.04.02 2018/11/22 Walang Kapalit ★
FOX ★ DSO(Dynamic Shared Object)