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お笑いロワイアルvol.9

1 :名無し草:2007/11/06(火) 03:18:08
お笑い芸人を題材としたバトルロワイヤルパロディスレッド
ローカルルールや過去ログ・関連スレッドは>>2以降

まとめ入口
ttp://karen.saiin.net/~owaraibr/


2 :名無し草:2007/11/06(火) 03:20:03
*共通ローカルルール

・死亡した芸人の復活は基本的に不可
・あくまでネタスレです。まったりどうぞ
・*書き手用ローカルルール

・投下する前に過去ログ、まとめwiki(特に必読項目)に目を通す
・投下時に明記すること
・どのレスの続きか(>>前回のレス番号)
・文中で芸人が死亡、同盟を組む、他、重要な出来事があった場合
・所持品、行動方針、現在位置、日付、時間帯、投下番号
・トリップ強制 付け方は名前欄に『#好きな言葉』
・書き手は一つの話に一人だが、以下の場合は引き継ぎ可
・書き手自身が執筆中止を告げた場合
・最終投下から3ヶ月以上経過した場合
・書いた話に不都合があった場合、番外編としても投下可
・2002年ver.の話を投下する場合は文章の最初でその旨明記する
 他、詳しくはまとめ参照


*読み手用ローカルルール

・書き手に過度な期待、無理な注文をしないようにする
・コメント、感想、要望などはアンカーがついているといいかもしれません
・本スレで言いにくいことはしたらばのチラシで


3 :名無し草:2007/11/06(火) 03:21:12
過去ログ
vol.11 http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1155627128/
vol.1 http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1157112615/
vol.2 http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1157808776/
vol.3 http://aa5.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1159607069/
vol.4 http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1164460385/
vol.5 http://ex20.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1170929240/
vol.6 http://ex20.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1171548439/
vol.7 http://ex20.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1182000891/
vol.8 http://ex20.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1187191056/

2002年Ver.まとめサイト・ミラー集(更新停止中)
http://www.geocities.jp/geinin_battle/
http://makimo.to/cgi-bin/search/search.cgi?q=%82%A8%8F%CE%82%A2%83o%83g%83%8B&andor=OR&sf=0&H=&D=geinin&shw=2000

9〜10スレ目・関連スレ
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1095916149
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1114308019
http://tv7.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1114426574


↓こちらを使って見てください
2ch DAT落ちスレ ミラー変換機 ver.4
http://www.geocities.jp/mirrorhenkan/


4 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/06(火) 03:32:46
前スレ>>326-340続きです。  ビビる大木・爆笑問題太田・インパルス板倉


『In Cold Blood』


日が沈み、夜が訪れる。
暗い、全ての命を呑み込むかのような夜。無力な者共に恐怖を一面に撒き散らす夜。
そんな闇の帳の中、一人の男がまるで小動物のように心細そうな様子で歩いている。

不意に男の頭上で枝が揺れた。
既に暗くなっているせいか余計に大きく響く葉の擦れる音に、男は思わず情けない声をあげる。

「ひっ……!?」

反射的に枝を見上げた彼の目が辛うじて捕らえたのは、今しも木から飛び立った鳥の影だった。
大袈裟なまでのため息で安堵を表現しつつ闇へと消え行く鳥に見とれていると、突然彼の顔を冷たい紙切れのようなものが撫でる。
疑問と薄気味悪さを感じた彼が視線を下げると、足元にふわりと、小さな、とても小さな葉っぱが落ちたのが分かった。
屈んで足元に舞い降りた葉を拾うと、彼は苦笑して呟く。

「大体曖昧三センチってとこか……アソコを隠すには、ちょっと小さすぎるかな」

男が頭に浮かべたのは、かつて彼等が巻き起こしたブームであり、裸に葉っぱ一枚で踊り狂った過去。
懐かしい思い出につい現実逃避しかけるが、すぐに気を取り直してぱんぱん、と頬を叩き口を開く。

「……ま、まあ、いくら芸名がこれだからってビビってばっかじゃダメだよな。誰か一緒に協力してくれる人探さなきゃ」

自分に言い聞かせるかのようにそう言い、景気付けに頭の中でビートたけしの顔を殴り飛ばすさまをイメージする。
そうして彼――ビビる大木は、再び歩みを再開した。


元々ストレスに非常に弱い性質の大木にとって、このバトルロワイヤルというイベントはまさに酷としか言いようがなかった。

5 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/06(火) 03:36:12
何せ生きている限りずっと、いつ敵に襲われるか分からない事による緊張と疑心暗鬼を強いられるのだ。
普通の人間でさえいつこのプレッシャーに負けて発狂するか分からない中、
ネタが滑っただけで血を吐いた経験さえある大木のような人間が正気を保って生き続ける事は、本来ならば奇跡に等しい。
だが、今彼の正気を繋ぎ止めている物は、断じて奇跡なんかではなかった。
圧倒的なプログラムへの嫌悪である。
大木はバトルロワイヤルが、そしてそれを行い続ける国家が大嫌いだった。
表には決して出さないものの、水面下ではますだおかだの増田英彦ら数名の芸人と共に、
バトルロワイヤルの反対勢力を熱烈に支援していたくらいである。
何故そこまで嫌うのか。
それはかつての相方と共に無謀な企画の犠牲となった過去の苦い経験に起因する。
忘れもしない、あの大地が暗転した瞬間。
あの日スキー場で、かつての相方と共に乗り込んだソリがコンクリート壁に吸い込まれていく瞬間。
あの刹那、代償として彼等が得られたのは、それぞれ半身不随寸前だったり生死の境を彷徨ったりするような重傷と、明確な死への恐怖、
そして生への感謝。
その時からだ。大木が命を粗末にするような言動、物事に拒絶反応を示すようになったのは。
そんな彼に、バトルロワイヤルと言う無駄かつ傲慢なる命の粛清を見過ごす事は出来なかった。
この辺りは評価に値すべき立派な心掛けと言ってよいだろう。

しかし、いくら決意を固めてもやはり本来の小心な性分を隠し切れないのが大木の困ったところである。
事実、この殺し合いに放り込まれてからの彼の最初の思考は、この状況が怖くて堪らないといういささか情けないものであった。
いくら彼自身がこうなる事が想定の範囲外とはいえ、曲がりなりにも一端の反対運動の担い手がこれでは臆病に過ぎるというものだ。
それでも流石に彼の名が呼ばれる頃には主催に反抗する意思は取り戻していたが、いかんせん体が伴わない。
決してこれまで仲間を得るチャンスが全くなかったわけではない。
それにもかかわらず今大木が独りなのは、チャンスがあったにもかかわらず逃げ出してしまったからに他ならない。
数時間前、漸く参加者らしき人物にばったり出くわした大木が、声を掛けようとした瞬間。

6 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/06(火) 03:37:16
『なあ、俺最期に相方に会いたいねん。やからそこ退いてくれへん?』

軽い調子、しかしながら有無を言わせぬ響きのある拒絶。
髭面に浮かぶ、狂ったように虚無的な笑み。
そして、何気なく上げられるライフルの銃口。
堪らずすぐに逃げ出した。
その男の得体の知れない雰囲気が厭だったのか。それとも、あの暗い銃口に見据えられる事に我慢ならなかったのだろうか。
今となってはもはや大木自身にもよく分からない。
確かなのは、大木はこの行動を後悔しているという事くらいだ。
よく考えれば、彼との繋がりの薄い自分が銃を向けられるのも当然だろう。
もし彼が殺し合いに乗ってたなら、あのまま躊躇いなく自分を撃っていたはずだ。
彼も話せば分かってくれたかも知れない。協力してくれたかも知れない。それにも係わらず逃げ出してしまった。
だからこそ、大木は決意していた。もうこのような失敗はするものか、と。
誰が来ようと今度こそちゃんと話して、プログラム打破に協力してもらおうと。


闇が訪れても尚止まない、嘲笑うかのような蝉の合唱の中、仲間を求めて大木は彷徨う。
結構長いこと歩き続けているが、未だに二度目のチャンスが得られない。
やっぱり最初のチャンスを逃したのは痛過ぎたか。

「リセットさえ出来りゃ最高なんだけどなあ……」

自分が出発する場面まで戻れたら、いやせめて、あの男ときちんと話し合えてれば、先程呼ばれる名前も減らせたかも知れないのに。
と、そこまで考えたところで自分が無意識にかつて居たユニットのテーマに擬えた台詞を呟いていた事に気付いた。
またしても苦笑が止まらなくなった中、大木は連鎖的に一人の男を思い出す。

(そういえば、堀内さん大丈夫かなあ……)

ネプチューンの堀内健。
かつてのユニットでの同士な上、プライベートでの付き合いも多い彼は、先程放送で相方の一人である名倉潤の名前を呼ばれたばかりだ。
長年苦楽を共にしてきた彼ら三人の絆の深さは、間近で見てきた大木も十分過ぎる程理解していた。

7 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/06(火) 03:38:18
(相方か……それに比べて俺は……)

ピン芸人である大木は相方の心配をする必要がない。だからその分他の芸人よりも有利な筈なのだ。
かつての相方はすでにお笑いの世界から身を引いている。
参加者としては勿論、校舎で少しばかり見かけた迷彩服を着た芸人のように、兵士として参加させられてる心配さえ無い。
だが、それでもその分相方ではない人間の心配までしてしまうのだから勿体無い。
要するに彼はお人好しなのだ。お人好しだからこそ、ストレスを背負い込んでしまうし、小心にも繋がってしまうのだ。
大木は放送を聞いた堀内の姿を想像する。無邪気で、それでいて繊細な心を持つ彼が果たして耐えられるのか。
子供っぽい彼の事だ。もしかしたら状況を考えられずに泣き叫んでいるかもしれない。

(とりあえず堀内さんもなるべく探してみるか……ほっとくわけには行かないもんなあ……)

お人好しらしい選択肢を考慮に入れ、彼を慰める台詞を考え始める。
大木が前からやって来る足音に気づいたのは、そんな時だった。


足音はどうやら二人分のようだった。
向こうはまだ大木に気づいてないらしく、話し声らしきものは聞こえるもののこちらに注目する様子は無い。
思わず反射的に木の陰に隠れた大木は、そっと耳を澄ます。

「……それにしても、どうせワルサーならP38の方が欲しかったんすけどね」
「ああ、あのバビル2世が使ってたやつか」
「ルパン三世でしょ。てかツッコミがいないのにボケてもしょうがないじゃないですか」
「何を言う。俺だって初めてのコントの時はツッコミだったんだぞ。
 てかそもそもお前にしたって腋の下と組む前はツッコミだったんじゃねえのか?」

会話を注意深く聞いた大木は、何とか記憶と声の照合に成功した。
爆笑問題の太田光と、インパルスの板倉俊之。
二人とも間柄で言えば微妙である。せいぜい太田の相方の田中とよくジャイアンツの話題で盛り上がるくらいだ。
だが、だからと言って見逃せるわけがなかった。
誓ったばかりだ。誰が来ようとちゃんと話し合って、プログラム打破に協力してもらうと。
それに、今彼らは二人で行動している。

8 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/06(火) 03:40:36
特別親しい仲でもないはずなのに何故同行してるのかは不思議だが、
殺し合いに乗ってるのならば他人と共に行動するなんて事はないはずだ。
この分だと恐らく、自分と同じようにプログラムを止める仲間を集めているのに違いない。
――いける。今度のチャンスは逃すものか。


大木は失念していた。例え殺し合いに乗っている者同士でも、効率的に人を減らすために手を組む場合があるという事を。
彼の運命を変える致命的な判断ミスに気付けないまま、大木は希望を込めた声を張り上げて二人に走り寄る。

「どうもぉー! お二方とも、こぉんばんみぃー!」

        *     *     *

突然出くわした大木に対し二人は一瞬目を見合わせたが、すぐに笑顔を作って大木を出迎えた。
軽くいじられた後、情報交換がしたいという太田の提案を大木は何の疑いも無く受け入れ、三人で木陰に座り込む。
まず大木が今までの身の上話を簡単に語ったところで、太田が徐に口を開いた。

「えーと、何つうか、要するにお前は、この殺し合いを止めたいわけか?」
「ええ、その通りです!」

きっぱりと大木が答える。
拳銃こそ持っていたものの、それを大木に向けて発砲してくる事は無かったし、態度も中々落ち着いている。
太田達の沈着な物腰は、本来臆病な大木の心に見事に滑り込んでいた。
かいつまんで言えば、大木は既に太田と板倉の二人を信頼し切っていたのだ。
冷静沈着と人畜無害はイコールにならない事に思い当たらないまま。

「つーかお前、本当にこの殺し合いを止められると思ってんのか?」
「もちろんですよ! ここでビビッているわけにはいかないでしょう! 
 芸人みんなで力を合わせれば、クソッタレの政府共に一泡吹かせてやる事くらいチョチョイのチョイですよ!」

自信を得て勇猛になった大木は、もはや多少の意地悪な質問にも怯む事はない。
先程まで鳥やら木の葉やらにまで怯えていたのも忘れてきっぱりと言い切る。

9 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/06(火) 03:41:44
この時点で彼の心は確かに希望に満たされていた。
脆い希望は大木から注意力と判断力を奪い、次の台詞を確定事項のように吐かせる。

「当然、太田さんもこの糞プログラムをぶっ壊すつもりなんですよね?」

大木は決め付けていた。いや、彼にとっては考えるまでもない事だったと言った方が良いかも知れない。
全てを知る者ならば、彼の愚鈍を笑う事も出来るだろう。
最も信じてはならない者共に縋った、間抜けなピエロだと。
しかし、だからと言って彼を責める事は不可能な筈だ。
何が真実なのかは起こってみないと分からない、それがバトルロワイヤルなのだから。
事実、肯定を前提にした質問に、太田は数瞬の破顔ののち、期待通りの答えを返したのだから。

「当たりめえじゃねえか。こんな事やってられねえだろフツー」

大木の顔がぱっと明るくなる。
思い通りの答えに俄然テンションも上がる。もはや彼の希望は飽和寸前にまで達していた。
やっと会えた相手は、注文通りの人間だった。
善き理解者を得た彼は、すぐに鬱積していたプログラムへの悪口を吐き尽くす。

「そうですよね! やっぱりこんなのおかしいですよね!」
「ああおかしいよ。冗談じゃねえよ全く」
「こんなふざけた殺し合いに乗るなんて、ホント馬鹿しかありえないですよね!」
「そりゃそうだろ。人殺しなんてくだらねえ事する奴、マジ変だよ。もう馬鹿の王様ってくらいありえないね!」
「いやー、ごもごもごもごもごもっとも!」

この時だけは、確かに彼の前途は希望で満ち溢れていた。
だが彼は知ってただろうか。この無常なる人生劇場において、希望ほど儚いものはない。
脆い希望は、破壊されるために存在する。
それがバトルロワイヤルにおける必然なのだ。


「なーんてな」

10 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/06(火) 03:42:58
何かがぐるりと回転した。
大木はその一言が一体どういう意味なのか理解できないまま、額に冷たいものを当てられる。
その間彼が感じたのは、まるで一学期の終業式に校長先生がいきなり『今年の夏休みはありません』と言い出したかのような違和感。
脳が正しく現状判断出来ない、でも出来ても理解したくない。
そんなおぼろげで不安定な状態に陥ったのを辛うじて自覚する。
縋るべき僅かな希望を求め、闇と同化するような銃を見上げると、堪らず大木は呻くように言葉を吐き出す。

「――え? ……何いきなりふざけてるんですか、太田さん?」

そう、これはふざけた冗談の筈なのだ。
だって、太田自身も言っていたではないか。人殺しなんてくだらないと。

「や、やめてくださいよ。俺こういう冗談は嫌いなんですよ」
「冗談じゃねえよ。ぶぁーか」

だが無情にも、呆気ない宣告によって大木の楽観は切り捨てられる。
顔色が一気に蒼くなるのを大木は感じた。
脳信号が作動しない。頭の中がミートスパゲティか麻婆豆腐にでもなったかのようにぐちゃぐちゃになる。
太田はそんな大木を見下すかのように覗き込むと、弄るような調子で続ける。

「いや待てよ、というかさっき言ったやつの方が冗談だったな。
 プログラムをぶっ壊す? んな事出来るわけねえだろ。それが出来りゃ苦労はしねえよ。
 人殺しが馬鹿? とんでもない、この状況ではそれが当然のルールなんだよ。
 むしろ本気でプログラムを潰せるなんて思ってる奴の方が、よっぽどの馬鹿だと俺は思うね。
 殺し合いなんだろ。だったら、殺す人間と殺される人間、この二種類以外にいちゃならねえだろうが」

ゾッ。本当にそんな効果音が聞こえたような気がした。
大木の脳内では恐怖が拡散するだけで、以前頭はどろどろのぐちゃぐちゃのままだ。
この人は何を言ってるんだ?
確かに心強い味方となってくれるはずだったのに。
何でそんなに否定するんだ?
ようやく頼れる指針を得られた、そのはずだったのに。

11 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/06(火) 03:44:11
「だ、だって、こんな事やってられねえって言ったじゃ……」
「んー、そりゃまあ人殺しなんかやらねえよ、普通ならな。
 でも今はどうだ? どう考えても普通じゃねーもん。異常事態だもん。
 殺さなきゃプログラム進まねえじゃねえか。だったら殺るっきゃねえだろ?」

体が震え、歯がガチガチと鳴り始めた。
大木の周りを悪夢の霧がゆっくりと包む。
もはやわけが分からなかった。
今の状態の自分よりは、チンパンジーの方がよっぽどまともな思考が出来そうだと大木は思う。
今や、大木の辞書から勇猛という言葉は削除され、小心という悪癖が彼を完全に支配していた。

「だいたい何だよ。芸人みんなで力を合わせるなんて、笑わせるんじゃねえよ。
 俺以外にも大勢いるぜ、どんな理由にしろ平気で人を殺せる奴は。所詮人間ってものは裏切る動物なんだからよ。
 お前そういう人間と協力出来るのか? 無理だね。お前なんかに出来るわけない。
 だってほら、現に今こうして、俺に何も出来ないでいるじゃん」

そう言うと太田は、銃口を大木の額に強く押し付ける。
大木は堪らず、焼きごてを押し付けられたかのような身振りで後ろに飛びのいた。
ガチガチガチガチガチガチガチガチ。
大木の顎が刻むビートが速さを増す。
そして臆病と恐怖が桎梏となって大木を縛り付けた。
もはやそれきり大木は動ける状態にはなかった。
出来る事はただ、目の前の銃口とその向こうに浮かぶ太田の顔を見返す事のみ。

「しっかしそれにしても情けねえなあ。お前それでも反対運動に参加してたのかよ。みっともねえ」

不意に、まだ日が射していた頃に会ったあの髭面の男――ザ・プラン9のお〜い!久馬を思い出す。

「まあいいや。流石にちょっと可哀相になってきた。お前もこんな状態で生きていても辛いだろ。だから」

あの時大木が触れたのは、悪意や殺意など無さそうな、それでも近寄りがたい得体の知れない狂気。
だが、今の太田から発せられるのは。

12 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/06(火) 03:45:29
「今ここで楽にしてやるよ」

久馬とは逆の、狂気の廃除された純粋な悪意と殺意のみ。


しかし、幸運にも、いや、不幸にもと言うべきだろう事に、大木の物語はこれだけでは終わらなかった。
止まらない震えの中、拙いながらも頭を撃ち抜かれる覚悟を大木がし切ったその時。

「ちょっと待って下さい、太田さん」

唐突に横入りしてくるもう一つの声。
大木にはそれが人間の声である事さえ瞬時には思い当たらなかった。
ぎこちなく首を動かしてようやく、今まで沈黙を守り続けてきた板倉の発した台詞と視認する。
そして次の瞬間、彼は大木、太田共に耳を疑うような事を口にする。

「止しときましょう。殺しちゃいけませんよ。大木さんみっともないくらい怯えてるじゃないですか」

言われて大木はハッとした。
確かに、よく考えたら板倉の言う通り今の自分はかなり情けなく見えるに違いない。
今やっと気づいたが、鼻水と涎、さらに小便まで漏らしているくらいだ。
こんな姿でそのまま殺されればと思うと、我ながらみっともない事この上ない。
だがそれ以上に重要なのは、板倉が今『人殺しを否定した』事だった。
今も尚、太田に殺される態勢は変わってない。が、板倉のこの発言により、大木が助かるかもしれなくなったのは確かだ。
なぜ太田と同行していた板倉が、今になって太田の行動を止めたか。
覚束無い脳みそを何とか動かし、大木は答えを探す。
そしてその結果辿り着いたのは、希望の再来の兆し。

(え、ちょっと待て、ひょっとして板倉は太田さんが殺し合いを肯定する側だって事を知らなかったのか?
 なるほど、それなら納得できるな。ここでの太田さんの行動が板倉にとっては想定外だったわけだ。
 要するに板倉は殺し合いに乗ってるわけじゃなく、やはりプログラムを止めたい側だという事か。
 よし、それならまだやりようがある。板倉と二人で、太田さんを説得できれば……!)

13 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/06(火) 03:47:49
死の淵から見えた一筋の光明。
大木は板倉に感謝した。彼のおかげで、まだ挽回出来る。
殺し合いを止めさせるために動く事が出来る。
絶望から一気に希望へと引き戻された。大木は確かにその手ごたえを感じる。
だが彼は、その希望が自らの創り出した幻想だと言う事に気づけなかった。
もしも大木の思った通りならば、何故板倉はここまでのやり取りを黙って見過ごしていたか。
そもそも何故、太田が板倉を殺さずに同行を許していたのか。
矛盾を知る余裕も無いままに、復活した希望が、ジェットコースターのように再び更なる絶望へと堕とされる。



「こんなビビリ放っておいてもすぐ他の誰かに殺されるでしょ。殺しても弾の無駄遣いになるだけです」



呆気なく言い放たれた。
待ち構えていたのはやはり絶望。
ガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチ。
体の震えと歯鳴りが一気に倍返しとなって復活した。
目に映る事象までぶれ出しているのは、震えに伴う眼鏡の揺れのせいか、それとも全身を覆い尽くした絶望のせいか。
弾の無駄遣い。
それはもはや、人間に向けた言葉ですらなかった。
チェスの駒だ。死ねば生き返る事は無い、だが道具としての尊厳しか持たない、無機質な存在。
大木は悟った。何の事はない。あらゆる意味で板倉もまた外れだったのだ。
人間を駒と見なせるその傲慢さ、悪辣さ。

「貴重な弾なんだし、もっと骨のある奴にとっておきましょうよ。ね、太田さん?」

チェックメイトだった。
肉体的にではなく、精神的に。
闇に満ちた森の中の筈なのに、大木には確かに、二人の放つ真っ黒の気が見えた。
冷酷な悪意が溢れんばかりに立ち込める、最悪の気が。

14 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/06(火) 03:49:20
何やら不機嫌そうな口ぶりで太田が何かを言い返している。
しかしそれは、今の大木にとっては無意味な音の集合体でしかなかった。
彼の頭に響くのは、残酷な、真実にすり替えられてしまった虚言。

『殺しても弾の無駄遣いになるだけです』

――俺は、俺という人間は、死ぬ価値すらないという事か?

その時、不意に板倉の顔が大木の眼に飛び込んできた。
何故だろうか。彼の瞳は既に潤んでいたのに、その顔だけは酷く鮮明に映り込んで来た。

そしてその顔は、大木が今までの人生で見た顔のどれよりも、歪で、酷薄な笑みに満ちていた。


「ギャァァぁああぁああぁぁぁあアアァァッっ!!」


正気の塑像がマシンガンで撃ち落とされる音を大木は聞いた。
もう既に限界は通り越していた。
彼にとってもはや目の前の二人を人間として見る事は不可能だった。
それはまさに、魔物か怪物の類だった。
命を弄び、魂を喰らう魑魅魍魎の化身。
大木は叫んだ。声の限りに、虚しい音の羅列を森閑に響かせた。
そして彼は、信じられないような速さでその場から飛びのくと、一目散にその場から離れていった。
魔物が追ってくる様子は、無かった。


15 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/06(火) 03:51:05
        *     *     *

更なる闇が染み渡る森の中、木陰に取り残される魔物が二匹。

「……テメエ、ふざけんなよ。板倉ァ」

静かな苛立ちを込め、太田は板倉を詰る。
大木を思う存分からかった末に殺す事で、サンプルをまた一つ手に入れる筈だったのに。
結局板倉に止められて戸惑っているうちに、大木に手が届かない所へ逃げられてしまった。
彼の頭にあるのは、裏切りという予定調和の早過ぎる前兆。
ここで反旗を翻すメリットがあるとは思えないが、弾を惜しんで折角の人減らしの機会を見逃すのはおかしいのもまた事実。
行き場を失った銃口は今にも板倉の方を向きそうにしながら震えている。
そんな噛み付かんばかりの表情の太田を、板倉は未開の地の言語を聴いたかのような顔で見返す。

「僕はただ、ケースバイケースを実践したまでですよ。
 もうあの人の分の絶望は十分参考になったし、なら限りある弾の浪費は避けるのがセオリィだと判断したまでです」
「何だと? 弾なんか余裕であるし、それに無くなったら無くなったで他の奴から奪えばいいだけな話だろ?」
「銃を使うのは僕らだけではありませんよ。ゲームが進むにつれて、襲撃にしろ自衛にしろあらゆる理由で弾が消費されます。
 弾が十分残ってる拳銃をこれからも手に入れられる保証なんて、何処にも無いんですよ。
 控えの弾も支給されてないだけに、いかに終盤まで弾を温存できるかが勝負を分ける事になります」

氷のように冷静に、板倉はよどみなく言い切った。
それを聞いて、太田はふと荒ぶる表情に怪訝を加える。
苛立っているようでやはり彼もまた冷静だった。
これも四十年を越える彼の人生経験のおかげか、それとも彼を文化人まがいの地位まで押し上げたその類い稀なる感性の賜物だろうか。
浮き彫りになった違和感の正体に太田が迫る。

「おいちょっと待て。控えの弾が支給されてないってどういうことだ?」
「は? 言葉通りの意味ですよ。だからこそ大切な弾を出来るだけ温存しようと言ってるわけですが」


16 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/06(火) 03:52:17
そう返す板倉に対し、太田はすっとデイパックを下ろし、中に手を伸ばす。
出て来たのは、物々しく存在を主張するグロック17の予備マガジン。
それを見て、それまで冷静を保っていた板倉の表情に変化が訪れる。

「え? それ、どういう事ですか?」
「それはこっちが聞きてえよ。何? ひょっとしてお前には替えの弾支給されてなかったのか?」
「知りませんよそんなの! うっわ、マジっすか、何だよそれ!」

口をあんぐりと開け、呆けたような表情をする板倉。
その様子を見て、漸く太田は板倉の主張の意味を理解した。
要するに、板倉は全ての銃が予備の弾が用意されてない使い捨てのものだと思ってたのだ。
自身の銃に替えの弾が無かったが故の勝手な思い込み。
頭の切れるこの男にしては抜けたミスだが、このくらいなら陥っても仕方がないと言える。

「これで分かっただろ。俺はもちろん、他の奴にも替えの弾が支給されている奴だって少なくともある程度はいるに違いない。
 要するに、弾を出し惜しみする必要なんかどこにもねえんだよ」

そう言うと、太田はデイパックにマガジンを仕舞い、代わりに水を取り出す。
折角動きが止まっただけに、そろそろ水分を補給しておく事を思いついたのだ。
未だ満タンに近いペットボトルを静かに傾け、咽喉を鳴らしていると、唐突にくぐもった音が聞こえてくる。
それを聞いた太田が視線をやると、そこにはいつの間にかいやらしく歪んでいる板倉の顔があった。
その口からは、ククッ、クククッと、不気味な含み笑いが断続的に漏れている。
何だ、まさか壊れたんじゃなあるめえな。そう太田が思ったその時、含み笑いが声に変わった。


「……そうか、そうだったんだ……。
 ただ銃だから当たり、役に立たないモノだから外れってわけじゃなくて、
 同じ銃でも替えの弾が用意されてる当たりの銃、用意されてない外れの銃とちゃんと分けられてたんだ……。
 すげえじゃん、まさかこんなにまで綿密に考えられてたなんて……
 フフッ、やっべ、ますます面白くなってきたんだけどコレ!」

17 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/06(火) 03:55:35
その表情は、テレビゲームで隠された裏面を発見した時の少年そのものだった。
板倉は笑う。楽しそうに、この島の良心に燃える者共を嘲笑うかのように。
その様子を見て、太田もまた嬉しそうににやりと笑う。

(フン、言ってくれるじゃねえか。それでこそ観察のし甲斐があるってもんだ。
 馬鹿も使いようによっては見てて楽しくなる事も分かったし、当分退屈する事は無さそうだ)

そして太田は、ペットボトルの蓋を閉めると、チラと時計を見る。
名倉の死体を置いて出発してから大分時間が経った。もうそろそろ学校も近くなっているに違いない。
デイパックの荷物を片付けチャックを閉めると、それとなく板倉を促す。

「それじゃそろそろ行くぞ。もう弾なんか気をつける必要はねえかんな、思う存分やってもらうぞ」
「はいはい、分かりましたよっと。そんじゃ、板倉発進! なんてね」

こうして絶対零度の血液の流れる二匹の魔物は再び活動を再開した。
たかが一人の正義に燃える男を踏み躙った事など、彼らにとってはまるで歯牙にもかからぬ事のようだった。

18 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/06(火) 03:57:39
        *     *     *

「はあっ、はあっ、あはっ、はっ……」

何処までも続く暗闇の中、大木は尚も走り続けていた。
もう既に太田の姿も板倉の姿も見当たらない。それにもかかわらず足を止める事が出来なかった。
大木の頭の中では、巨大な嵐が渦巻いていた。
否定された。自分のポリシーを全て、何もかも。

『プログラムをぶっ壊す? んな事出来るわけねえだろ。それが出来りゃ苦労はしねえよ』
『本気でプログラムを潰せるなんて思ってる奴の方が、よっぽどの馬鹿だと俺は思うね』

そうなのだ。確かに太田の言う通りだった。
プログラムを破壊する。無理だった。少なくとも勝算は無かった。
もしそれが出来てたなら、とっくの昔に出来ていた。そもそもこんな事態に陥ることも無かった。
国家を嫌って何になるのか。反対運動に参加して何になったか。
何にもならなかった。
殺し合いに乗った人間に対し、自分はただ怯え、震えている事しか出来なかった。
絶対的な殺意の前では、打破への闘志も無に帰するのみだった。
大木淳はただ、ちっぽけで、悲しいまでに無力な存在だった。

(でも、だからって、あんな、あんな……)

しかし、かと言って太田達のように殺し合いに乗る気にはなれなかった。
一応彼の中には正義を志す気持ちは残っていた。それに縋りでもしなければ正気を保てなかったというのもある。
だが、臆病な大木には到底彼らの情け容赦もない所業を真似する度胸が無かったという事が大きかった。
常識を完膚なきまでに握り潰した二人の存在が、大木にとって小さい筈が無くて。
崩壊しそうな理性の中、もう一人の常識外れの男の存在と合わせて、大木の体を執拗に痛めつける。

「……う、ゲエッ!」

19 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/06(火) 03:58:49
唐突に来る猛烈な吐き気。思わず大木の足が止まる。
不快感を林の中に吐き散らし、つい下を覗き込むと。
暗く赤い血が、無慈悲を示して雑草にへばり付いていた。

「ヒッ、血……!」

ますます絶望で染めた声で大木が呻く。
考えてみれば、たけしがやって来て山田を撃ち殺した瞬間から、彼は常にストレスと戦っていた。
理不尽な展開。孤独の恐怖。そして、先程の魑魅魍魎との邂逅というトドメ。
ここまで揃えば、前歴のある彼が再び吐血に追い込まれるのもおかしくは無いだろう。

(と、とにかく洗い流さないと……)

口の中が気持ち悪くて仕方がない。
胃腸薬も無く、医者の診察を受ける事など以ての外な今、せいぜい水で口の中を清める事くらいしか思い浮かばない。
デイパックを下ろし、水を取り出そうと中を探る。
すると、ペットボトルより先に、何か硬い物が手に当った。
何だコレ。そう思った大木はそれを掴み、引きずり出す。
それは、今まで彼が決して使うもんかと誓い、ずっと外の空気を吸わせようとせずにいた代物――拳銃だった。

「あ…………」

大木は硬直した。口内の惨状が一瞬にして吹き飛んだ。
ニューナンブM60。警官が使用する銃の代名詞。
大木はこれを使って人を殺すことはもちろん、本物の警官のように威嚇に使う事さえ考えた事が無かった。
どんな理由があろうとも、殺し合いのために用意されたものを利用する事は、殺し合いに乗った事になる。そう思ったから。
だが、今ではどうだ。理想は崩され、現実を突きつけられた。
もはや、殺し合いに乗ってもいいのではないか?
そんな内なる声に、大木は必死に反論する。

(違う! そんなことを認めてたまるか! 許されていいはずがないんだ、こんな事が!
 そう、罪のない人間をむざむざと死なせていく、こんな馬鹿げたプログラムが――)

20 :◇EeCmUBzmbsさん代理投下:2007/11/06(火) 04:06:23
――え?

この時、大木は気づいてしまった。心に折り合いをつけるための真理に。

(待てよ、確かに罪のない人が死んでいくのはおかしい。それは間違いない。
 だが俺は十分理解してしまったんだ。そんな罪のない人をも平気で踏み躙る、太田さん達みたいな人もいる事に。
 考えてみろ。同じ人間の命をあんな形で弄ぶ事が出来るような人が死ぬのは、果たしておかしいのか?
 むしろ、自業自得ではないのか?
 そう、そんな殺し合いに乗ったような奴、あるいは今にも人を殺しそうなほど危ない奴は――)


震える手で銃を見つめる。
頭の中では再び嘲るような太田の声が響く。

『だったら殺るっきゃねえだろ?』



――コ ロ ス シ カ ナ イ ノ カ ?


        *     *     *

この時、彼の中で、確かに何かが変わった。ただし臆病を上回るほどではない程度に。

その何かがおよそ十六時間半後、彼を更にもう一匹の魔物と巡り合わせ、無惨な最期を齎す事となる。

当然、その事を彼は知る余地もない。

悉く出会う人間に恵まれなかった不幸な男こと大木淳は、今しも非業の運命に向かって進み出して行く。

21 :◇EeCmUBzmbsさん代理投下:2007/11/06(火) 04:09:36
(【ビビる大木
状態:強い恐怖・錯乱
所持品:ニューナンブM60(5/5)
第一行動方針:――――
基本行動方針:殺し合いに乗った人、やばそうな人は殺す?
最終行動方針:皆と協力してプログラム打破(かなりの揺らぎあり)】)

【爆笑問題 太田光
所持品:マイク、グロック17(14/17)・控え銃弾(34発)、煙草、ライター、結婚指輪
第一行動方針:人々に死を与える
第二行動方針:板倉を見極める
第三行動方針:学校へ向かう
基本行動方針:死の魅力を追及する
最終行動方針:最後の一人まで生き残る】

【インパルス 板倉俊之
所持品:ワルサーP99(?/16)、灰皿、煙草、ライター
第一行動方針:太田と手を組んで人を減らす
第二行動方針:学校へ向かう
基本行動方針:究極の恐怖・絶望を知る
最終行動方針:不明】

【現在位置:G7 林】
【8/15 19:43】
【投下番号:293】

前スレ>>442
新作乙です。
ホトちゃん……orz
宮迫……せっかくタオルで和んでたのに……
これから宮迫がどうなるのか期待です。

22 :名無し草:2007/11/06(火) 16:39:26
>>21
乙です!
以前にも増して板倉が恐ろしい…。
いつもとは違う角度の話が新鮮でよかったです。


それから、>>1スレ立て乙です!

23 :名無し草:2007/11/09(金) 00:08:35
ほす

24 :名無し草:2007/11/11(日) 08:52:17
保守

25 : ◆8eDEaGnM6s :2007/11/11(日) 23:54:18
前スレ >>128-133 の続き


『Children of “N”』


兵士達の朝は早い。

まだ朝の定時放送にはだいぶ時間があるにも関わらず、食堂にあてがわれた建物にて朝食用のレーションが盛られた
プレートを受け取り、空いている席に着くなりイジリー岡田はふぁあとあくびをした。
「大丈夫ですか」
向かいの席に腰を下ろした兵士…元芸人の男に問い掛けられ、イジリーは力なく首を横にふる。
朝イチからロケなり何なりの仕事があるのでなければ、こんな時間に起きる事はそうそうない生活を送っていた中での、
そして前日の兵士の任務で体力を消費した状態での早起きは、確かにだいぶキツいものではあるだろう。
「今日も森の警備、海沿いの警備と身体動かしますから。食欲はないでしょうけどちゃんと食べてくださいね」
「………………」
一方で相手の彼の方は早起きにも慣れているのか平然とした口調でイジリーに告げ、スプーンを拾いあげる。
飯時にも関わらずヘルメットを目深に被っているのが何とも不思議ではあるが、現役の芸人ではない彼が
ここにいるためには多少やむを得ない措置ではあろう。
「……元気だねぇ」
はぁ、と一つ溜め息を付いて、イジリーも促されるままスプーンを手にとる。
仮眠部屋で雑魚寝ではあれど手足を伸ばして眠られる兵士でさえこれなのだ。
フィールドで戦々恐々とウトウトするぐらいしかできない参加者達の体力はこの一晩でどれだけ回復させられただろうか。
「………………」
色に煩い大東亜共和国謹製のレーションである以上は決して不味くはないのだろうけども、
味も分からないままレーションを口に運びながらもそんな考えが脳裏をよぎり、イジリーはもう一度溜め息を付く。

「……外のみなさんが心配ですか?」
どうやら自然と表情に影が差してしまっていたらしい。
不意にポツリとスプーンを指先でくるりと回しながら向かいに座る男が口を開いた。

26 : ◆8eDEaGnM6s :2007/11/11(日) 23:56:17
「そりゃ外の連中が気になる気持ちはわかりますがね、僕らは僕らのやるべき事をやるだけの事なんじゃないんですか?」
現状ではその選択肢しか提示されてない以上は。
小さく付け加えて、男は少し離れたテーブルをスプーンで指し示してみる。
「ほら、あそこの子達の期待に応えるためにも、ね。あなたがそんな状態でどうするんですかって話ですよ」
彼が示したスプーンの先には、細身だったり丸々とした体躯だったりといろんな意味で芸人らしい風貌の
20代の半ばとおぼしい若者達が集まっており、雑談しながらもチラチラとしきりにイジリー達の方を見やっている。
まぁ、彼らぐらいの年代の男子にとって、イジリーは今もなおある種のカリスマであり、
そのイジリーを生で見られたというのはこんな状況ではあっても一つの感動ではあるのだろう。
「あぁ、そこで机にうっぷしてる」
「違います。同じ机の逆側の」
「……わかってる」
しかしわざとその若い芸人達からやや離れた所で机にうつぶせになっていた小柄な人物をイジリーは口にしてみるも
即座に冷ややかなツッコミを男に入れられ、結局イジリーは苦笑いを浮かべつつ若者達の方を向いて
舌を高速で上下に動かしてやる。
イジリーを深夜の帝王たらしめる伝統芸に、若者達はわぁっとわきあがり、男も微笑ましげにその様子を眺めていたが、
その表情はさほど長くは続かなかった。
うっぷしていた小柄な兵士が身体を起こした事で、気付いてしまったのだ。
小柄で華奢なその体躯を迷彩の野戦服で覆ったその兵士があどけない顔立ちの女性であった事に。

芸人を兵士として扱っている以上、女芸人が兵士にまじっていても決しておかしい話ではないが、
ただ真夏の野外に立っているだけでも大変そうな彼女もまた、自動小銃を携えて戦場に立ち入らなければならないのかと思えば、
さすがに少しは心も痛むというモノ。
「………………」
アフロとまではいかないものの、もじゃもじゃとしたパーマ頭が目を引くその女芸人は、ほとんど手つかずのレーションを
一瞥してふぅと肩を落としている。
食べなければならないのはわかっていても、元々食が細い方なのか、この状況でより一層食欲が失せてしまっているのか。
結局彼女はスプーンを手に取ったりプレートの上に戻したりを繰り返しているようだった。

27 : ◆8eDEaGnM6s :2007/11/11(日) 23:58:36
「……どうしたの?」
「いえ、何でもないです」
アンコールにも応え終え、ふと目の前の男に視線を戻したイジリーは、男の表情の変化に気付いて小声で問いかける。
ついでに男の視線の先に誰が捉えられているのかに気付けば、ニヤとイジリーは笑みを浮かべてみせた。
「口説こうかどうか気になってるんだ」
「そこまで節操無しではないつもりなんですけどね」
「あぁ、もうちょっと年下の方が好みだったっけ?」
「……さすがに、怒りますよ」
すっとぼけた口調で発されるイジリーの言葉に眉根を寄せて相手を軽く睨む男だったけれども、
少なくともそんな冗談を口に出来るぐらいには相手は落ち着いている。そう考えればちょっとぐらい古傷を突かれても
ここは我慢しておくべきだろう。
「あんまり言うようでしたら、これからスケジュール教えませんから」
しかしさすがに言われっぱなしは例えかつての大先輩とはいえ面白くなく、本気でない事を示す軽い口調で男は告げるなり
いつしか空になっていたプレートにスプーンを置くと椅子から立ち上がる。


現在バトルロワイアルのフィールドを右往左往しているだろう参加者達がいなくなれば、未来のお笑いを担っていくのは
自然とここにいる若い芸人達という事になるのだろう。
このゲームの兵士役として惨劇の一端に触れさせられている事で、いずれ芸人である事を辞めようと思う者も
多々出てくるだろうが、それでも力尽き倒れた先駆者の想いを継ぐ者が、チルドレンが必ず現れてくれるはず。
それが目の前でイジリーを見てキャッキャ騒いでいる若者達か、それとも渋々レーションを頬張っている
小柄な女芸人なのかは男にも知る由はないけれども。

目を細め、「頑張れ」と口に出さずに呟いて。かつて若者達のように芸人としてキラキラと夢を見ていた男は
レーションのプレートを返却し、食堂を出て行った。

朝の定時放送まで、もう少しである。






28 : ◆8eDEaGnM6s :2007/11/12(月) 00:00:13
その頃、島の中央やや北寄りに位置する山の展望台でも、スーツを着た細身で長身な二人の男性による朝食が始まろうとしていた。
その中身は支給された固形食料少々と缶詰であり、これから今日一日をマーダーを避けて生き延びるための食事にしては
寂しすぎる事この上ないけれど。
「……赤岡、これ」
プルタブを引き、開けられた缶詰を見やって島田がぼそりと言葉を漏らす。
缶詰の中には無色のシロップがなみなみと注がれており、その中にうっすら青みを帯びた白い物体が無数に沈んでいる。
1立方cmほどの小さなその物体は指先でつまみ上げて頬張れば、コリコリした硬い食感をもたらすだろうか。
「何だ?」
「何でナタデココなの。今時」
「……それしかお前が見つけてこなかったからだろ」
ナタデココのブームってだいぶ昔じゃなかったっけ? と小首をかしげる島田に、赤岡は低いテンションが伺える声でそう答える。
「まさか朝から小豆やウズラの卵の水煮を喰えと?」
「いや、それもそれでアレだけど……」
島田の古びた水色のリュックに収まっている缶詰を引き合いに出して言葉を続ける赤岡に、島田はうぅと俯いた。
昨日、民家で見つけた缶詰は残り物だけ合ってあまり食料として期待できる物ではなかったけれども。
数十分前、展望台から先に山を下っていった野村に持たせたミカンの缶詰がいかに貴重な物だったか。
「味はともかく、長靴いっぱい食べても……ねぇ」
「シロップの糖分がカロリーになるだろうから、文句を言うな」
「飲むの? 缶の縁とか錆びてるのに?」
「これをシロップに浸して食べればいいだろ?」
こうやって、と固形食料を一度缶の中の液体に浸し、シロップを吸わせてから赤岡は口の中に放り込んだ。
しかし赤岡の表情には俄に渋みが混じり、画期的なアイデアがさほどではない……寧ろ失敗案である事を島田に如実に伝える。

「……ま、こんなモンでも食べるしかないか」
とはいえ、ひとたび缶詰を開けてしまったからには無駄にする訳にはいかず、がっくりと肩を落として
島田はナタデココをつまみ出して頬張った。

29 : ◆8eDEaGnM6s :2007/11/12(月) 00:03:45
この東南アジアの食べ物が一大ブームになったのは1993年頃。当時の二人はまだ芸人としてデビューしておらず
長野の一介の高校生にすぎなかった。
無味ながらも顎に堪えるゴリゴリとした食感が何とも懐かしく、あの日常にはもう戻れないのかと考えると
自然と島田の気分も滅入ってしまうというもので。
咀嚼に疲れたか、やがて島田は俯くとハァと深く溜息をついてしまう。
「………………」
このバトルロワイアルがドッキリの類ではない事は、存分に昨日半日で思い知らされた。
殺すか、殺されるか、自ら命を絶つか……ぐらいしか参加者である芸人の結末は残されていない。
それでも。


『このゲームは自由度が高いって言うのかな、指示された『殺し合う』以外にも色々な選択肢がある、と僕は思う。』

『…ネタをね、演りたくなったんだ。
 長野の単独で演るはずだったのも、そうでないのも、出来る限りのネタをこいつに全部録音したい。』


昨晩赤岡に告げられた言葉が島田の脳裏で蘇る。
こうなってしまった以上は、殺されてしまう事はやむを得ない。けれどもその前に何かを成し遂げたい。
そんな彼の想いは決して島田にもわからない事もないけれど。
「………………」
「……大丈夫か」
手が止まっている、と付け加えて心配そうに顔を覗き込んでくる赤岡に、何でもないと島田は首を横に振る。


結局、赤岡の提案に対して島田が出した答えは「No」だった。
日中に見事に取り乱してしまったように、こんな緊迫した状況でネタに専念できるほどの余裕はなかったし、
何よりもどうしても島田の脳裏に菊地の青白い顔がちらついて、お前にその資格など無いと決心を妨げるのだ。

30 : ◆8eDEaGnM6s :2007/11/12(月) 00:08:10
けれども赤岡は島田のその答えにも特に落胆する様子は見せなかった。
「わかった。でもまぁ……もしやる気になったらその時はすぐ言えよ」
ある程度は予想内だったのか、ベンチに横たわったまま赤岡はさばさばした表情で薄く笑みを浮かべる。
「そこまで……絶対に誰にも邪魔はさせない」
必ず、守ってみせるから。
会話から間もなく疲労と安堵で二人とも眠りに落ちてしまった訳だけれども。
赤岡がポツリと漏らした呟きは、島田の耳に今も残っていた。

何かをやれと強く命じられるより、やる気になるのを待ってるよと微笑まれる方が、時に強烈なプレッシャーとなる
事は往々にしてあるだろう。
赤岡の態度がその効果を期待しての物なのかどうかは島田にはわからないけれども、少なくとも彼が本気である事だけは、
十分に理解できた。
こうして真面目に朝食を摂ろうとしているのもその現れの一つに違いなく。
「………………」
かといって同意も出来ない以上はどうすればいいのか判断しかね、島田は缶の中からナタデココを複数個
一気につまむと口の中に放り込んだ。
そのままひたすらにゴリゴリ咀嚼して呑み込んで。缶の中が空になった頃、島中にクラシックの音楽が流れ出す。


まさか真夜中に多数の人死にが出る事はないだろう……そう思いながら放送に耳を傾けていた二人だったけれども。


『……27番、今泉 稔』
『……40番、大滝 裕一』


淡々と告げられる固有名詞に思わず互いに顔を見合わせ、続いて始まるソラシドの本坊と名乗った人物による
主張と銃声により、すがすがしい朝はいつしか二人の周囲から姿を消し、戦場のただ中にいるのだという現実だけが
突きつけられる結果となってしまったのだった。

31 : ◆8eDEaGnM6s :2007/11/12(月) 00:13:43
【号泣 赤岡 典明
所持品:MP3プレイヤー(2回目の放送収録) マイクスタンド 缶詰1個 薬箱
状態:左腕に裂傷(手当て済)&軽い痺れ(ほぼ回復)・右頬に軽い火傷・全身に強い打撲・眩暈・動揺
基本行動方針:生存優先・襲われたなら反撃もやむなし・でも殺さない
第一行動方針:今後の予定を話し合う
最終行動方針:MP3プレイヤーに漫才を収録する・悔いのないように行く】

【号泣 島田 秀平
所持品:犬笛  (以下、水色のリュック内) 缶詰1個 シャツ ネズミのカチューシャ
状態:額に裂傷(手当て済)・躊躇・動揺
基本行動方針:生存優先・赤岡を信じる
第一行動方針:今後の予定を話し合う
最終行動方針:不明】


【C8・展望台】
【16日 06:10】
【投下番号:294】


なお、18KINの二人の死亡表記は、いつもここからの菊地さん同様、死亡シーン補完後に行います。

32 :名無し草:2007/11/12(月) 23:24:24
>>31
投下乙です!
イジリーの出番楽しみにしてました。
18KINのその後が気になる…

33 : ◆pwreCH/PO6 :2007/11/14(水) 00:14:06
ザ・プラン9 浅越編

『between the devil and the deep blue sea』

みんなこんにちわ!猿のとくちゃんだよ☆
今は犬のケントと一緒に牛のじぇんとるを探してるんだ♪
危険な人たちがいっぱーいいて大変だけど、見つかるまで頑張らないとね(`・ω・´)
それにこの森には通貨のドングリもいっぱい落ちてるから拾って帰ったらみんな喜ぶぞ(・∀・)

「…っていうテンションだったら良いと思わない?」
「やめましょうよ。現実との落差に凹みますから…」
東京吉本の若手である平成ノブシコブシの徳井とミルククラウンの竹内は、
森を飛び出して遊園地近くを彷徨いながら、まだ見つからぬ竹内の相方のジェントルを探していた。
開始直後に偶然出会い、その目的を共有してから既に丸一日が経とうとしている。
視界が開けた場所は狙撃が怖いのか、意外に人影が見つからないことだけは幸いというべきだが、
余りに目新しさのない道程に、冒頭のような余計な思考も浮かんでくるというものだ。
後輩ながらも呆れ果てた竹内の苦言に、徳井は不満げに鼻を鳴らした。

「明日さー、またオリラジと一緒に∞ホールで被り物するんだと思ってたよ」
徳井が指すのは、毎日渋谷にある吉本直営劇場の一つの∞ホールで毎日5時間行われる生放送の番組のこと。
平成ノブシコブシとミルククラウンは木曜日の前半2時間のコーナーのレギュラーであり、
オリラジランドと称してほぼ全員が動物の被り物をしており、
その番組の中では徳井は猿、竹内は犬のかぶりものをしてニックネームも付けられていたのだった。
幼児向け番組のような子供だましのセットが、何故か眼前の自然の情景とオーバーラップする。

34 : ◆pwreCH/PO6 :2007/11/14(水) 00:15:26
だが幾ら現実逃避しようとも、状況は一向に良くはならない。
容赦なく焼かれた肌は、昨夜土の上で寝たこともあって茶色く色素が沈着し始めていた。
汗も掻きっ放しで髪も埃も全てベタベタと張り付くような感覚が非常に気持ち悪い。
問題は身体の表面だけではなく内部も同様で、昨日ほぼ一日歩き続けて酷使された筋肉が悲鳴をあげている。
いつもなら有ることさえ意識しないような背中の筋肉さえ存在を主張するように痛みと熱を生み出していた。
一日中装着し続けたコンタクトのせいで目も痛み、少量だけ水を残したペットボトルの中に保存している。
余り周囲が見えないが、装着し続ければ目も開けられない訳で、仕方のないことではあったが。
身体が変調を来たせば、思考も下がり基調になるもので。

「結局全部無駄だったんだねぇ」
徳井がふと漏らした言葉に特に意図があった訳ではないが、意味が一人歩きして竹内の心に大きな傷跡を残す。
ふらふらと浮き足立って蝶々でも追いかけるような足取りの徳井を竹内は溜息の内に見つめた。
「…そういう事は、言わないで下さい…」
今竹内の頭に犬の耳がついていたら、確実にしょんぼりと垂れていただろう。
元々竹内のかぶりものの犬の耳は垂れているタイプではあるのだが。
「もう…何で見つからないんだよ!」
困難しか目の前には用意されていない現状に、竹内の我慢が限界を迎えようとしていた。
理性は元々何かの切欠で全てが破綻してしまいそうな危うい均衡を保っていただけである。
現在自らの身に災難が降りかかってはいなくても、今も誰かの身に死が襲い掛かっていることは間違いない。
狂う方が余程楽なのかもしれない状況で、平静を保てという方が困難だった。
「もうやだよ…」
竹内は項垂れると地面にへたり込む。
頭を掻き毟って言葉にならない喚き声をあげる竹内を、徳井は感情の籠もらない瞳で見下ろしていた。

35 : ◆pwreCH/PO6 :2007/11/14(水) 00:16:50
竹内の相方が見つからないと言っても、精々まだ1日しか探していない。
ジャントルは何百人のうちの一人で、それに対して危険人物は少なく見積もったとしても数十人。
今までふらふら歩き回って、命の危険に一度も晒されていないことの方が余程幸運だった。
「そんなに嫌だって思う?」
「徳井さんはもう全部投げ出したくならないんですか?当てもなくって…」
ない、とここで断言すれば竹内は勇気付けられるのか、と考えて疎外感を覚えるだけと思い口を噤む。
立ったままの徳井の影が、座り込んで縮こまる竹内を覆った。
徳井は元ストーカーということもあって、忍耐力は芸人の平均値を大きく上回っている。
「この島の中にいるって狭い範囲内だと思うけどね」
何せ、ストーカー対象の女性と最終的に恋人関係になるまで漕ぎ付けたのだから。
予想通りに徳井の言葉に劣等感を覚えたのか竹内は目を頻りに擦った。
濡れた指をシャツに擦り付けて水分を拭き取ると、まだ水気の残る目を徳井に向ける。
「こんな場所に無理矢理連れてこられて…死にたい…」
次の言葉を継ぐ前に涙が溢れ出して鼻と喉が詰まったのか、
再度俯くとTシャツを引き上げて涙と鼻水で汚れる顔を拭き始めた。

徳井はその光景を暫く見下ろしていると、能面のような無表情のまま竹内の横に座り込む。
嗚咽を漏らす竹内に掛ける言葉はなく、無言で竹内のデイパックを探ると、竹内の支給品である軍刀を手に取った。
西洋の貴族の佩刀をイメージして作られたその刀は、金色の柄には手を保護するように半円状になっている。
まるで場違いではあるものの列記とした国産品であり、一般人に廃刀令が出された直後の作のため
その切れ味も何ら遜色はないはずのものである。
徳井は立ち上がると黒光りする鞘から刀身を抜き取った。
重く打ち沈んだような色合いの刃は鈍く光を反射する。
真後ろに立つ徳井と座り込む竹内は宛ら介錯人と切腹人のような情景だった。
だが徳井が弄ぶように刀を振り回す風切り音を聞き取った竹内が、
自らの首にその白刃が触れる前に異様な有様に気付き様相が一変した。

36 : ◆pwreCH/PO6 :2007/11/14(水) 00:18:24
「な…にしてるんですか!」
竹内は言い終えた直後に、詰まった分泌液で強く咳き込む。
銀白色の残像を楽しむように視線を刃先に向けていた徳井は、芝居がかった動きで竹内と視線を合わせた。
「もう投げ出したいんでしょ?」
陽炎のように揺らいでいた刃先が不意に竹内の鼻先に突きつけられる。
深く引かれた肘先が少しでも前に押し出されれば肌に触れるような距離感に、竹内は息を止めた。
鉄錆のような饐えた臭いが竹内の鼻に押し寄せてくる。
「投げ出したいんだったら死ねば良いんだよ。そしたら苦しまなくて済むしね」
徳井の透徹とした声に、少しも戯れの雰囲気は感じられなかった。
どんな感情も未だに浮かべない顔に、竹内の縋る余地はない。

其処には、相方にさえ恐怖の対象とされた男が居た。

「恋愛相談したら、『そんなに好きだったら殺せばお前のものになる』って」
「マジやべえって。絶対俺の方が普通だから」
徳井の相方の吉村が、徳井の居ない楽屋でその異常さを他の芸人に熱弁する後姿がふと竹内の目裏に浮かぶ。
頭上の徳井の眼は、確かに狂っていた。他人の感情と自分の感情、両方を理解しようとしない目。

37 : ◆pwreCH/PO6 :2007/11/14(水) 00:19:48
蛇に睨まれた蛙の様に硬直する身体を叱咤して動かす。
しかし竹内が両手を着いて一歩退く毎に、刃は時折肌を掠めながら眼前に存在し続けていた。
「ごっめんなさい、ごめんなさい…弱音吐いてごめんなさい…」
先輩であるにも関わらず、自分の相方探しに付き合っておいてもらいながら独り弱音を吐く竹内に、
徳井が激昂した結果が今の状況だと竹内は勘違いしていた。
目を必死に瞑り、更に手で覆い隠しながら頭を下げる竹内に、徳井は尚も表情を動かさない。
竹内に突きつけた刀身を引くと、次は刃を竹内の首筋に押し当てた。
その重量と低い温度が首から脳に伝達される。
徳井がその力を抜けば竹内の首は地に転がり落ちる。その事実は竹内にも認識されていた。
それでも不用意に動けばその先に待ち受けるのは死のみで、
ガチガチと歯の根を震わせながら竹内は再度嗚咽を漏らし始める。声にならない声。

「死ねば苦しまなくて済むんだよ」

外界から隔絶された空間に、その徳井の呟き声と共に鈍い殴打音が響いた。
「………?」
垂直に振り下ろされた刃は頚骨に当たってそのまま止まってしまった。

刀には切り方というものがある。
この軍刀のように、切れ味よりも刺突を重視している刀なら尚更守らねばならなない決まりごと。
対象物に刃が当たったところで手元を引くのが斬る際の鉄則である。包丁の使い方と何ら変わりはない。
徳井がそのことを知っていたのかどうかは分からないが、素人にはなかなか難しいことではあった。

38 : ◆pwreCH/PO6 :2007/11/14(水) 00:20:56
鉄の棒が振り下ろされた衝撃で竹内は昏倒したが、即座に意識を回復させると重い頭を支えながら起き上がる。
不自然に回転する視界をどうにか整えた時に見えたものは、
徳井がほんの少し眉根を寄せて刀を検分している光景だった。
徳井は自らの指先で本物の武器であることを試すと、刀を上段に構えて両手でしっかりと掴む。
太陽を背に立ちはだかる徳井を視界に収めた竹内は、今度こそ自らの死期を悟った。

「誰も……」
竹内の脳裏に浮かんだのは、執着し続けた相方のことではなかった。
忌まわしい過去の記憶。ずっとずっと虐げられ、苛められていた学生時代。
もう誰も味方なんている訳がないと、悟った瞬間。

「人間なんて信じるんじゃなかった!」

竹内の声に、鴉が何羽か飛び去る。
屍肉を飽食する獣を圧倒する言霊も、目の前の殺人者には届くことはなかった。

39 : ◆pwreCH/PO6 :2007/11/14(水) 00:21:57
哀しみは木霊する。
死を嘆く者たちの心にも。

浅越の階段を下りる足は重かった。既にこの先に待ち受けるものを知っていたとしても、
目の前でその現実を受け入れるのは容易い事ではない。
かつんかつんと靴音が響く。汗が垂れて霞む風景に、
何処となく誰かに高みから覗かれているような気がした。
実際監視カメラはあるけれども、チェスの盤面のように誰かに動かされているような気がして。
然しそう言う事を考えても仕方ないと汗で落ちそうになったメガネを戻して思考を中断させた。

友近に凭れかかるようにして動かない灘儀の顔は、いつもの笑みのままだった。
Tシャツに染み出して大きく広がった血はすっかり凝固を始めていて、その量の多さに吃驚する。
然し体から突き出した刃が見るに耐えずに視線を逸らした。溢れる涙を必死に目頭を掴んで抑えようとしたが、
努力空しく止まる気配は見えずに、諦めてメガネを外して胸ポケットに仕舞うとそのままその場に座り込む。
自らの意思とは無関係な溢れるそれに、今まで自分が感情を閉ざして平衡を保っていた事に今更気付いた。

出血量は生きた人間には有り得ないもので、
浅越は遂に灘儀は只の屍と成り果ててしまったのだと認識してしまっていた。
大切な物が段々と自らの掌から零れていく。
膝を抱えて小さく縮こまり、膝が濡れるのも構わぬように泣き続けた。

40 : ◆pwreCH/PO6 :2007/11/14(水) 00:23:13
頬を伝う大量の水分に、ふと水は貴重品ということに思い当たって一気に涙腺が閉じる。
自分らしい涙の止め方に自嘲しながら浅越は立ち上がると、
友近の拳を掴んで灘儀の脇腹に刺さったままの短刀を一気に引き抜いた。
「幸せでしたか?灘儀さん」
最期は恋人に殺されようとも、自分の正義を貫き通した愚直さがいじらしいと思う。
友近の柄を握る指を一本一本開かせて短刀を自らの手の内に収めると、
汚れた刃にこびり付く血を友近の服を切り取って丹念に拭いていく。
作業を終わらせると灘儀の腰に佩かれていた鞘を取り、刀身をその中に収めた。
2人分の血を浴びた檜拵えの鞘の先端は凝固した血ですっかり黒ずんでおり、
それ以外にも赤い斑点がぽつぽつと存在を主張している。
村正も斯くやという不吉さを漂わせるそれを、浅越は全く気にしないようにデイパックに放り込んだ。
周囲を見回して友近のデイパックがないことを確認すると、自分のデイパックを肩にたすき掛けする。
灘儀の腰を掴むと力を入れて友近と引き剥がし、自分の肩に乗せた。
身長は多少低いとはいえ筋肉質の体はずっしりと左肩に重く圧し掛かり、
競輪選手並と評される太腿も震え出す。
まだ仄かに残る体温に苦笑しながら、浅越は大きな足音を立ててまた階段を下り始めた。

死体を担ぐ浅越は明らかに不審人物であり、急に襲われるのも有り得ない話ではない。
だが灘儀を埋葬する絶対目標があるからこそ、障害は甘受すべきだった。
灘儀を肩に担いだまま、最上階の窓を見つめて腰のポケットの紙片を右手で握り締める。
この場所にまた戻ってくるのか、戻ってこられるのか分からないまま、
浅越は踵を返すと歩き始めた。

41 : ◆pwreCH/PO6 :2007/11/14(水) 00:24:38
幾らか歩くと灘儀をゆっくりと地面に下ろし、座り込んで休憩する。
灘儀の身体は硬直を始めており、仕方なく仰向けにではなく腰で二つ折りにしたまま地面に横たえた。
苛酷な重労働に浅越は地面に背中を預けながら空を見上げる。
青く輝く空は普段通りで何処か違和感を感じた。
取り巻く環境は全て変わってしまったのに、その青さだけは同じだったから。
「綺麗ですね…」
答える声はなくても、呟かずには居られなかった。

息が整えばすぐに動き始める。リスクが付きものなら、早く終えるに越した事はない。
そのため自らの身を少しでも隠せる森の中を通る道順ではなく、ほぼ直線距離のルートを選んだ。
それが不本意な出逢いの原因とは知る由もなく。

急な坂を登るとそこには全身に真っ赤に濡らした男の姿があった。
座り込んで俯いた死体の首は八分まで斬れており、頚動脈からはまだ鮮血が流れ続けている。
髪も顔も服も全ては赤く塗れて顎からは血雫を落とし続ける男。
目の前の惨死体は男が手に持つ刀で成されたものに違いなかった。

睫毛まで赤く染まった徳井は、浅越の姿を見つけると大袈裟なまでに笑みを見せ、
そして徐々にその表情を失くしていった。

42 : ◆pwreCH/PO6 :2007/11/14(水) 00:26:21
【ミルククラウン 竹内健人 死亡】

平成ノブシコブシ 徳井健太
【所持品:三十二年式軍刀(サーベル型)  懐中電灯(電池なし) コンタクト(ペットボトルの中)
第一行動方針:死にたい人は殺してあげる
基本行動方針:とりあえずプログラムのことは考えたくない。
最終行動方針:未定】
ザ・プラン9 浅越ゴエ
【所持品:檜柄の短刀 救急セット ダイナマイト1本 他不明
状態:疲労
第一行動方針:灘儀の死体を埋葬する
基本行動方針:考え中
最終行動方針:未定】

【現在位置:荒地(C3)】
【8/16 14:33】
【投下番号:295】

43 :名無し草:2007/11/14(水) 17:10:18
乙です!
最初ほのぼのではじまったからまさか徳井さんがこうなるとは思いませんでした。浅越さんと出会ってどうなるのか気になります。

44 : ◆0M.qupOW5Y :2007/11/15(木) 01:43:55
短いですが投下いきます。

『夢ならば覚めて欲しかった』

例えば大切なものが誰かに奪われたとして、その相手に何も思わずにいることが出来るだろうか。自分には絶対にできない。

それが放送を聞いた後真っ先に思ったことだった。たとえこの場では殺せない者は長く生き残れないとしても、それが当然だなんて思いたくない。
考えてもみなかった。考えたくもなかった。今更言えることでもない気がするが不安になることを回避しようとしていたのかもしれない。だって想像もしたくない。
――相方がいきなり放送で呼ばれるなんて。

一度頭が真っ白になってから考えても、あの時後輩を置いてきた自分が馬鹿らしくなるだけでそれ以外は殆ど変わらない。
ただ漠然と、全てが許せないと思った。
自分たちをこの場に引きずり込んだ奴らも、相方を殺した人間も許せない。だからといって何をしようというわけでもなくて、ただ憤るだけの自分は何なのだろうか。

当てもなく歩く。森は深く、いつしか自分がどこを歩いているのかさえ分からなくなる。今はそれでもいい気がした。
もし相方を殺した人間に会うことがあったとしても、何をすればいいかわからない。その死がどんな状況だったかなんてその場にいた人間しか分からない。
何を言われたってそれが真実とは限らないし、だからといって全てを疑ってもどうしようもない。
結局のところ殺した人間にしか真実は分からないようなもので、殺人現場を目撃した人間が生きているとしたらそれはそれで問題な気がする――いくら考えても解決しそうにない。
考える事すら放棄して暫く歩く。許せないものは許せないしこのまま死ぬのも腑に落ちない。

自分は、何をすればいいのだろう。
目的は既に無くなった。今からあの場所に戻ったとしても誰もいないだろうし自分がどこを歩いてきたか覚えていない。

「いきなり1回休み、やな」

双六か何かで例えればまさにそんな状況。目的に向かって進みだす前にもう「1回休み」のマスに止まったかのような。
この場合のゴールって死なのか? と一瞬嫌な思考が頭を過ぎったが気にしないようにしておく。
でも、もしそうだとするなら。いきなり1回休みということは、まだ殆ど進んでいないことになる。
それはこれからどう進むこともできるということではないのか?


45 : ◆0M.qupOW5Y :2007/11/15(木) 01:45:08
「そっか、そういうことだったんか」

――閉ざされた道に、光が見えてくる。

自分はまだ生きている。いきなり大きな物を失っても、まだこうやって思考することができている。まだ許さないでいることができている。
こんな状況に順応して堪るか。生き残るために他の誰かを殺すなんて、そんな人間になるのは嫌だ。自分から相方を奪った人間と同じになんか、絶対。
まださほど時間は経っていない。それはまだ大勢の人間が生きているということであり、もう殺された人間がいるということだ。

人殺しは許せない。だからそれと同列にはならない。たとえそれが誰かを救うためのことだったとしても人を殺したということに変わりないから。
犠牲者を減らす方法なんてわからない。でも自分がこう思うことで未来の自分に殺されるという運命を免れる人間がいるならいい。
許せない。相方を殺した人間が、この状況を作った人間が。だから。
――人殺しになんかなってやらない。この状況になんか絶対に従ってやらない。

ひたすら、そう思った。


【ビッキーズ 須知裕雅】
所持品:不明
第一行動方針:できれば相方の死の状況を知りたい
基本行動方針:誰も殺さない、プログラムには絶対従わない
最終行動方針:未定

【現在位置:森(D4)】
【8/15 18:20】
【投下番号:296】

46 :名無し草:2007/11/18(日) 15:54:18
まとめサイトのIDとパスワードの、ヒントを教えてもらえませんか?
お笑い 2006と入力してみたんですが、駄目でした・・・。


47 :名無し草:2007/11/18(日) 16:31:18
>>46
ヒント ローマ字

48 :名無し草:2007/11/18(日) 17:01:47
>>47
私の頭が硬いせいなのか、難しいですね。
もう少し考えてみます、ありがとうございました。

49 : ◆8wwdPoYeY2 :2007/11/19(月) 16:52:46
前スレッド、>>315の続き。番外編第2話。


陣内が兵士を捜すと言って出て行き、40分――。
品川と庄司は、未だに帰って来ない陣内に、強い心配を抱いていた。
「・・・・・・遅すぎる。兵士と逢っているにしても、あいつらはまともに話をしない。
 もし何もなければ、そろそろ帰ってくるはずなのに」
「もしかして、兵士に捕まったんじゃ・・・・・・」
「まさか。陣内さんに限って、そんなことはないだろ」
わざと茶化すように返したが、品川の内心は気が気ではなかった。
陣内はかなりの天然・・・銃を向けられたら、『冗談』などと言って、
それが相手を逆なでして、殺される場合が充分に考えられる。
庄司は品川の肩を掴むと、声を張り上げた。
「品川さん、急いで陣内さんを追いかけて! このままじゃ、殺される!」
「追いかけたいのは山々だけど・・・・・・」
自分の体調を気遣って、動こうとしない品川。
その優しさは嬉しかったが、今大事なのは陣内を連れ戻すこと。それと―――、


――――近づいてきている殺人鬼から、品川を逃がすこと――――

50 : ◆8wwdPoYeY2 :2007/11/19(月) 16:54:03
庄司は不安定な感情を押し殺して、品川に向けて叫んだ。
「俺のことは良いから、陣内さんのところへ!」
「でもお前の・・・・・・」
「大丈夫です、俺は死なないから! 見てくださいよ、品川さん。この身体を」
いつものふざけたような敬語で話すと、自分の身体を見せてニッと笑う庄司。
その様子はいつもと同じであったが、やはり胸騒ぎは拭うことは出来ず、
一向に動けない品川に対して、再度庄司の叱咤が飛んだ。
「早く行って!! 陣内さんを助けてあげて!!」
「―――分かったよ・・・。その代わり、絶対に死ぬんじゃないぞ!
 死んだら許さないからな、庄司!」
「もちろん! 分かってますよ。じゃあ、また後で」
「ああ、また後で」
いつもと同じ言葉を交わした後、品川は陣内を探すために島の奥へと消えていった。
庄司は品川の姿が完全に見えなくなったのを確認し、茂みに身体を向けた。
手には品川から預かった包丁を握り締めて・・・。
「――何時まで隠れているんですか? いい加減出てきたらどうです?」
「――気付かれたか。お前さんの天然度合いを見る限り、気付かれないと思ったのに・・・」
その台詞を合図とするかのように、茂みがガサガサと音を立て始めた。

そして・・・・・・、

その音が止んだとき、殺人鬼と化した芸人が、庄司の目の前へと現れる―――。

51 : ◆8wwdPoYeY2 :2007/11/19(月) 16:55:20
―――――――――

「俺らはお前らと話すことはないんやって!!」
「そう言わないで、お願いしますよ! 俺らはみんなで帰りたいんです! お願いします!」
品川と庄司の心配をよそに、陣内は見知った顔の兵士と遭遇して、
何度目になるかも分からない『一生のお願い』を、その兵士たちにしている最中であった。
「ホンマにお願いします!! 死んでも良いから・・・・・・!!
・・・それとも、かわいい後輩たちが死んでいくの、辛いと思わないんですか?」
お願いすることに必死になりすぎて、もはや何を言っているのか自分でも分からない。
それでも聞き入れてもらえると信じて、自分のプライドも全て投げ捨てて頭を下げた。
彼らならきっと聞いてくれる、そんな淡い期待を抱いて―――。

――しかし、その淡い期待は、銃声と共に呆気なく打ち砕かれた。

「―――いい加減にしろ、陣内。俺らはもう、お前らの先輩でも何でもないんや」
「分かったら早く消えろ。そして二度と俺らの前に現れるな!」
ライフルの弾は陣内のすぐ右をかすり、地面へと食い込んだ。
兵士2人の目は赤く充血していたが、陣内にそれに気付く余裕はなく、
ショックのあまりその場へと倒れこんで、意識を失ってしまった。
最後に、2人に向け『信じていたのに』と口だけを動かして・・・。
それは声にこそならなかったが、ハッキリと兵士には届いていた。
自分たちを実の親のように慕い、ついてきてくれた彼が放った、嫌悪の言葉が。
「・・・・・・陣内・・・っ、すまん・・・ホンマに、すまん!!」
反応を返すことのなくなった陣内に向けて、2人の兵士は何度も頭を下げた。
それが、今の自分たちに出来る精一杯の謝罪だったのだ。
もちろん、陣内がそれに気付くことはないのだが・・・・・・。

52 : ◆8wwdPoYeY2 :2007/11/19(月) 16:57:44
――――――――――――――――

「やっほー、庄司。元気そうやな〜」
「あんたは・・・・・・!!」

ガサガサと言う音が消え、茂みから出てきたのは、兵士と同じ迷彩柄の服に身を包んだ、自分と同じくらいの背丈の男性だった。
ライフルを手にしている男性は、庄司にそのライフルをつきつけると、口もとに笑みを湛えながらも、庄司を馬鹿にしたような態度で言い放った。
「品川の方かと期待してたのに、お前が相手か。つまらんのう・・・」
「残念でしたね。でも、品川さんにはまだ生きててもらわないと困るんですよ。
 だから・・・・・・あんたの相手は俺がやります」
「面白い・・・。やれるもんなら、やってみろ!!」
―――ガチャッ・・・。
ライフルを構える音が耳に入る。それと同時に心に沸きあがる、強い恐怖心。
「(この人もゲームに・・・嫌だ、死にたくない! 死ぬのが恐い!)」
そんな庄司の内面を知ってか知らずか、男性はゆっくりと近づいてくる。
草を踏みつける音が大きくなっていき、庄司の目の前でピタリと止んだ。
それにつられるかのように、庄司の恐怖心も最高地点に達していた。
しかし、それを悟られないように強気に振る舞い、上手く相手を操ろうとしていた。
言動で相手を騙し、操ることが出来れば、勝利も全てがこちらのものなのだ。
失敗する可能性のほうが高かったが、庄司には『人を傷つけずに』と言う考えをベースにした場合、これ以外思い浮かばなかったのだ。
「そ、そんな銃で脅えるもんか。こっちにもアタリの武器はあるんだからな!」
「『アタリ』って言っても、それ包丁やんか。銃を前にしてそれをアタリ武器言うとは、
お前相当根性ある奴やな。色んな意味で見直したわ」
男性の口元が楽しそうに歪むのを感じた時には既に遅く、庄司は左手に異常なまでの熱を覚えた。
『撃たれた!?』と思ったのは、数秒時間が流れてからで・・・、その時にはもう左手の肘から下がなくなっていた―――。

「あーあ、腕飛んだ。それやともう仕事出来んねぇ」
男性は悪びれることなく言い放つと、手ぶらになった庄司の首を、
背後から忍び寄って、

そして、容赦なく締め上げた――。

53 : ◆8wwdPoYeY2 :2007/11/19(月) 17:00:29
―――――――――――

「陣内さん! 陣内さん!」
庄司が危険な状態に置かれて、5分ほど経過した頃、
品川はぐったりしている陣内を見つけ、兵士とにらみ合いの状態になっていた。
「あんたら、陣内さんに何をしたんだ!!」
「・・・・・・・・・」
「答えろ! 答えなかったら殺すぞ!!」
品川の怒りは頂点に達していて、兵士はその気迫に圧倒されるだけだった。
何も言うことが出来ず、口を閉ざしたままの兵士2人。
それは品川をおとなしくさせる作戦でもあったが、結局は彼の精神を逆なでするだけであった。
「――てめぇら・・・いい加減に白状しろっつってんだろ!!」
武器を置き忘れていた品川は、素手で兵士へと飛び掛っていった。
そして、大柄な兵士を押し倒すと、絞め殺そうとして首にかけた手に力を入れた。
「死にな!!」
品川の怒鳴り声が兵士の耳に入る。
もう駄目だ―― そう思って諦めかけたその時、


54 : ◆8wwdPoYeY2 :2007/11/19(月) 17:02:12
――――― バァン・・・!!


ライフルを放った音が、その場に居た全員の耳に入った。
それと同時に、気絶していた筈の陣内が、何の前兆もなく突然苦しみ出した。

「ごほっ、ごほっ・・・・・・」
「―――――!!?」
明らかに自分たちの方角へ向けられた銃声ではない。
陣内の身体も、先程撃たれた時に出来た掠り傷以外、目立った外傷はない。
それでも苦しそうな呻き声を上げる彼の姿を見て、
品川は、森に置いてきた庄司のことを思い出した。
胸騒ぎがより一層大きくなり、心臓が張り裂けそうなほど鳴り出した。
「まさか、庄司に何か・・・・・・!」
いてもたってもいられず、兵士を突き飛ばすとそのまま、庄司の居る場所へと走り出す品川。
この嫌な予感が外れてほしいと願いながら、相方の居る場所へと一目散に駆け出していた。

55 : ◆8wwdPoYeY2 :2007/11/19(月) 17:04:12
【品川庄司 品川祐】
所持品:折りたたみ式釣り竿(餌) 、刺身包丁。
状況:生存。
第一行動方針:陣内を探す。
基本行動方針:人はむやみに殺さない。
最終行動方針:ゲームの停止。
【陣内智則】
所持品:支給品、ゲーム機本体(形状不明/武器)
状態:生存、気絶中。
第一行動方針:(気絶中)。
基本行動方針:一人でも多くの仲間を集める。
最終行動方針:みんなで東京へ帰りたい。
【現在位置:森(E7〜E8付近)】

【品川庄司 庄司智春】
所持品:防弾チョッキ、フリスク。
状況:生存。精神状態悪。
第一行動方針:???
基本行動方針:人はむやみに殺さない?
最終行動方針:ゲームの停止。
【ケンドーコバヤシ(小林友治)】
所持品:現時点では不明。
状態:生存。精神狂乱状態。
第一行動方針:見境なく人を殺していく。
基本行動方針:生存最優先。そのためなら人を利用しても良い。
最終行動方針:優勝狙い。
【現在位置:森(E9付近)】
【8/16 9:40】
【投下番号:297】

56 :114 ◆4kk7S4ZGb. :2007/11/22(木) 01:55:24
どうもお久しぶりです。まとめの216話の続きで玉袋筋太郎の話いきます。


まったく、空ってのはいつも、こっちが落ち込んでるときに限って馬鹿みてぇに青い。
ねっとりと熱い風にのって、森の木々の緑の怪しいにおいと蝉の声がする。
こんな中で麦わらで釣りでもして、ハートランドビールで冷えた素麺でも食ったら最高だ。
けど、ここはそんなのんきな場所じゃねぇ。麦わらも釣り具も酒も素麺もない。
あるのはただ、数えきれないほどの死体と絶望と、殺しあう芸人たちの姿だけだ。
何もかもが空しいし、何もかもに腹が立つし、何もかもが消えちまえばいい。

あーあ、だ。俺はなんでこんなとこにいるんだろうな。
なんで俺は生きてて、小野さんは…博士は死んでて、殿は政府に抱え込まれてんだよ。

そうだよ、おかしいんだよ。わかるか? 博士が死んで、殿が政府側につく、この異常さ。
博士は馬鹿じゃねぇ。むしろ賢い。命を落とすような軽率な真似をする奴だとは思えない。
本来なら、俺と落ちあってこの茶番をひっくり返す策を練るつもりでいたはずだ。
なのに博士は死んだ。俺は生きてて、殿があいつの名前を呼ぶのを聞くはめになった。
あのとき、殿は躊躇しなかった。あいつの名前も、当たり前って態度で呼びやがった。
もう何もかもめちゃくちゃだ。全部が狂っちまってる。ひっくり返ったのはこの茶番じゃねぇ。俺の世界だ。
わけがわかんねえ。ここに来てまだ24時間も経ってないのに、あの日常はもう遠い。
すべてが歪んで、すべてが気味の悪いものに変わっちまった。世界が壊れちまった。

…だけどエガちゃんだけは、あそこで会ったエガちゃんだけはいつもと同じだった。
壊れた世界の中でも、なんにも変わってなかった。エガちゃんだけが、この狂った世界で正常だった。
それが俺は嬉しかったよ。ほんの少しの時間だったけど、まるで普段に戻ったみたいだった。
ほんの数時間、エガちゃんといたあの場所だけが、奇跡のようにまともで、優しかった。
どうか、エガちゃんにだけはあのままでいて欲しい。どうか、いつまでも、あのままで。

57 :114 ◆4kk7S4ZGb. :2007/11/22(木) 01:57:55

俺か? 俺はきっと、まともではいられない。とっくに歪んじまって、ほころびて、狂っちまってる。
だからエガちゃんとは一緒にいられなかった。エガちゃんに、俺を救えなかったと思わせたくなかったんだ。
笑いで何もできなかったと思わせたくなかった。笑いは無力だと、何も生まないと、絶対に思わせたくなかった。
エガちゃんにだけは、信じていてほしかった。夢物語を、希望を、そういう甘っちょろい、全てを。

エガちゃんは「エガちゃんマン」になると言った。最期まで芸人としてここにいると。
本当に、その考え方とか、そういうの、俺は最高だって思う。思ってる。

…なあエガちゃん、でもさ、俺、漫才師だったんだよ。

ああ、まあエガちゃんは知ってるんだよな。
っていうよりみんな知ってるんだろうけどよ。

浅草キッドは漫才師なんだ。危なすぎてテレビじゃネタができねぇけどな。
BR法だろうが、軍だろうが、政府だろうが、何だって徹底的にこき下ろしてきた。
それでも生き残ってきたのはテレビって媒体を選ばなかったからだし、殿がいたからだ。
殿も体制に斜に構える人だけれど、あまりにも著名で、政府だって迂闊に逮捕なんかできない。
簡単に消せるような存在じゃない師匠のさす傘に、俺たちは守られてきた。

ビートたけしのオールナイトニッポン、そのリスナーのひとりだった俺、そして博士。
こき使われてまともに飯も食えなかったけど、そこしかないと信じた浅草のストリップ劇場。
一番華やかだったのはスーパージョッキーや浅ヤンの頃だろうか。思い出すことはたくさんある。

博士と二人で浅草キッドで、俺たちはそれ以外の何ものでもねぇのよ。
だから、博士がいない今、俺は浅草キッドじゃない。
芸人じゃないのか、って聞かれたらちょっとは迷うよ。
でも、博士のいない俺は、漫才師じゃねえんだ。


58 :114 ◆4kk7S4ZGb. :2007/11/22(木) 02:02:03
漫才が俺のやりたいことだった。俺の尊敬する師匠はツービートなんだから。
でももう博士はいない。どこにもいない。二度と会えなくなっちまった。
もう漫才はできねぇ。俺のやりたいことはできねぇ。決してできねぇんだ。

もう俺は、この島から抜け出したって元には戻れない。
浅草キッドという漫才師の片割れには戻れない。
ただの、家庭を守る一人の父親に戻ることさえも、きっとできない。

博士の死が告げられたあの瞬間。そう、あの瞬間、もうひとつ死んだものがある。
殿の声を聞いた瞬間、俺の中の何かが、ガラスの割れるような音をたてて死んじまった。
それが何かははっきり分からない。でも、何かが死んじまったことだけは確かだ。

『115番、水道橋博士…アイツぁ“神様”とやらに天から落っことされた』

あの言葉を聞いたとき、頭が真っ白になったよ。周りの色も形も、全部なくなったよ。
エガちゃんに声をかけられて、初めて自分が床殴ってたことに気付いたさ。手だって痛みもなかった。
何かからっぽになっちまってた。あいつが死んじまうなんて信じられなかった。しかも神様に落とされただって?
そりゃ一体なんだ、崖の上にいたら突風に吹かれたとか、そんなんでもなきゃあ神様に落とされたなんて言わねぇだろ。
偶然だってのか? 下らない偶然で、あいつが死んだって? そんな間抜けな奴だったってのか?
やりきれなかったよ。心が荒れんのがわかった。砂を噛んだみてぇな、そんな気分でいっぱいになったよ。


59 :114 ◆4kk7S4ZGb. :2007/11/22(木) 02:04:04
けど、あのあとエガちゃんを寝かせて、少しだけ落ち着いてから、妙なことに気付いちまった。
殿は『“神様”とやら』って言った。『とやら』って言ったんだ。はじめはな、運悪くどっかから落ちたのかと思ったよ。
でもな、だったら『とやら』って何だ? 殿があんな言い方するってのは、何か含みがあるときなんだよ。
『“神様”とやら』ってのは、本物の神様じゃあねえんだ。あいつを落とした奴が神様じゃねえなら、人間しかいねぇんだよ。
そりゃあつまり、どっかに神様気どった馬鹿がいたってことに違いねぇ。しかもそんな奴にあいつが殺されるとこを殿は見てた。
見てて、見殺しにして、あいつの名前を呼んだんだ。気付いた瞬間、俺はこの感情だけで人が殺せると思ったね。
いいや、なんなら殺したいと思った。全部死んじまえと思った。全部殺してやると思った。

そして、多分あのとき、俺は戻れなくなった。
そう、戻れなくなった。まだ何か大切なものを胸の内に抱いていた、あの頃にはもう戻れないんだ。

今、俺は誰かの命が失われることをなんとも思わない。
自分のことをひどい奴だとは思う、けどそれだけだ。そのこと自体に心が動かねぇ。
さっきだってあの落とし穴の中の串刺しの死体にも何も感じやしなかった。
それだけじゃない、誰かの命を奪うことすらなんとも思わない。
そうでなければ今、この胸の内で燃え盛る黒い炎は一体なんだってんだ。
死んじまえばいい、偽者の神様野郎も誰も彼も、死んじまえばいい。
この強烈な憎悪。本当ならそれはおしとどめるべきなんだろう。耐えるべきなんだろう。

俺だって普通の日常で、誰かに博士が殺されたなら、きっと耐えたさ。
そりゃあ腹は立てただろう。犯人のことだって殺してやりたいと思ったかもしれない。
それでもきっと、俺は手を出さない。そこが人殺しを裁く法のある場所ならば。

だけど、ここに博士を殺した奴を裁いてくれる裁判官なんかいるわけがねえ。
博士を殺した奴を捕まえてくれる警察官だっていやしねえんだ。
だったら、それをやれるのは俺しかいないじゃねぇか。

60 :114 ◆4kk7S4ZGb. :2007/11/22(木) 02:06:04
その考えが、ストンと腹におさまった瞬間、少しだけ笑いがこぼれてきた。
神様野郎があいつを突き落としたなら、俺が神様野郎を地獄に突き落としてやる。
そしたら誰かが俺を裁けばいい。いや、俺は俺が裁いたっていい。それでいい。
それで全部いいじゃねぇか、うまくおさまるとこにおさまっちまうじゃあねぇか。

ほら、もう俺には大事な何かがねぇんだ。ここで笑える俺にそれがあると思うか?
人間として、持っていなけりゃならない何かを、俺は手放しちまった。
そんな人間に、家庭は守れない。息子に見せてやる背中もない。何もねぇよ。

祈るのはただ、俺がどうやって死んだか、何をして死んだか、家族が知らないままいてくれることだけ。
どうか、俺がただの漫才師の、浅草キッドの玉袋筋太郎として死んだと思っていてくれ。
俺が望むのはそれだけだ。それ以上何も望まないから、それだけは聞きやがれ、空の上の本物の神様。

俺は殿を信じていた。あの、偉大な師匠をいつも、心から尊敬してきた。
その、誰よりも尊敬する人が、当たり前のように人の頭を打ち抜いた。
そして博士の、それ以外の他の芸人の死を、当たり前のように告げた。
殿は、あの人は、こんな異常な殺しあいを拒否しなかったんだ。
俺たちを守り、好きに体制批判のネタをやらせてくれていた、ビートたけしはもういない。
俺は殿に裏切られたんだ。俺の青春の全てを捧げて、芸人人生もそこに端を発した、あの人に。

…殿、俺は忘れねぇ。絶対にあんたのこの裏切りを忘れねぇよ。

博士の死を知った後、薄暗い民家の中で、俺の怒りはまず、あんたに向かった。
正直に言えば、殺してやりてぇとも思ったよ。胸が引き裂かれたような気分だったからな。
憎悪とか、真っ黒な怒りとか、悲しみとか、そういうもん全部でぐちゃぐちゃに煮込まれた感じだった。
だから最初は、学校に特攻して、あんたに一矢報いてやろうかとも思ったんだ。
でも、拳銃を握りしめてあんたを撃つとこ想像して、やめた。


61 :114 ◆4kk7S4ZGb. :2007/11/22(木) 02:08:08

…無理だ、と思ったからだ。これほどの怒りと憎悪をもってしても、俺はあんたを殺せない。

あんたの芸を、奇跡のようなあのツービートの漫才を、その全てを尊敬してる。
この手酷い裏切りを目の前にしても、絶望的なまでに俺は、ビートたけしに心酔してる。
きっと、博士だって生きてたとしてもあんたを殺せはしない。絶対にできねぇ。

…そうだな。もし人間の中に、俺の神ってのがいるとしたらそれはきっと、あんただ。

あんたはそこで、見ててくれたらいい。俺がどうやって死んでいくのか。
あんたがこの殺しあいを望むなら、せいぜい盛り上げてやるよ。それが俺からあんたへの最後の恩返しだ。
たくさん犠牲にしてやる。そう、数えきれないくらいたくさんの犠牲を生んでやる。
神様野郎も、何もかも、一気に全て道連れにして、こっから俺は去る。
それが俺からの博士への手向けの花だ。墓標のひとつもねえが、でっかい送り火はきっと空からよく見える。

…さあ、始めようじゃねぇか。最低最悪の、弔い合戦を。

どいつもこいつも寄ってこいよ。俺がまとめて面倒見てやる。
行きつく先はたったひとつだけどな。俺もお前もあいつもそいつも、まとめてみんな、地獄行き、だ。



62 :114 ◆4kk7S4ZGb. :2007/11/22(木) 02:10:10
【玉袋筋太郎(浅草キッド)】
所持品:ボイスレコーダー、S&W M3613LS(4/8)、ガーゼ、包帯、傷薬、消毒薬、メス、ピンセット(数不明)
第一行動方針:不明
基本行動方針:神様野郎も誰も彼も道連れにして地獄行き
最終行動方針:神様野郎も誰も彼も道連れにして地獄行き
現在位置:森の中(D6)
【8/16 09:10】
【投下番号:298】


63 :名無し草:2007/11/22(木) 23:35:52
>>62
新作乙!
玉ちゃん……やっぱそっちにいっちまうか…悲しすぎるよ…
そして玉ちゃんの元へ向かっている石井に死亡フラグ立ったか?

64 : ◆CrdchzRUy. :2007/11/24(土) 13:35:42
お久し振りです。
投下いきます。一応こちらが本編になります。


『Sir.destiny』


昨日まで一緒に笑い合っていた人達にもう二度と会えない。
そんな事になるなんて、夢にも思わなかった。



「暑…」
少しきつめの日射しに加え、林の中に響く蝉の声が更に暑さを増長させる。
つい先程ゲームに放り出されたばかりにも関わらず、林を一人歩く小柄な男――ダイアン・津田篤弘は、いつもの赤いチェックの上着を脱ぎTシャツ姿で歩いていた。
ジェルでしっかりと固められた頭から一筋の汗が垂れる。鬱陶しそうにそれを手で拭い、ふ、と溜め息をつく。


突然告げられた殺し合い、有無を言わさず殺された山田の姿、そしてついさっき目にしてしまった折り重なった幾つもの死体。
それら全てが津田を畏縮させ気分を不愉快にしていた。
何よりも、愛する妻との永遠の別れ(決定事項ではない、けど)を、一方的に決められた事が。
冗談じゃない。これからずっと一緒にいると誓ったばかりだったのに。
歯を食い縛り目を閉じると、浮かんでくるのは愛しい人の顔――今頃どうしているだろう。
心配してくれているだろうか、泣いていないだろうか、そんなことを思うが実際に涙目なのは自分だ。
叶わないことは知っている。だからこそもう一度会いたかった。


65 : ◆CrdchzRUy. :2007/11/24(土) 13:37:14

ぐるりと辺りを見回す。木々が生い茂っているばかりで、目印になりそうな物は何も無い。
地図で確認してみても現在地がどこだかは判断できなかった。
まずい、津田の心に焦りが生じる。
出発してからもうすぐ一時間が経とうとしていた。相方である西澤がもう出て来る頃だ。
教室で待たされている時に「合流しよう」と持ち掛けられたのはもう何時間前の事だろうか。
珍しいことだったし信用して良いだろうかと迷ったが、小学校時代からの付き合いの奴を何の迷いも無く殺せるような奴じゃない、筈だ、と思う。
考えが読めない不気味さはあるが仮にも相方だ、信頼はしている。
誘いを受けることにしたものの、校舎を出てすぐ左、とアバウトにも程がある表現で伝えられた合流予定地からは大きく離れてしまった。
出て真っ先に見てしまった死体達に驚き、恐怖し、思わず逃げ出し全力疾走した挙げ句に迷った、
なんて西澤が知ったら結構な事馬鹿にするに違いない。そういう奴だ。
早く向かわなければならない。でもここだ何処だか分からない限り迂闊には動けない、仮に動いたとして誰かに会えるかはわからない、
もしもマーダーに出会ったとしたら一巻の終わりだ。どうしようもなくてその場に立ち尽くしてしまった。
精神的にも体力的にも疲れた。木陰で少し休もうかと思い腰を下ろす。


全国ネットのネタ番組、「面白くなかったら即死」とまで言われた事もあるほど華の無い自分達にとって大きなチャンスだと思ったのに。
すいませんドッキリでした!ハイ皆で殺しあってください。今まで散々いろいろなドッキリにかけられた中で最もタチが悪かった。
数年前のバスジャックのドッキリを思い出す。あの時も死ぬんじゃないかと怯えっぱなしだったが、同じくドッキリにかけられた先輩、麒麟田村の男気のお陰でまだ随分と楽だった。
今回は違う。向けられた銃口にカメラは入っていないのだ。
バスジャックの犯人(仕掛け人だったが)に必死で気に入られようとしていた天津木村なんてもう死んでいるかも知れない。
それが思い過ごしだといえないのが怖かった。



66 : ◆CrdchzRUy. :2007/11/24(土) 13:40:18

そんな事を思っている内に、いつの間にかうとうとと眠りかけていたらしい。
当てはないけど何とかするしかない、と立ち上がって再び歩き出そうとしたその瞬間。
ふと、妙な視線を感じた気がした。

「…誰や、」

振り返ろうとする直前、パキ、と小枝を踏む音が背後からはっきり聞こえる。
何者かの存在を確信すると同時にさぁっと血の気が引く。
本当に人がいる、自分の背後に、誰かもわからない誰かが!
暑さの為とは違う種類の汗が額から垂れ、手足が冷えていく様な気さえする。歯が僅かにガチガチと鳴る。
震える手を抑え、恐る恐る振り返った。恐らく自分の表情は酷いことになっているだろう――そんなことがふと頭の片隅に過ぎる。

振り向いた視線の先にいたのはひどく見慣れた顔だった。
互いを認識した後、目を見開きほぼ同時に思わずそれぞれの名前を呼んだ。

「ネゴ!!」
「津田ぁ!お前無事やったんか!」

独特な山陰地方のイントネーションに、どこか特徴的な外見の小柄な男。同期のbaseよしもとのピン芸人、ネゴシックス(根来川悟)だった。
同じ劇場の、しかも親しい人物との遭遇に沈んでいた心が軽くなる。自然と笑顔が溢れた。
良かった、良かったとひとしきり無事と再会を喜びあった後、津田ははっと思い立って思わず根来川の肩を掴んで叫んだ。


67 : ◆CrdchzRUy. :2007/11/24(土) 13:41:10

「ネゴ!ここどこや!?」
「うお、何だ何だいきなりオイ!」

根来川がここにいるという事は、西澤は既に出発している。早く探さなければならない。
ゲーム開始から三時間以上経過している。合流できなかったら――もう会えない可能性だってあるのだ。

「お前ちゃんと確認しとけや…」

ほら多分この辺、と根来川が少々呆れた様子で差したのは校舎から少し北に離れた地点だった。約束の場所からは少々遠い。
津田は西澤に合流を持ちかけられたことを説明すると、一緒に来てくれないかと根来川に頼んでみた。
再会した時に根来川は襲ってこなかった――つまりゲームには乗っていない、と判断しての事だ。
同期で馴染みのある人物なら西澤もきっと信用するだろうとの思いもあった(何より、一人が心細かった)。
根来川は津田が思った以上に軽い調子であっさりと了承した。


偶然親しい人物に出会えたのは幸運だったのだろうか。
何れにせよ、二人はこれから待ち受けることなど何一つ知らなかった。

68 : ◆CrdchzRUy. :2007/11/24(土) 13:42:05


【ダイアン津田・根来川(ネゴシックス)合流】

【ダイアン 津田篤宏】
所持品:未確認
第一行動方針:根来川と一緒に西澤を探す
基本行動方針:危険は避ける
最終行動方針:決めていない

【根来川悟(ネゴシックス)】
所持品:不明
第一行動方針:津田と一緒に西澤を探す
基本行動方針:親しい人物を探す
最終行動方針:不明

【現在位置:森の中(G8)】
【8/15 16:30】


69 : ◆CrdchzRUy. :2007/11/24(土) 13:43:38
すいません、忘れておりました。
【投下番号:299】

70 : ◆8eDEaGnM6s :2007/11/24(土) 15:44:07
>>25-30 の続き

『新しい朝がきた』


「………………」
放送が終わり、銃声の残響とそれにより想像される光景に、胃から食べたばかりの朝食が逆流してきそうになるのを堪えながら
赤岡はゆらりと立ち上がった。
目眩とふらつきをやりすごし、そのまま近くにある看板……ハイキングコースのルートを説明する地図へと歩み寄っていく。
「……あんまり考えすぎるなよ」
「えっ?」
その最中にぼそりと漏れた声に、島田は赤岡の方を見やった。
「あの人達の事」
小さく呟いて赤岡は看板に手を伸ばし、表面全体にうっすらとこびり付いている汚れを手で払う。
「お前の事だから責任感じたりするかもしれないけど、あの人達はあの人達の道を進んだだけだから」
確かに赤岡の言う通りなのかも知れないが、昨晩の出来事を考えればそう簡単に割り切れる話ではない。
しかもそうでなくとも元々親しくしていた相手である。故に、島田は安易に返答はせずに小さく俯いた。
「………………」
チラリとその様子を振り向いて確認してから、赤岡は汚れが落ちて見やすくなった地図に視線を戻す。
展望台から麓に向けて幾筋も記されているラインのどれを選択するべきか。
行き先によって下山してからの行動も変わるだろうために、赤岡は眉を軽く寄せて考える。

最優先するべきは少しでも長く生き延びる事。その為には何が必要で何をするべきか。
「……水、かな」
数秒の後に赤岡の口から呟きが漏れた。
昨日の昼、バットボーイズの佐田から逃げ出す時に島田は己に支給されたデイパックを紛失してしまっている。
その後荷物を入れるリュックや缶詰こそ入手できた物の、水の確保ばかりは水道が止められている以上どうしようもなく、
先ほどの朝食の折も赤岡の水をちまちま分け合って口を湿らせた物だった。
その貴重な水も残り少なく今やペットボトルの底に2cmほど揺れている程度となれば、地図に記されていた川に赴き
ペットボトルに水を補給するのが最重要項目となるだろう。

71 : ◆8eDEaGnM6s :2007/11/24(土) 15:47:54
「………………」
だとすれば、なるべく綺麗な水が手に入る場所……つまりは水源と思われる場所に最短で辿り着けるルートはどれか。
看板と支給された手元の島の地図を照らし合わせて赤岡はあれこれ考えを巡らせていく。

そんな赤岡の後ろ姿をぼんやりと眺めながら、島田は体育座りの形にひょろ長い身体を丸め込んだ。
「……どうして」
鼻先に膝の気配を感じながら、小さく小さく島田は呟く。
漏れ落ちる呟きが指し示すのは、六時間ちょっと前に別れたあの18KINの二人の事。
昨晩最後に彼らを見た時、二人は菊地の遺体を連れていた。
たぶん麓か、あるいは山田の遺体のある学校の近くまで遺体を運んでから埋葬するつもりだったのだろう。
幸い、大滝はシャベルを持っていたし菊地一人収まる穴を掘る事はそれほど苦にはならないはずで。
「………………」
その目論見を達成する前に二人は倒れたのか、あるいは無事に達成した後に何らかのアクションを起こして、その結果倒れたのか。
こうなった以上は知りようのない事ではあるけども、責任を感じるなと言う赤岡の言葉とは裏腹に島田の気分はどんどん重くなっていく。
「僕が……あの時止めていたら……」
ポツリと声を零すと同時に俯いた島田の額に、己の膝がごつっと当たった。
鈍い痛みが脳に伝わり、何故自分は生きているんだろう、そんな疑問が島田の頭を過ぎる。
赤岡を苦しめ、野村や菊地やあの二人にも御迷惑を掛けっぱなしで。
それでも何故磯山や菊地達でなく自分が生きてしまっているのだろうか。

「……おい」
にわかにネガティブな方向に走り始めた島田の思考を、頭上から振ってくる声が引き留めた。
「これからどう行動するか決めた。日が高くなる前に少しでも移動したい。行くぞ」
こわごわ見上げると、そこには赤岡のどこか憮然としている、しかし実はいつも通りの顔があり、肩からデイパックを提げて
片手にマイクスタンドを携えている辺り、本当に移動し始めるつもりでいるのだろう。
「……どこに?」
「まずは下山して水の補給をする。それからもう一度どこかの民家で物資を漁って、そこで改めて状況を見定める」

72 : ◆8eDEaGnM6s :2007/11/24(土) 15:49:32
「わかった」
そういえば、確かにペットボトルの水は残り少なかった。
この真夏に水がないのはそれだけで致命的であるが為、赤岡の提案を島田としては拒む理由は何処にもない。
小さく頷いて、島田はゆっくりと立ち上がった。

立ち上がる事で視界が変わり、遠くに昨晩己が身を潜めていた茂みが見えたような気がして、島田は一瞬顔を歪める。
昨日の自分は本当にどうかしていた、としか思えない。
しかしそれを認識できた所で今日、そして明日の自分がマトモである保証となるかと言えばそう言う訳ではないのだろうけども。
スタスタと目標を持って歩き出した赤岡の後を追って、島田は展望台を後にしていった。








73 : ◆8eDEaGnM6s :2007/11/24(土) 15:50:55
ちょうどその頃。
島の中央からやや東よりのとある森の中で、一人の男が双眸から自然とこぼれ落ちる涙もぬぐう事をせぬままに天を仰いで呼吸を整えていた。
彼の傍らには腹部を赤く染め、標本の蝶のように50cm以上ある金属製の長い串で右手と喉を大地に縫いつけられた
端整な顔立ちの男性が横たえられており、また別の傍らには盛り土が二つと、その前で両手に出刃包丁の柄を握って転がる、
よほどの出血があったのか全身を赤く染めた小柄な男性の姿がある。
この二人はどちらも死んで間もないようでどちらの着衣やその周囲の地面に染みだした血は乾いても固まってもいない。
やがて多少は落ち着いたか、男は目元をぬぐって視線を地上に降ろし、改めて己が関わった二つの真新しい死体をゆっくりと見やる。
「……これで、良いんだよな?」
普段の張りのある口振りが嘘のような弱々しい声で彼は呟くと、端整な顔立ちの男の右手に突き刺していた串を引き抜くと片手に携えて歩き出した。
「なぁ、おざーさんよぉ」
ポツリと漏れる呟きを残して茶髪のトサカ頭の男は木々の中に姿を消していき、後には死体が残されるばかりとなるだろうか。

ラジオ第一を付ければそろそろラジオ体操の軽快な音楽が流れ出しているだろう爽やかな朝とは真逆の光景。
何故、彼らが揃いも揃ってこういう状況に陥ってしまったかは追々明らかになっていく事となるだろうが、
今はまず、盛り土の前で倒れた男……今泉 稔について語っていく事としよう。





74 : ◆8eDEaGnM6s :2007/11/24(土) 15:54:01
それは今から6時間以上前の事。場所は当然あの山の山頂付近。
「………………」
大滝と赤岡が向かいあっている路上からわずかに離れた藪の中で、今泉はただただ呆然としながら目の前の光景……地面に横たわる菊地の姿を眺めていた。
包丁は深々と彼の脇腹に埋まりこんでいて、血がその周囲の衣服、いや腹部全体を別の色に染めており、
菊地の色の白い肌はいつも以上に青みを帯びているように見えてならない。
昼からずっと探し続けた人物にようやく会えた……と思いきやこれなのだ。大滝が執拗に島田を追おうとするのも、今泉とすればわからなくもない。
けれど。
「……何でそんなに幸せそうなんだよ」
泣くとか怒るとか悲しむとか、そういった感情に基づく行動が取れないままに、ぽつりと今泉の口から呟きが漏れる。
闇に慣れた目で見やる菊地の顔は、どこか微笑にも似た穏やかな表情を形取っていて。
「……らしいっていえばらしいけど、さ」
自分達の行動……リアクションを外野から面白がっているかのようにも見えるそれに、いつもなら肩をすくめたり
苦笑いを浮かべたりする所だろうが、さすがに今はそんな事はできない。
ただ、重ねて今泉は小さく呟いて、大滝が歩き去った方向に顔をもたげて向けようとした。
「………………」
さっき僅かだけ目に入った島田の様子はかなり焦燥していたようだったけれど、もしかしたら強力な武器を持っている可能性もある。
ましてやこの夜の闇。いくら大滝がライトを持っているとはいえ、不用意な行動は避けるべきだろう。
重ねるけれども大滝の気持ちは今泉とすれば決してわからなくもない、しかしそのせいで大滝自身が負傷してしまっては元も子もない。

……ならば、大滝を少し落ち着かせる必要がある。そのためには追わなければ行けない。
何とかそう思考をまとめて今泉が両手を地面についてゆっくりと立ち上がろうとした、その瞬間。

彼の目の前で、菊地の両の瞼が勢いよく跳ねあげられ、向けられたえもいわれぬ輝きを帯びた瞳が彼の動きを止める。
「おはよう、今泉さん! ねぇ、今、何時?」
続いて発せられた無邪気な、しかしどこか焦りを帯びた声は、紛れもなく菊地のモノだった。



75 : ◆8eDEaGnM6s :2007/11/24(土) 15:56:11
【号泣 赤岡 典明
所持品:MP3プレイヤー(2回目の放送収録) マイクスタンド 薬箱
状態:左腕に裂傷(手当て済)・右頬に軽い火傷・全身に強い打撲・眩暈
基本行動方針:生存優先・襲われたなら反撃もやむなし・でも殺さない
第一行動方針:下山して水を補給する
最終行動方針:MP3プレイヤーに漫才を収録する・悔いのないように行く】

【号泣 島田 秀平
所持品:犬笛  (以下、水色のリュック内) 缶詰2個 シャツ ネズミのカチューシャ
状態:額に裂傷(手当て済)・躊躇・動揺
基本行動方針:生存優先・赤岡を信じる
第一行動方針:下山して水を補給する
最終行動方針:不明】

【C8・展望台】


【スピードワゴン 井戸田 潤
所持品:結婚指輪・ダーツの矢 (20本)・バーベキューの鉄串・Cz75 (13/16)・ジェリコ941 (16/16)
    (予備弾丸 9mmパラベラム弾 ×26)
状態:軽い疲労・葛藤
基本行動方針:死は救いである
第一行動方針:みんなを救う
最終行動方針:みんなを殺して俺も死ぬ】

【G8・森の中】

【16日 06:30】

76 : ◆8eDEaGnM6s :2007/11/24(土) 16:00:18
【いつもここから 菊地 秀規】
所持品:出刃包丁
状態:腹部に出刃包丁
基本行動方針:周りがどうなっても構わない
第一行動方針:現在時刻が知りたい
最終行動方針:不明

【18KIN 今泉 稔
所持品:ライター 煙草 三味線の糸
状態:万全・呆然
基本行動方針:生存優先
第一行動方針:大滝を止めに行きたい……って、ええっ?
最終行動方針:不明】

【C8・展望台に近い茂み】
【15日 23:02】


毎度の事で申し訳ないですが、今回の話で串刺しで死んでいる芸人さんの死亡表記は、
後ほど死亡シーンを投下した時に適切に表示します。

77 : ◆8eDEaGnM6s :2007/11/24(土) 16:01:35
それと、【投下番号:300】でお願いします。

78 :名無し草:2007/11/25(日) 00:04:54
              / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
   /  ̄/\     | 下がり過ぎや!急浮上━━(゚∀゚)━━ !!
。  |_ /\ \   \__ __________________/
 〃,|  \  \./\      ∨
   |_. \./\: \    ∠⌒∧   
 〃:\  ̄ \   \./ \_(´∀` ||)   |__|∴
 :   \_ \ /\  \ ̄\ゝ) ) //∴∵
  :  〃\  ̄ \  :\ / \ \///  ∵ ∴
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
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79 :名無し草:2007/11/25(日) 18:47:14
>>69
投下乙です。
木村w本当にもう死んでるんだから恐ろしいw
津田とネゴの出会いがどう転ぶか楽しみ。

>>77
こちらも投下乙&キリ番ゲットオメです。
井戸田がいつの間にかゲームに乗ってるわ菊地がいきなり目を覚ますわカオスな展開になってますな……
真相が激しく気になってきました。

80 : ◆hfikNix9Dk :2007/11/27(火) 22:12:12
ダブルブッキング編 まとめサイト290続き

『変身』



――― ―― ―



「 ……  」


黒田は目を開いた。
彼方まで響く虫の音が、耳にじわじわと蘇る。
額に当たる冷たい土の感触。


漆黒の時は、途方もなく続いていたように思えた。
が、それは一重に彼の中で様々なことが目まぐるしく回転していたからであって、
実際にはそう時間は経っていない。 ―先程と同じ夕暮れ時。
ようやく日が西の空へ落ち、辺りを包む橙色に段々と闇が染み付いていくところ。


気だるげに上半身を擡げた。霞んだ視界に写るのは、泥に塗れた自分の両手。
風に微かに揺られながら、少しずつ色を失っていく夏草。全てが無機質な灰色に覆われていく。


81 : ◆hfikNix9Dk :2007/11/27(火) 22:13:25

長い長い睡眠から覚めたような感覚だった。恐ろしい夢を見続けていた、息苦しい眠りから。
しかし例え目覚めても、ここは「ああ、夢だったのか」とほっと息をつき、
何事もない日常に戻っていける世界ではないのだ。
悪夢の続きのまた悪夢。そこに再び戻ってきただけの話。
妄想と現実との間を越えて横たわる苦痛と恐怖。新しい日など、決してやっては来ない。

或いはこのまま本当に眠りの底へ沈み込み、忘却の彼方へ去ることが出来たら
良かったのかも知れない。そうすればこれ以上には苦しい思いをしないまま、その内に必ず、
例えば何者かに襲われるなり、首輪が爆発するなり何なりして、
嫌な夢 ―即ち、BRという酷な現実から逃れられただろう。
いつでもどこであってもストンと寝入ってしまえるという、睡眠障害をすら疑われていた
奇癖を持つ黒田なら、 …『いつもの』彼ならば、充分に可能な芸当であった筈だ。
もしそれが出来ていたなら、より安楽な運命を辿れたのかも知れない、が。


けれども彼は完全に覚醒していた。 凶夢の中で、しっかりと目を開けていた。


「 っ ……」
傍にあった若木に掴まりながら、鉛の如く重い身体を何とか支え起こして立ち上がる。
気に入っていた白いシャツは所々に草葉の汁や土が付着し、汗に塗れ、
すっかり縒れてしまっていた。 けれど、もうそんなことはひとつも気にならない。
ねとつく唾液を吹き出し、喉元に少しばかり残っていた吐き気を誤魔化した。
多少ぐらつく感じが残るものの、震えも目眩も治まっている。
体調に問題はないようだ。まだ充分動ける。
それに黒田は安堵していた。


82 : ◆hfikNix9Dk :2007/11/27(火) 22:14:17

何処かへ飛び去る烏の鳴き声が鼓膜に染み入る。

 ― からすがなくからかぁえろ… 

幼い頃に聞き覚えた他愛もない唄が頭に去来した。
こんな童謡が似合うような穏やかな夕暮れなど、この世界にはそぐわな過ぎて何だか可笑しい。



( あぁ、帰らないと )

脱力した身体が、ゆらりと振り返る。

( 帰ろう  )


そうだ、自分には、帰らねば場所がある。
川辺にたった1人残して来てしまった相方。 その元へ戻らなければ。

倒れた拍子に掌から滑り落ちて草に埋もれていた方位磁針を拾い上げ、元来た道の方角を針で合わせ見る。
彼方を見つめる双眸には光がない。 それは次第に濃くなりつつある夜闇のせいなどではなく。
彼の相方のそれと同じ位色素の薄い瞳はぼんやりと濁り、何の感情をも湛えずただ冷たく据わっていた。
どこか、何の像を写すこともない、半透明の硝子に似て。


針が指し示した方向へゆっくりと歩き出す。 足取りは重いが、同時に先刻に比べて確かではあった。
恐らくそれは彼の心が明確になったことに起因するのだろう。



83 : ◆hfikNix9Dk :2007/11/27(火) 22:15:52

心 ―


決心はついた。ようやくにして。
渦巻く恐怖と混乱の中で苦しみ抜いた挙句に、固まった覚悟。
自らで決めた運命を受け入れるということ。
逃れられない現実と言う悪夢の中で、それでも足掻かなければいけない理由がある。
どうしても、やらなければならないことがある。
精神を淵まで追い詰めた凄惨な出来事の1つ1つが、皮肉にもそれを明らかに知らしめてくれた。
それさえ出来れば、もっともっと恐ろしく残虐な未来から逃れられるのならば、
最早、何をも厭うまい。

ずっと頭の中で絡まり思考を束縛していた糸は焼き切れて、今やどこにも存在していなかった。

もう迷うことはない。 あとは自分で見定めた真っ直ぐに続く道を、
何の疑いも持たずにひたすら歩んでいくだけだ。
それが例え茨の道でも。
通じる先が地獄であったとしても。


( ぶんちゃん 、 )

空虚となった心にひとつだけ映るのは、相方、川元の姿。
他には、何もない。
今や彼の脳裏からは唯一の決意以外のことが失われてしまっている。

白一色で塗り尽くされた思考。 純化。 空白。


揺らぐ男の姿を、深くなる夜空に輝きを増す月だけが見ていた。


84 : ◆hfikNix9Dk :2007/11/27(火) 22:17:04


―――

いくら行けども変化のない風景の中を、ゆったりした速度で進む足。

それが、不意に止まる。  何事かを思いついたように。

「 … 」


しばらく地を見つめながら立ち尽くした後、考えが至ったらしく顔を上げた。
そして急に左方に向き直り、方位磁針を無視して歩み始める。
川辺は遠ざかっていくが黒田はそれに構わない。
速度は変わらずに。しかし今度は極静かに、僅かな音すらも立てぬように。
恐ろしく慎重に、当ての付かない空間を進行していく。


再び足が止まったのは、それから十数分後。

暗がりの中、じっと目を細める。
前方、連なる草木の細い隙間に、ちらりちらりと人工的な色が見え隠れしているのが遠目に確認出来た。

( あれは  )
一切の音を殺して歩み寄り、適度な距離を取ったところでそっと伺い見た。



―ごちゃごちゃ重なった若木やら藪やらに隠れて、人間が座っている。
方やぽっちゃりと太り、方やガリガリに痩せ細った、眼前に現れたのはふたつの後姿。
どちらも黒田の方に背を向け、その気配に気付く様子はない。


85 : ◆hfikNix9Dk :2007/11/27(火) 22:18:05

2人分の影はぴったりと寄り添っている。どちらも小さく縮こまり、何かに怯えた様子で。
脇に荷物は置いてあるものの、他に道具らしき物品は一切周囲に見当たらない。
恐らくは、どちらも武器となるものは引き当てられず、出来ることと言えばただ隠れて
極力危険を避ける他にないために、こうして蹲って時が経つのをひたすらに待っているのだろう。
生き延びる手段を持たない、言わば残酷な殺人ゲームの哀れな犠牲者。

しかし彼らは、2日目となる今日も尚こうして生きている。
何に対抗する術もない過酷な状況の中で、奇跡的に揃って命を繋いでいるのだ。
何故それが可能だったのか。 具体的な推察はしようもないが、しかし恐らくそれは、
一重に互いを信頼し、支え合い、助け合ってきたことによるものであるに違いない。
即ち一緒になってから、共に逃げ隠れし、疲労も辛さも分かち合い、時に励まし等しながら来たからこそ、
弱い身ながらも難を逃れ、またパニックを起こすこともなく、今まで辛うじて生き残っているのだろう。

よくよく見れば、草の上で静かに握り合った手。
折れそうな望みに縋り付くが如く。
それが黒田の憶測を確からしめるようであった。



( あぁ、そうだ。  そうだな。
  こういうことなんだろうなぁ。信じ合うことは。
  俺は、これまでひどいバカだったから、
  だから、信じてもらうことが出来てなかったかも知れないけど。
  でもこれからは、 こんな風に、
  ずっと信じ合えるようになれたら  )



86 : ◆hfikNix9Dk :2007/11/27(火) 22:19:28

その姿は、今の黒田にはとても羨ましいものに写って。けれど少しも嫌な気分はない。
胸に温かいものが広がっていく。

口角が緩やかに上がる。
いつも絶やさずにいた、そして誰からもよく好かれていた、優しげな笑顔。
柔らかな表情を、ふわりと浮かべた。


そうして、歩を進めた。
哀しくもどこか幸せそうに見える2人の元へ、微笑みながら歩み寄って行った。





  心の限り思い詰めさえすれば、こわれてしまうことなど、いとも容易い。
  ひとは強く、ただそれ故に脆い。        黒田もまた、そうだった。
  彼の、“決心”とは、即ち、


  なにを惜しみ なにを恨まん もとよりも このありさまの 定まれる身に
  



一瞬だけ、喧しく響いていた蝉の合唱が止んだ。


―――


87 : ◆hfikNix9Dk :2007/11/27(火) 22:21:06

間もなく、
黒田は墨染の森をまたひとりで進み続けていた。


手に、新しく弾の込められた拳銃と、 大きく膨らんだデイパックを1つ下げて。
赤い斑点がぽつぽつと滴り落ちた袋の布地。
鮮やかなその色も、闇に紛れて褪せてしまっているけれど。

( ―大丈夫だ。簡単だ。
これで、証明出来た。
俺は決めた通りになれる。決めた通りにやっていける。
  ちゃんと出来るんだ。これでもう大丈夫。
あとはぶんちゃんと、ぶんちゃんだけと、信じ合っていればいい。
  これで、ふたりで、ずっと一緒に生きていける。他には、何も  )


ふと、笑みが込み上げてくる。


「…ふふ、ははは、あははは、ははははははははははははは………」



嬉しかった。この上なく満ち足りた気分だった。
やっと本当の『希望』へ繋がれたことが嬉しくてたまらず、黒田はひとりきりで笑っていた。
胸の奥底に、密やかに重たく沈むものを掻き消してしまうかのように、
只管、笑い続けた。


『希望』は、全てを 閉ざした。


88 : ◆hfikNix9Dk :2007/11/27(火) 22:22:15

【ダブルブッキング 黒田俊幸】
所持品:ワルサーPPK(6/7)
第一行動方針:
基本行動方針:
最終行動方針:

【現在位置:森(F5)】
【8/16 19:52】
【投下番号:301】



※死亡者については補完時に記述します。


>>69
投下乙です。親しい者同士が出会えてよかった。
安心感が伝わってきます。これから2人に何が待ち受けているのか。

>>70
投下乙&300話おめです。井戸田の心にどんな変化があったのか、
今泉に何があったのか…全ての場面が気になります。


89 : ◆U2ox0Ko.Yw :2007/11/28(水) 17:18:53
前スレ196-203の続き、ホリケン編です。



堀内健は恐慌状態に陥ったまま、森の中を駆けていた。

息が上がり、足がもつれても、走るのを止めない。
足を止めてしまえばたちまち辺りに血のにおいが広がり、先程の光景が生々しく脳裏に蘇ってしまう。
服や手にまだ乾ききらない血や髄液がこびりついているのだから、それも当然の事だった。

狂ったように走っていると、視界の端にくすんだ灰色をした建物がちらりと映り込んだ。
森の終わりが近いのだろう。一瞬、それに気をとられた堀内の足首が、罠のように地面から
浮き上がった木の根に取られ転倒する。今までの疲労と恐怖心が重なって、すぐに立ち上がろうとするも
手足が無意味に地面を叩くだけで起き上がることが出来ない。
瞬く間に全身が鉛のように重くなり、痺れるような鈍痛が湧き上がる。

地面は柔らかい腐葉土と枯葉が厚く積もっていたせいか、顔面から転倒したにもかかわらず鼻血ひとつ出なかった。
その代わりに口や鼻に入り込んだ葉っぱや土を、苦しい呼吸の中で吐き出すのが一苦労だった。

目に涙を浮かべて口の中の土を吐き出した堀内は、力尽きたように仰向けに地面に寝転んだ。
全身に飛び散って赤黒い模様を描いている蛍原の血が、辺りに鉄錆びに似た臭いを充満させる。
何度かゆっくりと深呼吸を繰り返すと息苦しさは消え、代わりに喉や鼻の奥にちりりとした痛みが走った。
ひどく喉が渇いていたが、指先一つ動かす事すらひどく億劫に思えて、堀内はオレンジが混じり始めた
青空をじっと見上げていた。

90 : ◆U2ox0Ko.Yw :2007/11/28(水) 17:19:55

ゆったりと変化していく雲を見つめながら、堀内は考える。
蛍原は宮迫と待ち合わせをしていると言っていた。

「……宮っち、待ってるんだよなぁ……」
放送で死亡者と禁止エリアが発表されるのだから、堀内が宮迫に何かを告げなくとも蛍原の死は伝わるだろう。
事故とはいえ蛍原の死に立ち会ってしまった以上、このまま無関係で済ませていいとも思えなかった。

しかし、相方がどういう死に方をしたなどという事は、はたして聞かされて嬉しいものなのだろうか?
知りたいと思っていなければ、死に様を伝えたところでただの悪質な嫌がらせにしかならない。
「ごめん……」
小さく呟いて堀内は目を閉じた。

上着は元の色が分からないくらいに血を吸い込んでいて、そのまま動かなければぱっと見死体にしか見えない。
また、それだけの血を浴びているという事実から殺人を疑われてもおかしくないのだが、そのことに堀内は気付いていなかった。
転倒し疲労で動けなくなったことで、堀内は僅かに自分を取り戻していた。
しかし完全に混乱と恐慌から抜け出せたわけではない。波のように押し寄せる恐怖と孤独感、そして何より。

「ごめん、ホトちゃん。ごめん……」

堀内の脳裏に、顔の半分を血で染めた蛍原の姿が蘇る。
何か言いたげに腕を伸ばしてきた蛍原を、自分は突き飛ばして逃げてしまった。
その強い罪悪感が、堀内をより深い混乱へと陥らせていた。

閉じたままの瞳から涙がこぼれ、とっさに手の甲でそれを拭う。
頬に皮膚とは違う乾いた感触がして、堀内は目を開けた。

91 : ◆U2ox0Ko.Yw :2007/11/28(水) 17:21:06

薄暗くなりかけた空に手をかざして見ると、黒く乾いた血が余すところなくこびり付いていた。
上半身をのろのろと起こして手のひらを擦り合わせると、古いペンキ塗装のようにぼろぼろと剥がれ落ちる。
しばらくの間、一心不乱にこびりついた血の塊を剥がしていた堀内だったが、ふとある事を思い立った。

「そうだ、埋めてあげよう」
宮迫に伝えるかどうかは、それから決めればいい。
堀内がそう決心し蛍原の元に戻ろうと立ち上がりかけた時、低い羽音のような音と共に、放送を告げる音楽が流れ始めた。

「あっ、放送……!地図、どこだっけ」
堀内は慌てた動作でデイパックの中から地図と名簿を取り出した。
しかしペンが中々見つからず焦っていると、死亡者の読み上げが始まってしまう。

「あれ……ペンがないよ……ん?」
死亡者の読み上げを聞きたくなかった堀内は、出来るだけデイパックの中に意識を集中させる。
ペンの変わりに堀内が見つけたのは、上品な織りと手触りの心地よい布で作られた袋だった。

細長く、持ち上げてみればその華奢な見た目に反してずっしりとした重量を感じる。
凝った設えの組紐を解いて中身を取り出すと、それはどうやら日本刀のようだった。
しかし、所謂日本刀と比べると大分短い。堀内の指先から肘までの長さすらなかった。
恐る恐る鞘から刀身を引き抜くと、研ぎ澄まされた銀色の刃が現れる。
優美な曲線の刀身に水流を思わせる波模様が見事な刀に、刀剣には大して興味のない堀内すら目を奪われる。
目線の高さに刀を持ち上げると、夕陽を映しこんだ刀身がオレンジ色に煌いた。

『174番 名倉 潤 』
刀に見とれていた堀内の耳に、探している人物の名前が呼ばれるのが聞こえた。

92 : ◆U2ox0Ko.Yw :2007/11/28(水) 17:22:08

『212番 蛍原 徹』
名倉の名前が呼ばれてそう経たないうちに、蛍原の名前も呼ばれる。
堀内は刀を鞘に納め、ペットボトルと乾パンの袋の間に隠れていたペンを引っ張り出した。

「潤ちゃん……そんな」
名前に印をつける指が震える。
堀内には信じられなかった。名倉は頭もいいし運動神経もいい。
それ故に、自分より先に死ぬことはないだろうと信じていた。
しかし現実はひどくあっけない。
蛍原と同じように事故かもしれない、そう自分を納得させた堀内は
途中からしかチェックできていない名簿を見つめる。

「泰造は、呼ばれてないよね」
原田は名倉と蛍原の間だった。聞き漏らしをする事はない。

「泰造、無事かな」
いつの間にか涙が滲んだ目を擦りながら、堀内は呟いた。
禁止エリアのチェックも終わり、放送も切れて森に静けさが訪れる。
辺りに散らかった荷物をデイパックに戻していると、右腕に軽く引きつるような痛みが走った。
よく見ると大きな擦り傷が出来ている。転んだ時か森を走っている時にできたのだろう。
擦り傷といってもうっすらと血が滲んでいるかいないかという程度のもので
手当てをしなければという気にはならなかった。

一応傷口周りの土だけを簡単に払うと、堀内は立ち上がって辺りを見回した。
回復しきっていない足が小さく震えるが、何とか堪える。
少し離れた所に送電線が見える。そのもう一つ向こうが蛍原と宮迫が待ち合わせをしていたという送電線だろう。
ということは、その近くに蛍原がいるはずだ。

「結構遠いなぁ……」
どの位の距離を走ってきたのかを目の当たりにして、半分呆れ気味に呟く。
そして、堀内は闇が濃くなり始めた道を戻り始めた。

93 : ◆U2ox0Ko.Yw :2007/11/28(水) 17:23:10

【ネプチューン 堀内 健
状態:右腕に擦り傷
所持品:懐刀
第一行動方針:蛍原を埋葬する
第二行動方針:泰造を探す
基本行動方針:1人になりたくない
最終行動方針:生存 】

【現在位置:森の中】
【8/15 18:25】
【投下番号:302】


94 :名無し草:2007/11/28(水) 18:09:59
>>88
投下乙です。
ついに黒田が・・・。一気に踏み外していく様が怖くもあり切なかったです。

>>93
投下乙です。
お先真っ暗な中健気に人の心配してるホリケンが愛しい・・・

95 :名無し草:2007/11/28(水) 22:26:38
>>88
投下乙です。また新たなマーダーが…
壊れる理由が優しいのが余計に切ない。
>>93
投下乙です。悲惨な状況でも思いやりを捨てない堀内が泣ける。
不幸になってほしくないキャラだ…

96 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/30(金) 01:41:27
まとめの275番続き 田中編です。


『田中の退屈』


ぱくっ。もぐもぐ。

「……それにしても、何か緊張感が出ませんね〜」

ぱくっ。むしゃむしゃ。

「ん、そうか?」

ばくっ。もぐもぐ。

「だって、今ってバトルロワイヤルの真っ最中じゃないですか。
 それなのに俺ら暢気に刺身食っちゃったりしてて、ホントにこんな事やってていいのかちょと心配になって来ましたよ〜」

ぱくっ。むしゃむしゃ。

「うーん、それはしゃーねーだろ。食わなきゃ腐っちまうんだからよ。
 まあ有り難い事なんじゃねえか。こんな所でこんな物食えるなんて普通有り得ねえぞ。しっかり食っとこうぜ」

ぱくっ。もぐもぐ。

「有り難いとは思いますけど……どうせなら刺身醤油くらい、一緒に支給してほしかったと思いませんか?」

ぱくっ。むしゃむしゃ。

「あー、確かにそうだな。臭いもアレだし、何もつけずに食うのはやっぱ正直ちょっとキツいもんな」


97 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/30(金) 01:42:55
ぱくっ。もぐもぐ。

「…………」

――あいあい、クリスマスなのにお刺身を食べたアンガールズです。
よく考えたらこのネタ、クリスマスじゃなくてバトルロワイヤルでもいけるな。
ついそんな事を考えてしまう卓志であった。

        *     *     *

裕二と卓志が集落の中にある一軒家に辿り着いたのはほぼ一時間前の事だった。
何故この家を選んだかについては深い理由は無い。強いて言うならば、朽ち果てた壁に『田中』という苗字の表札が掲げられていたからだろうか。
家は平屋ながらもこの集落の中では少し広めな方で目につきやすいものだったが、二人とも特に気にする事はなかった。
元々なるべく人を集める事が目的なのだから、目立つ方がかえって有難いのかも知れない。
門を抜け扉を抜け、先に玄関に踏み込んだのは卓志の方だった。
彼も流石にカツオを武器として構えるというシュールな真似をする気にはなれず、画鋲というあまりにも心許ない装備での侵入を余儀なくされていた。
そのため武器を手に待ち構えられてたり罠を張られてたりしたらひとたまりもない状態で、この事実に彼らは怯えたが、
幸いにも想像していたような目に遭う事はなく、何とか無事でいられた。
靴一つ無い無機質な玄関を抜けた後は軽い家捜しの時間が始まる。
今度は押し入れの中かどこかに何者かが隠れていて、いきなり襲い掛かってくる可能性が彼らの頭を過ぎって恐怖させたが、
ざっと見たところではこの家にはそのような不届き者は勿論、誰もいないようだった。
どうも日中に見たいくつかの無惨な死体が彼らをより臆病にさせているらしい。

「それにしても、手頃な家があって本当によかったですね〜」
「まあな」

家捜しも一段落がついたところで、二人は揃って縁側にゆっくりと腰掛けた。
とりあえず収穫はそれなりにあったようだ。二人の幾分余裕のある表情と、
卓志の着ている、シミ一つ無いものの明らかに丈が合ってないTシャツとズボンがそれを証明している。

「で、これからどうしますか? 食糧も十分確保出来た事ですし、ここを拠点として仲間探しでもしますかね?

98 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/30(金) 01:44:36
土間で見つけたサバの缶詰を玩びながら卓志が言う。
実のところ彼としては、早く菊地を探しに行きたくて仕方がなかった。
しかしかと言って既に夜となっているが故に外をふらふら歩き回るのが躊躇われ、裕二に判断を仰ぐ事にしたのだ。

「うーん、そうだな、見通しの悪い中出歩くのは危険だし、それにせっかく落ち着いたのにまた動くのも面倒だし……
 今日はもうここでじっくり休んで明日の朝からまた出発する事にしねえか?」
「やっぱそうするのがいいんでしょうね……」

予想出来た答えに卓志はもどかしさと妙な安堵を感じため息をつくと、霄漢に向かって消え入るように呟く。
そのまま気だるいモーションでサバ缶を放り投げると、緩やかに背後に寝転がった。
その闇を歎いているようにも見える様が気になったのか、気遣うように裕二が言う。

「まあみんなを信じようぜ。俺らに限らず、わざわざ夜の内に動く奴はそんなにいないだろうしな。
 ……そ、それに、空をよく見てみろよ。あれだけ綺麗な夜空、東京じゃ絶対見れないって。
 あんな空の下で人殺しなんて、そうそう出来るもんじゃねえだろ」
「…………プッ」

最後の取って付けた様な裕二の台詞があまりにも気障どころか有り得なさ過ぎて、思わず卓志は噴き出してしまった。
とはいえ裕二の気持ちが解らないわけではない。彼だって本当は相方の事が気になって仕方ないのだろう。
それでも、夜中に当てもなく捜し回る事に対してのリスクをしっかりと理解していて、それ故に誘惑を断ち切るために自分自身にも言い聞かせようとしているのだ。
それに他の芸人を信じたいと思うのは卓志もまた同じである。
変な格好のつけ方を恥じるように頭をぽりぽりかく裕二の姿にこそばゆさを感じながら、卓志はじっと空を眺めてみた。

(佳い夜だな)

素直に、そう思った。
夜空には一点の曇りもなく鮮やかな藍が広がり、星が温かく光っている。
この忌まわしい島を含めて何もかも包み込むかのようだ。
こんな澄んだ空を見たのは前に実家に帰った時以来かもしれない。
そういえば、今頃故郷の空はどうなっているのだろうか。
昨日は確か雨だった筈だ。市民球場での試合が中止になってたから。

99 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/30(金) 01:47:00
……せめて今日は、向こうでもこんな美しい夜空が見れてたらいいんだけどな。

「まあ確かに綺麗な空ですよね。絶好のナイター日和って感じです」
「ナイターか、いいなそれ。やっぱこんな暑い日はクーラーの利いた部屋でのんびりナイター中継を見るに限るよな」
「え〜、やっぱ球場で生で見るのがいいに決まってるでしょ。俺のひいきチーム東京じゃほとんどテレビ放送ないですし」
「ああ、そういえばお前広島だったか。広島もいいチームだし頑張ってほしいよな。巨人には負けるけど」
「そんな事ないでしょ〜。第一今の巨人ウチより順位下じゃないですか〜それにこの間の三連戦でもウチに負け越してたし」
「何言ってんだよ。その代わりに最後にお前んとこの投手陣完璧にKOしてやったじゃねえかよ。
 今年はたまたま調子が悪いだけで、巨人打線が本気を出せばあれくらい余裕だぜ」
「よく言いますよ。いつもホームラン以外に点取れないくせに。それに監督の采配も何かおかしいですし」
「あっテメエ、原さんの悪口言ったな。原さんは凄いんだぞ! 何たって原さんは――」

現在の巨人軍監督であり、裕二にとっての憧れの存在でもある原辰徳にケチをつけられた事で一気に裕二の頭に血が上る。
そしてそれと相乗するような形で卓志の地元愛にもますます火がつく。
あっという間にすっかりプロ野球の話題が顔を覗き、二人の領域に我が物顔でのさばっていた。
それだけ今の二人が、この限りなく非現実に近かったはずの現実に慣れ、退屈を感じているという事を示しているのかもしれない。
それは確かに危険の予兆。
だが、慣れるという事は少なくとも我を失う事よりもはるかにマシである事は間違いない。
その点では今の彼らは十分に幸せと言えた。
そのまましばらくの間、白熱した野球論争に発展する。
思う存分、広島東洋カープと読売ジャイアンツ、それぞれが如何に素晴らしい球団であるかを二人は力説し合う。
そんな傍目から見れば醜いとさえ思えそうな“カープ・ジャイアンツ論争”に決着をつけたのは、彼らの言葉ではなかった。

「はあっ、ちょっと待ってください……」

唾を飛ばして喋りまくったせいもあって、いつしか卓志は喉の渇きを覚えていた。
大きく振っていた腕を休め、そのままデイパックに伸ばす。

100 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/30(金) 01:47:42
水を求めてチャックを一気に開くと、そこから飛び出したのは。
独特の、強烈な生臭いにおいと、そして。

「ああっ〜! 見てくださいよ、コレ融けちゃってますよ〜!」

この真夏の炎天下の中、すっかり解凍されてしまった例の高知産本ガツオ。

        *     *     *

こうして二人は、このカツオを夕食にする事に決め、悪戦苦闘の末何とか捌き切って冒頭に至るわけなのである。
しかしまあそれにしても、と卓志は思う。
確かにデイパックがやけに濡れているような気はしていた。だが今まで自らが出した汗のせいだと思って気にしてなかったのだ。
考えてみれば、この気候の下ではいくら凍っててもいずれは自然解凍される事は間違いなかったわけで。
元より長くもつものではなかったのだ。
ちなみに捌くための手段として用いたのは、つい先程この家で見つけたばかりである出刃包丁だった。
ろくな武器を渡されなかった二人にとってはこの島で初めて見る人を十分殺生し得る凶器で、
これを使わなければならないシチュエーションを考えて唾をごくりと飲んだものだったが、
まさか早くもこんな形で使う事になるとは思ってもみなかった。
欲を言えば刺身包丁も欲しいところだったが、何も見つかってなかった場合を考えると贅沢は言えない。

ぱくっ。もぐもぐ。
ぱくっ。むしゃむしゃ。

「…………」
「…………」

しばらくの間無言が続く。
客観的に見れば呑気そのものの平和な食事風景だが、二人の間には徐々に言い知れないしこりが漂って来ていた。
その要因は、すでに冒頭で発せられた卓志の愚痴で明かせられている。
やはり、生魚を何もかけないで食べるのはどうも物足りないようで。

――調味料が、欲しい。

101 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/30(金) 01:49:36
「あーっ、やっぱ我慢できねえ!」

ついに裕二がキレて、乱暴に箸を皿に置く(ちなみに箸も皿も包丁と一緒にこの家で見つけたものである)。
多少ごまかしてはいたものの、やはり好き嫌いの多い彼だけに、徒手空拳で生魚と格闘するのには限界があったようだ。
もっとも、すでに全体の三分の一は食されてはいたのだが。

「これ以上はちょっときついわ。やっぱ醤油も何も無いんじゃ食えたもんじゃねーって」
「そ、そんな事言わないでくださいよ! 俺一人では食べ切れませんよ〜!」

慌てて卓志が宥めようとする。
これが普段なら翌日以降まで何らかの方法で保存しておけば何とかなるかもしれない話だが、生憎にもここはバトルロワイヤルの会場。
電気も通ってないだけに、残念ながら腐らせずに保存するのは非常に難しい状況なのである。
ただでさえ腐りやすい生魚だけに、今日中に何とか完食しなければ食べられなくなるのは明らかだ。
このプログラムにおいてこれだけ良質なタンパク質を得る機会はまたとないだけに、卓志としても無駄にはしたくない。
そんな卓志に裕二はいくら言われても無理だと言わんばかりに暫く鬱陶しげな目を遣っていたが。
不意に、ある事を思いつく。

「そうだ、お前ちょっと調味料探してきてくれねえか?」
「えっ?」
「何もかけないってのがきついんだよコレ。醤油とかがあれば十分おいしく食えるはずなんだ」
「で、でも家中探しても無かったし……」
「だったら他の家から探してくりゃいいじゃん。
 ここに無かったからって他の家にも無いとは限らないだろ。食糧とかはある程度残してあるみたいだしさ。
 それにこれだけ広い集落なんだから、スーパーや飲食店の一軒か二軒ぐらいありそうなもんじゃねえか。
 そういうところなら置いてある可能性もますます増えるだろ?」

        *     *     *


102 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/30(金) 01:50:22
結局、卓志は裕二の言う通りに、再び集落の中を調味料を求めて歩き回るハメになった。
と言っても、流石に夜暗い中なだけに、ちょっと近場を見て回るだけに留める事は取り決めてあったが。
裕二の方は家で待機する事になっていた。
卓志としては裕二にもついてきて欲しかったのだが、万が一家を空けた隙に誰かがやって来た場合を考えれば、
一人でも残っていた方が良いという裕二の理屈に反論出来ず、一人で行かざるを得なかったのだ。
まあいずれにせよ、こういう面倒な作業は得てして後輩がやるべき事なのだから仕方ないのだろう。
上下関係、これも無視できないこの世の摂理だ。そう思って卓志は納得した。

歩むべき道は果てしなく暗い。
夜なのだから当たり前なのだろうが、それでもその事は卓志にそこはかとない違和感を覚えさせる。
ふらふらと民家を見極めながら、ふとその理由について考えてみる。
解答は、意外と簡単に求まった。

(……光が、無いんだ)

考えてみれば当然の事だ。
この島の学校以外の建物に電気が通ってないらしい事は、先程まで居た民家で確認済みであった。
島中のライフラインが断絶されているという事は、道端に適度に並んでいる街路灯も、ただのオブジェと化すしかなくて。
かくして、闇一色に包まれた奇妙な街の完成となる。

「一面真っ暗、か」

自分でも意識しない内に、思わず小さく呟いていた。
ついさっきも思ったが、これだけの闇は久しく見ていなかった。
東京ではこんな完全な闇は無かった。あの街はいつもどこかしらが光に溢れていた。
そう、それこそ、上下のような田舎でぐらいしか、こんな闇は無かったはずだ。
子供の頃を過ごした、あの懐かしい故郷のような――

『ヤキメシ四つつかぁさい!』
『はい、チャーハン四つですね?』

……くだらない事を思い出してしまった。

103 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/30(金) 01:51:17
そうだ、子供の頃父と兄弟三人でどこかに遊びに行った帰り道も、まさにこんな感じの闇だった。
急に闇の中に現れたドライブインに寄って、焼き飯を頼んだらチャーハンと言い直されたんだっけ。
何でこんな事を思い出したんだろう。そりゃまあ闇の中に浮かび上がったドライブインは確かに印象深かったけれど。
一体どうしてだっけ――



ドスンッ



不意に、微かに鈍い音が聞こえてきて、卓志の心に戦慄をもたらした。
それと同時に、些細な疑問も一気に吹き飛ぶ。
鳥肌の立つ思いで急いで辺りを見回すが、特に何も起こった様子は無かった。
一体何の音だったのだろうか。気になった彼はもう一度、今度はゆっくりと周囲を見回す。
確認した結果、今彼の周りにあるのは数件の民家、そして、ぽつんと存在する、四階建ての雑居ビルらしき建物。
もしかしたら、あの鈍い音はこの中のどこかから聞こえてきたのかもしれない。
いや、きっとそうだろう。何となくだが、そんな気がする。
そう思って、卓志がビルを注視する。

この時、民家ではなく雑居ビルに目を向けたのにも大した理由は無かった。
ただ単に、ここまで見かけたのと同じような構造の民家より、割合特異な姿をしている雑居ビルの方が関心を持てただけの事だ。
だが、そのつまらない理由が彼にとっての明暗を分ける。


彼が覗いたビルの四階に、ほんの一瞬、大きな影が走った。


「えっ……」

刹那、彼はそれを認識し、理解した。
ほぼ間違いなくあれは人影であると思っていい。

104 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/30(金) 01:52:08
そして、おそらくあれが先程の不快な音を発生させた張本人であろう。
驚きを隠せない一方で、心中の僅かに冷めた部分で卓志はそう分析する。
退屈に皹を入れる、突如舞い降りてきた急展開。
さて、どうするか。その答えはすぐに出た。

――行ってみよう。

中に居るのが危険人物ではないという保証はない。
今まさにそこで命の奪い合いが行われている可能性も考えると正直怖い。
だが、菊地や太田ではないという保証もない。
1%でも彼らである可能性があるのなら、確かめる価値は十分にある。
それに、たとえ彼らでなくても、接触する価値は残っていた。
もしかしたら、これをきっかけに、また一人脱出のための仲間が増えるかもしれない。
それに。

(調味料の在り処を、知っているかもしれない……!)

もはや迷う必要は無かった。
もう一度辺りを見回してみる。
特に変わりは無い。
そこには相変わらず、静かに揺曳する月と星の光の他に照らすものの無い、闇に支配された街が広がっている。

目の前の面妖なる古ぼけたビルを見上げる。
あの時、あのドライブインのように、闇の中に唐突に現れた建物。
直前であの事を思い出すとは、もしかしたらこれも何かの因縁によるものなのかもしれない。
その事に僅かな憂愁を感じつつ、入り口に近づく。

(今度は何の間違いも無いと良いんだけどな)

不意に、日中に見た数体の死体が卓志の頭を過ぎる。
それを必死に頭の底から追いやると、ゆっくりと更なる暗闇に躍り出た。

105 : ◆EeCmUBzmbs :2007/11/30(金) 01:52:57
【アンガールズ 田中卓志
所持品:なし
第一行動方針:菊地と太田を探す
第二行動方針:調味料を探す
基本行動方針:人殺しはしない
最終行動方針:心が傷ついた人を一人でも多く助ける】

【爆笑問題 田中裕二
所持品:画鋲一箱分、出刃包丁、カツオ(高知産。切り分けられている。三分の一消費)
第一行動方針:太田と菊地を探す
基本行動方針:人殺しはしない
最終行動方針:みんなで一緒にこのゲームから脱出する】

【現在位置:J6 集落】  
【8/15 20:16】
【投下番号:303】

106 :731 ◆p8HfIT7pnU :2007/12/04(火) 00:07:49
”鳥肌実『我が闘争』(2)”


  ※※※※※※

(※この前のレポート用紙のページは乱雑に破られている。
  破られたページに何が書いてあったかは不明。)


さて、このバカタレがくだばりましたからには陛下に命じられました報告もこれで終了。
しかし地球の資源を無駄にするわけには参りませんので、ここからの報告はわたくしの輝かしい戦闘記録
(予定)を記してゆきたいと思う次第でございます。きっとね、歴史と国語の教科書に載りますよこれは。
それでは改めまして自己紹介。
鳥肌実42歳厄年。日本の夜明けを目指し、ホップステップ玉砕の精(※以下関係ない文の羅列の為削除)

まずわたくしの1日は首都に向かって敬礼した後、爽やかに月月火水木金金を歌って幕を開けるのであります。
ポカリ○エットのポスターにも引けをとらないそのわたくしの爽やかな笑顔を曇らせたのは、
負け犬どもの豚のような腐敗臭でございました。まあどっちも臭い動物という事です。
まったくせっかくの清々しい朝が台無しだよ。夏江の味噌汁かヤマザ○パンが朝食ならまだしも、
乾パンごときで腹が膨れるかと。確かに乾パンは最前線では最適なレーションには違いありませんがね。
しかし酷い。酷すぎるこの臭い。下っ端の兵士、いやここでは敢えて三等兵と呼びましょうか。
お前等人数多いんだから、死体が出たらコンマ3秒で片付けに来なさいよと。お前等の怠慢のせいで
自分でお墓作っちゃいますなんていう×××が湧いて来るんだよ反省しろそして砕けろ!
わたくしがこのプログラムに勝利し凱旋帰国しました暁には、すぐさまことり特攻隊を編成。
こいつ等三等兵どもを強制参加させ、敵国の主要施設に手当たり次第突っ込ませようと思うのですが
宜しいでしょうか?ああ、陛下ならそう仰ってくださると思っておりました。
いやあ照れますな、そんなに褒められては。陛下万歳!陛下万歳!!


107 :731 ◆p8HfIT7pnU :2007/12/04(火) 00:09:09

しかし最近のこの国は酷い。もう終わりかけの腐りかけです。
兵士どもに始まりどいつもこいつも陛下への忠誠というものがわかっちゃいない。
バトルロワイアルといういささか強硬な手段を用いてでも、腑抜けの馬鹿どもを粛清したいという陛下のお気持ち、
鳥肌実痛いほどよくわかります。おそらくこの大規模なプログラムも、わたくしが如何に馬鹿どもに惑わされず
陛下への忠誠を示せるか、それを試していらっしゃるのだと思います。
ご心配なく。わたくしの忠誠は真実であります!どんな輩に会おうがそれは変わりません。
しかし困りました。誰かに会わない事にはそれが証明出来ない。
そうか、木に登って上から見張っておればいいではないですか。頭脳明晰にも程があるよわたくし。

(※このページのみ、土まみれで汚れている)
…いやね、木に登ってやるなんて猿みたいな真似は人間がやらなくてもいいんじゃないかと。
決して登れなかったとかそういうのではなくて、敢えてそうしなかっただけで。
いや多分あれですよ、三等兵の奴等が木に余計な小細工をしやがったんですよきっと。
まったく無能な奴に限って悪知恵が働きやがりますね。絶対特攻させてやる。

やはりここはオーソドックスに待ち伏せ。そして話題の待ち伏せスポットといえば森。
気長に5時間程待ちますと、来ました来ましたアホそうなのが。
わたくしは正々堂々と後ろから無用の長物となりました受信機をフルスイングで投げつけ、見事体当たりに成功しました。
わたくしがあと20年程若ければこのまま殴り殺す事も可能なのですが、寄る年波には勝てません。
とりあえず引きずって所属と名前を名乗らせました。えーメモメモ。

9番 阿部智則 PO…ポイズンガールバンド

まったく横文字なんぞ使いやがって!覚え辛いから太郎にしろ!!
それにしてもこいつの風貌は何だ。チャラチャラ髪伸ばしやがって、丸刈りにするか
わたくしの様にきちっとまとめなさいよ。ほんとに最近の若い奴は…
ただこういうアホの考えも許容出来てこそ陛下の忠実なるしもべ。刺激ある報告となるかもしれない。
試しにこいつに栄誉あるプログラムの参加者として何がしたいかと問いただしました。
しかし返ってきた答えは、

108 :名無し草:2007/12/04(火) 00:10:10

「いや、色んなこと考えると凹みそうなんでとりあえず乳揉みたいです」

あまりにも破廉恥な返答にわたくしの拳が正義の唸りをあげました。
まったく嘆かわしい。最近青少年の性の乱れが叫ばれておりますがここまでとは。
見た目人畜無害そうなノホホンとした面してるくせにとんでもない奴だこいつは。
あれだあれ、見た目問題なさそうな奴が実は×××でとんでもない犯罪起こしたりする、
そのタイプでございますね。ひー恐ろしい!
この変質者に正しい人としての在り方を教える為に、わたくしは教育勅語の精神を2時間に渡って熱弁致しました。
途中からやけに真剣に聞いてたので、感想を述べろと言ったらこいつは

「やっぱり揉むなら貧乳より巨乳ですよね」

まったく聞いちゃいねえ何だこいつ!
とりあえずこめかみに後ろ回し蹴りを叩き込んでおきました。
痛がってる間も手をニギニギしておりました。この変態が!いつまで揉んどるんだボケ。
大体巨乳ならなんでもいいなどと最近のグラビア雑誌に載せられやがって馬鹿野郎。
あんな海辺という自然のレジャースポットで不自然極まりないマスカラだグロスだベタベタ塗った女の
どこに魅力を感じるというのでございましょうか。女性の正しいファッションは防空頭巾にもんぺ!
下着は純白のシミーズ!化粧?そんな物に金かけとる暇があったら千人針の為にご近所を駆け回れ!!
というのが正しい日本女性のあり方でしょうが。そして兵士の血液で(※いい加減長いので削除)

ふう、世紀の大演説にわたくしの喉もカラカラでございます。
この変態のペットボトルの水をゴクゴクラッパ飲みした後、正統な料金として食糧か武器を請求致しました。
そうすると変態はやる気のない仕草でナイフを1つ渡しました。2本1組なのでいらないとかほざいてました。
馬鹿な奴。自分から首を絞める行為なんぞまさに愚の骨頂…
と、わたくしがにっこりナイフを構えて振り下ろそうとしますと、
こいつは頭がおかしいのか慌てずこう言い放ちました。

「え〜、揉んでから死にたいから勘弁してくださいよぉ」


109 :731 ◆p8HfIT7pnU :2007/12/04(火) 00:12:29
あまりの気の抜けた声に、わたくしとした事がナイフを落としてしまいました。
そのわたくしの隙を見逃さずそいつはまくしたてました。

「そうだ、ちょうど1日経ったらその娘連れてきますよ。一緒に揉みましょう」

なんとわたくしまで悪の道に引きずり込もうというのでございます。
あっけにとられておりますとそいつはもう逃げ支度をしておりました。
日時と待ち合わせ場所だけ告げるとすたこらさっさと逃げてしまいました。
わたくしも追いかけて仕留めようとしたのですが、お許しください陛下。
42歳とはいえ健康な男性であるわたくしは欲望には勝てませんでした。
まだまだ立派にやっていけます。凱旋帰国しましたら妾を50人程用意して下さい。
すぐに健康優良で質実剛健な兵士を沢山産ませてご覧にいれます。

それにしても何だろうかこのナイフ。む、解説書が…
以下説明書より抜粋。
”ククリ”
(ネパール発祥のナイフ。大きく湾曲した部分の下側に刃があり、刀全体の重みが刃の部分にかかって
 目的物を軽く切断出来る造りになっております。)

ナイフの中でもなかなか使いやすい部類のもののようです。軽いですし。あと、何々…

(なお、刃の下部にある窪みは女性器を模したものであると伝えられています)

…あの変態に相応しい猥褻なものですが、それでも武器は武器。ありがたくいただいておきましょう。
さて、思いがけない待ち合わせの約束を取り付けてしまいました。しかし不可解とはいえ約束は約束。
ちゃんと日時と場所を確認し、5分前集合。それこそ陛下の忠実なるしもべ!
え〜、今がちょうど16時だから17日16時。学校にて待ち合わせ、と。
ん、学校?学校といえば…

…禁止エリアではございませんか。

  ※※※※※※

110 :731 ◆p8HfIT7pnU :2007/12/04(火) 00:17:16
【鳥肌 実
所持品:盗聴器受信機、レポート用紙、ククリ(1本)
基本行動方針:陛下への忠誠を示す
第一行動方針:陛下のご命令に従い報告書作成
最終行動方針:陛下に表彰される
【阿部 智則
所持品:ククリ(1本)
基本行動方針:乳揉みたい
第一行動方針:すごく乳揉みたい
最終行動方針:ものすごく乳揉みたい

【現在位置:I-6】
【8/16 16:01】
【投下番号:304】

…徳井さんと行動方針かぶったかなあ。



>>93
ホリケン…アホの子イメージなのに切ない。
誰か助けてやって欲しい。

>>105
ロワらしからぬ食べ物の描写が秀逸。
見る度に新しい発見があって凄い。

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